政府主導の「脱米軍基地化」とは
沖縄国際大学の友知政樹教授が夢のある話題を提供してくれています。「基地がなくなった場合の経済効果」が、なんと3.5兆円だそうです。
下の写真の暑苦しそうな人が友知氏です。
どこかで聞いた名前だと思ったら、2013年5月に「琉球民族独立総合研究学会」なんてきわものを作っちゃた人物です。
まぁ、そういうスタンスの人物だというだけで、今日のテーマはこの「基地がなくなった場合の経済効果」なるものについてです。
友知氏の「経済効果」を、嬉しそうに報じる琉球新報(12月5日)の記事です。http://ryukyushimpo.jp/news/entry-183286.html
「県内にある全ての米軍基地が返還され、跡地利用が進んだ場合に生み出される「直接経済効果」は2兆7643億円に上るとの試算をまとめた。同様に自衛隊基地が返還された場合の直接経済効果は7843億円に上るとし、全体で3兆5486億円と試算した。県民総所得は2012年度の4兆165億円と比較して、1.8倍の7兆2902億円に上ると試算した」
さて、この「もし基地がなくなったら」という試算は、以前から出ていました。
ざっと歴代の試算を並べてみましょう。
・2010年・沖縄県議会・全基地返還の試算・・・9155億円
・2015年2月・沖縄県企画部・返還を予定される嘉手納より南の5基地の跡地利用された場合の試算・・・8900億円
・2015年12月・友知教授試算・・・3.5兆円
友知先生の試算で、いきなりドンっと4倍です。オオ、いい正月が迎えられそうだゾ(笑)。
ただし、この経済効果というのは、よくオリンピックがどうしたというように、どんどんと予想される仮想の売り上げを積み上げていくものです。
「経済効果」という概念を押えておきましょう。
「ある現象やブームなどが、国・地域の経済に及ぼす好影響の総体。本格的・全体的な好況を引き起こすわけではなく、特定の業種が一時的に潤う利益の合計」
別の言葉で言えば、「経済波及効果」です。俗に言う、とらぬタヌキのなんとやらで、民間エコノミストたちがよくやりますが、当たった試しはありません。
普天間基地がなくなって、そこにショピングモールかできて、パチンコ屋が開店して、居酒屋が・・・、という具合に仮想売り上げを累積させるのですが、実際に返還された大規模跡地がどうなっているかといえば、残念ながらこんな調子です。
牧港住宅地区返還跡地にできた、おもろまちの現況を覗いてみましょう。
減歩率(※)が不足しているために、このおもろまちでは、狭い区域に駐車スペースも不足し、北谷のような眼玉になるようなアミューズメント施設が欠落しているために、様々な小規模商店同士ののパイの食い合いが生じてているようです。
※減歩率とは、「区画整理などで換地処分が行われた際の、処分前の土地面積に対する処分後の面積の割合」のこと。
今、現実的なテーマになりつつある普天間基地跡地も、この轍を踏む可能性がありますので、丁寧な跡地計画を国が主導して作る必要があります。
また友知氏は、意図的に「基地がなくなった場合」の負の効果を忘れてしまっています。
基地がなくなった場合に解雇されるのは、いうまでもなく日本人従業員です。
それについては、雇用者側の米軍自身のデータがあります。http://www.kanji.okinawa.usmc.mil/Economy/Economy.html
平成26年12月末日現在、沖縄県内における米軍施設で雇用されている沖縄県民は総勢8千600人です。
米軍は沖縄県内において、沖縄県庁に次ぐ2番目に大きな雇用主です。
沖縄県庁 | 22,989名 | (平24年) |
米軍 | 8,600名 | (平26年) |
沖縄電力 | 1,605名 | (平26年) |
琉球銀行 | 1,251名 | (平26年) |
(上2枚の図 米海兵隊サイトより引用)
これだけではなく、軍用借地料について、米軍はこう述べています。
「沖縄県内には3万4千人以上の軍用地の地主がいますが、平成26年度に支払われた借地料は1,000億円近くとなっています」(同)
