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東芝と化血研で粉飾があった。
東芝はこうだ。
東芝の不正な会計処理について、証券取引等監視委員会は7日、「歴代の社長が当期利益至上主義のもと予算の達成を強く要求したのが原因だ」と指摘し、行政処分の課徴金として過去最高額となる73億7000万円余りの納付を命じるよう金融庁に勧告しました。歴代社長が不正の一部を認識していたことが分かったということで、今後は刑事責任を問うかどうかが焦点となります。
東芝の不正な会計処理はことし2月、証券取引等監視委員会の調査で発覚し、東芝は9月、過去7年間の決算で税引き前の利益を合わせて 2248億円かさ上げしていたとして決算内容を修正しました。
この問題で監視委員会は7日、平成23年から2年分の有価証券報告書について金融商品取引法に違反する虚偽記載に当たると判断し、行政処分の課徴金として過去最高額となる73億7350万円の納付を命じるよう、金融庁に勧告しました。
監視委員会によりますと、歴代の社長が平成20年のリーマンショックで大幅に落ち込んだ業績の回復を急ぐあまり、当期利益至上主義のもと、予算の達成を強く要求したことが不正な会計処理の原因となったということです
( → NHKニュース 2015-12-07 )
下記もある。
→ 東芝問題、なぜ「粉飾」と呼ばないの?全国紙5紙に聞いた
化血研はこうだ。
《 化血研 | 40年以上、不正製造…非承認方法で血液製剤 》
血液製剤やワクチンの国内有数のメーカーである一般財団法人「化学及血清療法研究所」(化血研、熊本市)が、国が承認していない方法で血液製剤を製造した問題で、化血研は2日、製造記録を偽造するなど隠蔽工作をしながら、40年以上にわたり国の承認書と異なる不正製造を続けていたとの調査結果を明らかにした。
報告書によると、化血研は遅くとも1974年には一部の製剤について加温工程を変更し、国の承認書と異なる方法で製造していた。90年ごろには幹部の指示によって、血液製剤を作る際に血液を固まりにくくする添加物を使用する不正製造を始めた。製造効率を上げるためだったという。
化血研は95年ごろから承認書通りに製造したと虚偽の記録を作り、検査をクリアしていた。記録用紙に紫外線を浴びせて変色させ、古い書類だと見せかける工作もしていた。
こうした不正行為はトップである理事長も認識しており、第三者委は「常軌を逸した隠蔽体質が根付いていた」「研究者としてのおごりが不整合(不正)や隠蔽の原因となった」と指摘した。
( → 毎日新聞 2015-12-03 )
いずれも、呆れはてる。比較すれば、STAP 事件なんかよりもはるかに大規模だ。前者は超巨額(2248億円)だし、後者は国民の健康にも直接的に影響する。とんでもないことだ。
にもかかわらず、国民はほとんど等閑視している。STAP 事件や、ライブドア事件に比べると、まったく静かだ。どうなっているんですかね。
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なお、東芝では、監査法人も批判された。
→ 不正見抜けなかった東芝の監査法人、業務停止の可能性も
ここで、監査法人の責任は、きわめて大きい。なぜなら、東芝の不正は、まともな頭で見れば、一目瞭然と言えるほど堂々となされていたからだ。次のように。
→ 東芝の「チャレンジ」を一目で察することができる、あるグラフ
ここでは、毎期ごとに振幅がある。と同時に、振幅の幅がだんだん拡大している。このことが、粉飾の証拠となる。
( ※ つまり、利益の先食いで黒字を出して、そこで生じた赤字を、次の時期から先食いして埋めて、さらに新たに黒字を先食いして……という自転車操業的な方法。利益の先食いをしたことの赤字が、どんどん雪だるま式に増える。)
監査法人が見抜けなかったわけがないので、監査法人もグルになっているわけだ。
しかも、こういうのは、今回だけではない。オリンパス、沖電気、大王製紙、カネボウでもあった。いずれも監査法人が機能していなかった。(グルだった。)
これはもう、国の制度的な問題だと言える。
これほどにもひどいのに、国民はほとんど等閑視している。
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さて。では、このような問題を解決するには、どうすればいいか?
まず思い浮かぶのは、次の案だ。
「不正決算を指示した社長に、重罰を科する。長い懲役刑罰に処する」
これはもっともな案なのだが、残念ながら、東芝のような例には適用ができない。なぜかというと、次の指摘があるからだ。
粉飾が起きた経緯、構図など、今回の東芝のケースはカネボウと非常に良く似ています。どちらも社長ら限られた数人で「こういうふうに数字を仕立てよう」と陰謀を巡らせた形跡はありません。トップから出た「チャレンジ」とか「決算を何とかしろ」という指示に対し、現場があれこれ忖度して色々なことを起こしてしまったという形で、悪者が誰なのか、明確には分かりません。そのため、トップが代わっても、悪事が続いていきました。
東芝もカネボウも不正額は巨額なのですが、数百億円もするような大きな案件はありません。数千万円、数億円、せいぜい数十億円という不正が積もり積もって2000億円超になっています。変な表現ですが、長年にわたってコツコツと積み上げた不正会計です。何らかの形で不正会計にかかわった社員は何百人もいるはずです。
( → 「悪者」なき不正会計、東芝とカネボウの類似性 )
ここでは特定の首謀者がいるわけではないので、「首謀者を罰すればいい」という具合には行かない。(ホリエモンの場合とは異なる。)
では、どうすればいいか?
