不正会計問題に揺れる東芝に対し、過去最高額となる73億円余の課徴金納付を命じるよう、証券取引等監視委員会が金融庁に勧告した。東芝は、命令が出れば納める方針だ。

 巨額の不正を第三者委員会が報告してから5カ月近く。総額は7年間で2200億円を超える。過去の決算の訂正と経営陣の刷新、別の第三者委員会による元経営幹部の責任調査とそれに続く損害賠償請求など、事態はめまぐるしく動いてきた。

 東芝は、半導体事業の一部やパソコン分野など不採算部門の対策に注力しつつあり、経営の正常化を急いでいる。

 ただ、会社を根本から立て直すには過去のウミを出し切ることが欠かせない。ほぼ手つかずのまま残されているのが、監査法人による会計監査がきちんと行われていたのか、という問題である。

 企業がまとめた決算を、国家試験に合格したプロである公認会計士やその集団である監査法人が外部からチェックする。財務書類にお墨付きを与え、投資家の判断材料にしてもらう。それが会計監査の骨格だ。

 監査法人によるチェックが不十分では、経済の基本的な仕組みそのものが揺らぎかねない。

 だが、東芝の経営再建への起点となった第三者委の報告書は、監査を担ってきた新日本監査法人と東芝の関係に踏み込んでいない。第三者委は、有価証券報告書の訂正を急ぐ東芝から委嘱され、2カ月という期間の中で限られたテーマと分野を検証したにすぎないからだ。

 ここは、自主規制機関である日本公認会計士協会や、金融庁とその傘下の公認会計士・監査審査会の出番である。

 東芝が新日本に虚偽の情報を示していたことが不正の本質なのか。新日本の仕事ぶりに問題はなかったか。調査はすでに進んでいるようだが、会計監査のあり方や金融行政への信認が問われていることを自覚し、徹底的に調べるべきだ。

 企業の会計不祥事をめぐり、監査法人の責任が問われた例は決して珍しくない。カネボウやオリンパスの粉飾決算事件では、監査法人に業務の停止や改善が命ぜられた。そのたびに対策が講じられてきたが、不祥事は後を絶たない。

 チェックする企業から監査法人が報酬を受け取るという構図や、同じ監査法人が長年にわたり業務を続けがちな傾向など、構造的な問題も指摘される。どこをどう改めれば監査を強化できるのか、改めて考える機会として東芝問題を位置づけたい。