西日本新聞社

シリア支援計画、ウェブに復活 本紙報道受け方針転換か

2015年12月09日00時07分 (更新 12月09日 01時33分)

 日本政府がシリアのアサド政権支配下にある火力発電所の補修・復旧費約25億円を提供している問題で、国連開発計画(UNDP)の公式ウェブサイト上から削除されていた事業計画が8日午前、突如再掲載された。西日本新聞の報道を受け、日本政府が非公開の方針を転換したとみられる。

 菅義偉官房長官と岸田文雄外相は8日午前の記者会見で、「事業計画は既に公表している」と述べ、正当性を強調した。菅氏は同日午後の会見で、公表の仕方は「UNDPのサイト」とした上で「ずっと掲載している」と述べた。

 だが、UNDPのサイトは英語で、日本国民に公表しているとは言い難い。さらに、駐日代表事務所(東京)の担当者は7日、西日本新聞の取材に「11月16日にウェブから下げた(削除した)」と認めた上で、「下げた理由についての回答は差し控えたい」と述べていた。

 事業計画が削除されている事実は、本紙が7日深夜段階まで確認している。ウェブでは、削除と同時にUNDPがシリア国内で実施する事業総数の表示も、それまでの「11」から「10」に変更され、日本政府が関与する事業計画が外されていた。8日にこの数字も「11」に戻っていた。

 「ずっと掲載している」とする菅氏の説明は、こうした事実と明らかに食い違っている。政府がウェブから削除した事実を否定するのは、「隠すようなことはしていない」と主張することで、資金提供の正当性を強調する狙いがあるとみられる。

 事業計画が再びウェブ上に再掲載されたことについて、UNDP担当者は「寝耳に水だ。米国の本部に確認したが、現時点では『誰がどういう判断で再掲載したか分からない』という話だった」と述べた。菅氏は記者会見で、政府が働き掛けたのかと問われ「全く行っていない」と否定した。

◆「緊急人道支援」 官房長官強調

 日本政府が資金提供しているシリアの火力発電所補修・復旧事業について、菅義偉官房長官は8日の記者会見で「緊急的な人道的支援として国連開発計画を通じたもので、アサド政権支援ではない」と強調した。

 菅氏は事業の目的について「厳しい生活環境に置かれている人々に必要な電力を供給する支援」と説明。「緊急人道支援はこれまでも、アサド政権支配地域であるなしにかかわらず実施している」と語った。

 岸田文雄外相は会見で、アサド政権の退陣を求める日本政府の立場は「全く変わっていない」と言明。発電所が軍事利用される懸念に対して「人道支援が本来の趣旨に従って行われるのは大切なことだ」と述べ、事業の実態を把握する考えを示した。

 日本政府はシリアの反政府運動を武力で弾圧しているアサド政権を非難し、2011年5月以降、新規の経済協力を見合わせている。

=2015/12/09付 西日本新聞朝刊=

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