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私の提案は、こうだ。
「このような問題を解決するには、関与した多大な人々に重罰を科するかわりに、不正を露見させた人(内部通報者)に報償金を与える」
つまり、悪人を罰するかわりに、善人を顕彰すればいいのだ。さらに、巨額の報償金を与えるといい。たとえば、1億円。(この程度の金を与えても、東芝や化血研の巨大な不正に比べれば、ごく微小にすぎない。)
これを持って、私の提案とする。
[ 付記 ]
ただし現実には、それとは逆の動きがある。たとえば、こうだ。
→ 京都市職員「公益通報に使用」 担当外資料持ち出し停職
内部通報者が、不正を見つけて、不正を報告した。すると、「秘密にするべき情報を外部に持ち出した」という理由で、停職処分になってしまった。
つまり、「不正を見つけたらそれをあくまで隠蔽するのが公務員の義務であり、不正を暴露するのは業務違反だ」というわけだ。
呆れるしかない。
そして、これを放置する日本という社会は、気違い社会としか言いようがない。だからこそ、京都では正義の味方を処罰するし、STAP 事件では天才を自殺させる。
もう、滅茶苦茶ばかりだ。だからこそ、衆議院選挙さえ、憲法違反の状態が放置される。「違憲だ」と判定されても、その違憲の国会が堂々と機能し続けている。嘘と阿呆が国を支配しているわけだ。
阿呆国家。
たとえば企業と監査法人のあいだに第三者機関を挟ませて、ある企業の監査をどの監査法人が担当するかを企業サイドが決定できないようにすればある程度は防ぐことができると思います。
監査代金については企業の規模に応じて概ね相場があるでしょうから、その代金を第三者機関に納めて、監査法人側は第三者機関から受け取るというかたちにすればよいでしょう。
もちろん、企業規模に応じて、不適格なほど規模が小さい監査法人が割り当てられないようにするなどの工夫は必要でしょうが。
問題は、大企業を監査できる監査法人は数に限りがあるので、事前にネゴができそうなことと、この第三者機関が天下りの巣窟になりそうであるという懸念はありますね。
もう何度も指摘されたんだけど、政府はやる気がない。なぜなら、経団連の連中が厭がるから。
自民党は経団連に買収されているし、経団連は犯罪したがる犯罪者集団みたいなものなのだから、是正される見込みはない。麻薬販売人が麻薬取り締まりの法律を厭がるのと同様。犯罪者に買収された政府には、是正は無理だ。
被監査法人と監査法人を直接関わらせないということですね。
ただ一方で、わたしのような素人でも容易に思いつき、かつその中身はかなり工夫できそうにもかかわらず、(以下略)なのですから、この現状に理由があると考えるのが妥当です。
わたしなどはここで「識者の解説待ちー」と諦めてしまう方ですね。
http://mainichi.jp/articles/20151205/ddl/k26/040/560000c
http://www.city.kyoto.lg.jp/gyozai/cmsfiles/contents/0000191/191514/271204chokai.pdf
公益通報したから処分したのではなく、個人情報の扱いに問題があったから処分した、というものです。
役所の隠蔽体質が根っこにあるのは賛成しますが、このような不正な手段により取得した情報による通報まで保護すべきではない、と考えます。
(毎日新聞を読んでいたので、朝日新聞の記事には随分と作為を覚えました。マスコミが情報漏洩者を肯定するインセンティブがあるのは理解しますが)
情報をありがとうございました。
リンク先を見てみましたが、これだけでは何とも言えないと思います。詳細が不明なので。
ただ、リンク先よりも、本文で示した朝日の記事に従えば、「公益通報したから処分した」というふうに見えます。
「担当外の内部資料を無断で複写して外部に持ち出した」ということですが、持ち出した先は、どこかの企業やマスコミではなくて、「京都市の公益通報窓口の弁護士」ですよ。ここに通報したら、処罰されるんですか?
たとえば、あなたが人殺しの現場を発見して、警察に通報したとする。しかしそのあとで、「あなたがそのとき赤信号の横断歩道を歩いていたので、処罰する」なんてことになったら、人殺しの現場を発見しても警察に通報してはいけない、というふうになる。犯罪を警察に通報したせいで、処罰される。
一般に、役所や企業は、自らの犯罪を秘匿しようとします。その犯罪情報を取得するには、不正な手段を用いることが必要になるのが普通です。
犯罪者の隠蔽する権利ばかりを重視して、犯罪を隠蔽するのを役立てるのでは、社会的な公益に適さない、というのが私の判断です。
アメリカ政府による大規模な違法行為を暴露したエドワード・スノーデンは、その違法性ゆえに国を追われることになりましたが、彼のやったことは「善」である、というのが、私の認定です。形式的な違法行為で、巨悪を阻止できるのであれば、そのような違法行為は看過されるべきだ、と思います。
エドワード・スノーデンは、ノーベル平和賞の候補となりました。
http://j.mp/1YWvyEo
しかしながら、この内部通報で東芝と化血研は莫大な損失をこうむることになりました。黙っていれば、東芝と化血研は損失をこうむることはなかった(ただし国民は莫大な損失をこうむった)わけです。なのに、内部通報者は、国民の利益を重視して、東芝と化血研は莫大な損失をもたらした。これは、従業員規則などに反する、不正です。従業員は会社の利益のために働く義務があり、会社の利益に反することをしてはならない義務があります。
圭 さんのコメントに従えば、従業員規則などに反する不正をなした内部通報者は、処罰されるべきだ、となります。たとえば、解雇。
一般に、暴力団などの組織は、組織を守るために規則があります。その組織を守る規則に反することは不正です。社会的に正義をなすことは、悪の組織にとっては不正です。
圭 さんのコメントに従えば、悪こそが正義であり、正義こそが悪である、ということになります。
意外なことに、企業の不正を指弾するのは、朝日でなく読売だ。朝日は近ごろ、すっかり軟弱になっている。日和るというよりは、俗っぽく(軽薄に)なっている。
どっちがクォリティ・ペーパーなんだか。