IDEAS + INNOVATIONS
雑誌WIRED最新号
雑誌WIRED最新号
『WIRED』VOL.20
 
NEWS

「視覚的」かつ「数学的」:流体力学の世界に迷い込むGIF動画

流体力学の優れた動画を選ぶ「流体運動ギャラリー」の2015年の入賞者が決まった。スーパーコンピューターによるシミュレーションを1カ月間行っても、数秒間の動作しか再現できない複雑なものもあるという。

 
 
このエントリーをはてなブックマークに追加

TEXT BY NICK STOCKTON
TRANSLATION BY MAYUMI HIRAI/GALILEO

WIRED NEWS (US)

Image: Yan Ren et al/American Physical Society

ハチドリは、空気力学的揚力というよりは、渦糸の非定常動力学を利用して飛ぶ。それを視覚化したこの動画では、ハチドリが方向を変えるときに翼から出る伴流を表現している。この動画は「流体運動ギャラリー賞」(Gallery of Fluid Motion Award)を受賞した。

第32回米国物理学会流体力学部門視覚化コンテストの入賞者を紹介しよう。1983年から毎年開催されているこのコンテストは、視覚的であり数学的であるという、流体力学のふたつの性質を称えるものだ。

メリーランド大学で流体力学を専門とするケニス・キーガー教授は、「流体力学を支配する方程式は非常に複雑なため、スーパーコンピューターによるシミュレーションを1カ月間行っても、数秒間の動作しか再現できません」と述べる。

入賞した動画のひとつでは、音波を利用して、複数の小さなしずくを油性の液面でバウンドさせており、2000年代初期のスクリーンセーヴァーのハイライト画面のようだ。一方で、これら多数の水滴がそれぞれの波でバウンドを始めると、量子力学の核心にある粒子と波動の二重性を模倣するものになる(以下の動画)。

Image: Dan Harris et al/American Physical Society

正式には「流体運動ギャラリー」と呼ばれているこのコンテストの入賞者が、11月24日(米国時間)にボストンで発表された。

入賞者はふたつのカテゴリーに分類される。上位3つの動画(ランキングは同じ)は「ミルトン・ヴァン・ダイク賞」(Milton van Dyke award)を受賞した。これは、1982年に視覚化の書籍を著し、コンテストのきっかけをつくったミルトン・ヴァン・ダイクにちなんだもので、賞金はそれぞれ200ドル。

次点は「流体運動ギャラリー賞」(Gallery of Fluid Motion Award)で、入賞者には、絶版となっているヴァン・ダイクの著書が授与された。

これら以外の100点の動画は、「流体運動ギャラリー」のポスター・コンテストへの応募作品とともにAPSのウェブサイトで見ることができる。

Image: Silvestre Roberto Gonzalez-Avila et al/American Physical Society

このGIF動画は、安定干渉の例として、小さな水滴の表面に起きる波紋を示している。3Dメガネを使った方がよくわかるだろう。この動画は「流体運動ギャラリー賞」を受賞した。

Image: Alexise Duchesne et al/American Physics Society

蒸気の泡が、熱した針金の上に並んでいる。泡の間を泡が行ったり来たりするこの状態は、針金の直径と温度の比率が特定の値に到達したときに形成される。この動画は「ミルトン・ヴァン・ダイク賞」(Milton van Dyke award)を受賞した。

全体的に見て、流体力学者というのはかなり快適な仕事のようだ。転職を考えている人は、流体力学者の一日を紹介する次の動画を見るとよいだろう。

関連記事:「水滴」で動くコンピューター・プロセッサー(動画あり)

※この翻訳は抄訳です
 
 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
LATEST NEWS

ARCHIVE

 
SHARE A COMMENT

コメントをシェアしよう