そして基地がすべてなくなった場合、米軍人、その家族、軍属などの個人関連消費が消えます。
「3,000人超の軍人・軍属が民間地域に住んでいますが、平成25年度に支払われた家賃や光熱費などの総額は10億円以上です。
軍人・軍属個人名義の一般車輌(軽を除く)は沖縄県内に28,273台(平成26年)あり、道路税と自賠責保険料で20億円近くが支払われています」(同)
また米軍も、友知氏に負けずに経済波及効果を計算しています。
「直接消費がどのように地域経済に貢献しているのか計り知ることはできませんが、日本人基地従業員、軍用地の地主、 水道光熱費、建設業社などによる民間地域での消費は地元経済に大きく貢献しています。
日本交通公社による沖縄県内の観光による経済波及効果は、直接消費に加え約75%の間接消費が計上されています。
沖縄県内における米軍もそれと同じような波及効果を及ぼしていると考えられます。
観光と同様に、米軍人・軍属を通して住宅、工事、水道光熱費などで県内の需要を消費しているからです」 (同)
とまぁ、これは米軍が自分で都合がいい数字を並べていると見ることもできますので、鵜呑みにする必要はありません。
これに加えて、政府からの年に約3千億円の振興予算が消滅するわけです。
基地がなくなることによる経済効果は、友知氏の指摘を待たずとも確かに大きいでしょう。
しかし、同時にそれは、今後このていどのボリーュムのパイが県の経済から消滅するということは押えておいたほうがいいでしょう。
現実には、基地がなくなることのプラスと、マイナスの綱引きの中で、経済はあるので、友知氏のような、「都合のいいことだけ積み上げました」では分からないのです。
また、返還による跡地の放出がもたらす、不動産価格の下落も計算に入れていません。
赤い部分が「今すぐ返還」予定地で、既に不動産市場で供給過剰ですから、これに青い部分の「代替地が見つかったら返還」の大所である普天間基地分が加われば、もう中部地域の地価は暴落してしまいます。
今までチビチビと切り売りしてきた貴重な軍用地が、一挙に何百ヘクタールというまとまった大面積で放出されるために、周辺地域の地価が大暴落するわけです。
そしてなにより、友知試算の最大の問題点は、「基地をなくなすにはどうするのか」というロードマップが完全に欠落していることです。
おそらく友知氏のような基地反対派の脳味噌の中には、「基地反対闘争を盛り上げる」ていどの知恵しかないはずてす。
しかし、「辺野古移転断固反対」は心情的には理解できなくもないのですが、それが勝利した場合、普天間基地はそのまま固定化されてしまいます。
ありたりまえです。このあたりまえがわからないと、「新基地反対」という本土人が首を傾げるようなスローガンになってしまいます。
反対派は「なくなったほうがいい」というのと、「なくなる」とはまったく別次元の話だと理解したくないようです。
こう私が言うと、「いや、そっちはそっち。普天間閉鎖は政府が考えろ」というのが、反対派の主張ですが、まことに無責任ですね。
ところが政府は、翁長氏たち反対派が、「絶対反対」という思考停止に陥っているのは、政府にとってまさに好機と考えているフシ化あります。
県は「絶対反対」というドツボにはまってしまったために、国との協議そのものが窓口閉鎖状態になってしまいました。
そのために、国は経済オンチの知事との協議を経ずに、どんどんと県の頭越しに地元首長と返還跡地計画を進めることのできる口実を得たのです。
(写真 共同記者発表を終え、握手を交わす菅官房長官とケネディ米駐日大使。左はドーラン在日米軍司令官)
「日米両政府は4日、沖縄県の嘉手納基地以南の米軍施設・区域のうち、普天間飛行場(宜野湾市)東側や牧港補給地区(浦添市)東側の一部について計画を前倒しして返還することなどで合意した。
当初予定より5~8年早い2017年度中の返還を目指す。来年の宜野湾市長選や参院選を前に、沖縄の負担軽減に向けた取り組みを進め、普天間飛行場の名護市辺野古への移設につなげる狙いがある。
