日本、アサド政権「支援」 シリアの電力整備に25億円、事業計画書がウェブから消える
パリ同時多発テロを機に、欧米が軍事介入を強めるシリア。日本政府は民主党政権下の2011年5月、アサド政権への「新規の経済協力は見合わせる」と表明し、安倍政権も引き継いでいる。だが、実は今年1~3月、国連開発計画(UNDP)の事業として、アサド政権の支配下にある火力発電所の補修・復旧のために約25億円を提供する契約を結んだ。
西日本新聞は、UNDPの公式ウェブサイトに掲載された事業計画書(英語)を見つけた。そこには、シリア第3の都市ホムス近郊のジャンダール火力発電所に、タービンの羽根や軸受けの予備を供給する内容が記載されていた。
事業主体はUNDPだが、日本政府が1825万ドル(約22億5千万円)、国際協力機構(JICA)が約199万ドル(約2億5千万円)を提供し、これが事業の全額であることが明記されていた。
「緊急人道支援」が名目だが、電力は軍需産業や軍事活動にも欠かせず、アサド政権の延命に利用される可能性もある。日本政府の資金提供は、アサド政権打倒を掲げる同盟国の米国の立場とも相いれない。
関係者の証言によると、日本外務省やJICA内で、この事業は日本の関与が明るみに出ないよう、扱いは「ゼロ・ビジビリティ(透明度ゼロ)」。11月16日、本紙記者の取材に外務省は「電力インフラ整備への資金提供は一切ない」と否定した。
同じ日、UNDPのウェブサイトから、公開されていた事業計画書が突如、消えた。
【続く】消される前の公式ウェブサイトには・・「理由は言えない」(西日本新聞経済電子版「qBiz」)
=2015/12/08付 西日本新聞朝刊=