菅官房長官と米国のケネディ駐日大使が4日夕、首相官邸で共同発表した。菅氏は「合意が着実に実施され、沖縄の皆様に我々の取り組みを実感して頂くことを強く希望する」と述べた。
ケネディ氏も「米国は(返還)計画全体の可能な限り早期の実施に引き続き取り組む」と語った」(読売2015年12月4日)
今まで、辺野古移設が停滞した場合、同時にストップするであろうと見られていた返還プロセスを、むしろ政府が加速化させているようです。
つまり、「さぁ、ここも空いたぞ」という跡地計画をどんどんと作ることで、「脱米軍基地化」を進めようということになります。
この政府主導の「脱米軍基地化」が具体的になればなるほど、経済センスゼロなために、左翼と一緒に「絶対反対」だけを叫ぶだけの翁長氏の空疎さが、県民にも理解されてくるようになるという仕組みです。
さらに友知氏先生ほどファンタジーに頼れない政府は、普天間基地跡地になんとディズニーランドを誘致するという構想を、宜野湾市長とブチ上げました。
これは、本部の大型客船が停泊できる新港と、それはと一体化したUSJ沖縄を、那覇から南北鉄道で結ぼうというものです。
この南北鉄道こそ、仲井真知事が沖縄21世紀ビジョンとして、もっとも力を注いだものです。
そして、これは連動するかのように、もうひとつのビッグプロジェクトが浮上しました。なんと普天間跡地のディズニーランド計画です。
(写真 沖縄県宜野湾市の佐喜真淳市長(左)から要請書を受け取る菅義偉官房長官=8日午後、首相官邸)
「宜野湾市長、米軍跡地にディズニー誘致=菅長官「橋渡しする
沖縄県宜野湾市の佐喜真淳市長は8日午後、菅義偉官房長官と首相官邸で会い、返還予定の米軍基地の跡地にディズニーリゾートの誘致を目指す方針を伝え、協力を要請した。菅長官は「非常に夢のある話だ。政府として全力で誘致実現に取り組むことを誓いたい」と応じ、バックアップを約束した。
関係者によると、キャンプ瑞慶覧(同市など)の「インダストリアル・コリドー」返還後の跡地に、リゾートホテルなどを誘致する計画が浮上しているという。
これに関し、菅長官は8日午後の記者会見で、「宜野湾市と(事業者と)の橋渡しなどで全面的に協力したい」と強調。政府関係者によると、菅長官は既に、東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドに対し、同市の要望を伝達したという。」(時事 2015年12月8日)
翁長氏は、マスコミの大応援団をバックにして、「戦う知事」路線を突っ走る気のようですが、翁長氏の経済オンチぶりのひどさは超弩級で、せいぜいが沖縄経済同友会に怒られて東町のMICEの規模拡大するていどに終わっています。
翁長氏には、トータルな島の経済についてのグランドデザインが欠落しており、こんな経済オンチにチョッカイを出されるくらいなら、政府がダイレクトに市町村の首長と計画を進めるほうが早いのです。
このように、政府は今や翁長バッシングなどする気はさらさらなく、翁長パッシングの方針にスイッチしたようです。
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[おまけ]
普天間の航空機をレーザー照射していた、馬鹿丸出しのテロリストが逮捕されました。宜野湾市大山に住む平岡克朗容疑者のようです。
この男のうさん臭さは、この人物の「赤のブログ」をみれば、容易に知れます。
「文化度低い日本人はみんな死ねば良いのに!」とか自分に素直になると、ただの悪者扱いされるので………「沖縄の米兵は死ねば良いのに!」くらいに呪いの言葉を縮小し、世界平和を祈りつつ、今年も反日日本人モード(笑)で生きて行きます。」※http://blog.livedoor.jp/russkoepole
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コメント
平岡容疑者の写真だけならともかく、ご家族と思われる方の写真も載せるのは如何なものでしょうか?
投稿: 蒲焼き | 2015年12月 9日 (水) 06時39分