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13:27
2ステージ制、楽しんでますか!

Jリーグの順位も決定し、今季の総括のターンに入ってまいりました。すると、早速ですが「2ステージ制は成功だったのか?」的なる視点の総括がゾロ出てきている模様。全部に目を通したわけではないのですが、今すぐにでもソレを書きたい人の論旨というのは「2ステージ制は…ぐぬぬ…表面上の数字だけ見ると失敗とは言い難いが…ぐぬぬ…実はほかの要因があるんじゃないかなぁという気がする可能性があるかもないかもしれないなんてことを考えたり考えなかったりしている…ぐぬぬ…」みたいなところでしょうか。

シーズン前に、「絶対に失敗するであろう!」と派手に反対論をブチ上げてはみたものの、「アレ?意外に盛り上がってるな?」「アレ?客減ってないし、むしろ増えてる…」「アレ?テレビの地上波で流れて視聴率10%もとったの?」という明明白白なポジティブ結果が出てきたもので困惑しているのかもしれません。

で、「きょ、去年よりチームが増えたんだもん!客が増えるのは当たり前!」とか「きょ、去年は雨だらけだったし、無観客試合もあったんだもん!客が増えるのは当たり前!」とか「明治安田生命のサクラが来てただけ!」とか「それじゃない」理由をひねり出し、何とかして2ステージ制とは無縁のところでの現象だと自己完結したい。そのように願っているのではないかとお察しします。

<そういう意識で見ると地獄のミサワの描くサッカーボールみたいなのにバカにされてる感じもする「Jリーグ史上初の入場者数1000万人突破」のお知らせ>


もういい、休もう。休みましょう。その分析は何の役に立つのかと。どれだけ分析したところで「そういう設定なら11年ぶりにゴールデンタイムの生中継しますよ」と決めたテレビ局の判断や、チャンピオンシップ合計で9万人強を動員したプラスアルファの入場者を、「そんなことが起きる気配など影も形もなかったこの数年間」のことを無視して別要因に紐づけられるはずもありません。こうなった以上「来年すぐにでも1ステージ制に戻す」なんてことを考える人は、もう出てこないのです。今すぐに石を投げても相手には届かない。ならば、石は手元に残したまましばらく寝ていたほうがマシというもの。

難しいことを考えずに楽しみましょう。こんな仕組みじゃ楽しめないということでお怒りなのかもしれませんが、楽しくないんなら、いっそ映画でも見たらどうですか。楽しくないことを怒りながらやっても人生が無駄です。あのチャンピオンシップ、僕は掛け値なしに楽しかったと思います。常々「それディズニーランドより面白いの?」という問い掛けをしているスーパーライトユーザーの僕から見ても、アレは面白かった。舞台設定が面白さを生み出していました。意固地になって否定することはないでしょう。

この制度が成功だの失敗だのを議論しても仕方ないし、そんな議論やらないほうがいいのです。「成功」とか「失敗」とか何でもかんでも決めようとするから、面倒なことになる。今日は「決めなくていいんだ」ということについて、手短かにご説明してまいります。


【はじめにおさらい】2ステージ制のよくある疑問について

●年間勝点で順位を決めないのはオカシイ
安心してください、オカシクないですよ。2ステージですから。2015年からJ1リーグは「半年シーズン」のゲームをやっているのです。半年シーズンのゲームで、半年で優勝を決めているだけです。たまたま1年だと2周できる、というだけで。

「2013年から2014年の2年間で最多の勝点を取ったチームはどこか?2位は?3位は?」という質問にパッと答えられますか。答えられないでしょう?それは意味がない情報だからです。1年区切りのゲームを2年分合算することに意味がないように、半年区切りのゲームを1年分合算することにも何の意味もないのです。

本義的には、チャンピオンシップにはファーストステージの王者とセカンドステージの王者が出るべきで、年間勝点1位の枠など必要ないのです。ただ、1年に慣れた「1年主義者」がそれなりに多いので、若干の配慮をしただけ。ファーストの1位・2位とセカンドの1位・2位でたすき掛けしたほうが主旨的にはスッキリするところを、年間勝点での参加権もオマケでつけたのです。

「1年」へのこだわりは気分の問題に過ぎません。季節感によって「区切りは1年であるべき」と勝手に思い込んでいるだけです。大相撲をご覧ください。年6場所あって、6回優勝が決まりますけど、別にヘンじゃないでしょう。大相撲の年間最多勝利なんて「へー」くらいのどうでもいいネタじゃないですか。小麦だって年に2回栽培するんです。サッカーを年に2周しても何も悪くありません。


●チャンピオンシップの仕組みが複雑すぎる
チャンピオンシップ自体は複雑ではないです。始まってしまえば、目の前の試合で勝ったモンが勝ちという極めて単純な勝負です。確かに「どのチームが出場するか」については若干複雑な感じもありますが、それは「年間勝点」という無意味なものに配慮したことによる弊害です。「仕組みが複雑だ!」と言っている人こそ、仕組みを複雑にさせた原因なのです。

むしろ、これまでの優勝争いのほうが情報量が多すぎるという意味で複雑でした。J1で言えば、それぞれ年間34試合を踏まえたうえでなければ、優勝争いの全容を楽しめないわけじゃないですか。大河ドラマの最終回だけ見ても、感動とかないのと同じで。アレは一年間ベッタリくっついていられる人向けの濃くて狭いエンタメです。

その点、チャンピオンシップは過去は何も関係ありません。どれだけドラマを積み上げてこようが、その日の戦いがすべて。劇場映画のように短い時間に楽しさが凝縮されている。「34試合のつづき」として見ようとするから複雑に感じるだけで、そこだけ見る人には何も複雑なことはありません。単純明快、極めてわかりやすい仕組みです。

1年中ベッタリ見ている人は、あの程度の仕組み、文句言わずに理解しましょう。1年かけてじっくりと。


●何で2ステージにするのか、意味がわからない
意味じゃないんです、「面白いから」です。理念はどうでもよくて、大きなモノを賭けた一発勝負・短期決戦の争いは万国共通で「面白い」からやるのです。野球だって6チームしかないのに3チームずつの短期決戦をやってるじゃないですか。五輪などはその最たるもの。エンターテインメントが面白いことを追求して何が悪い。やらなくてもいいけれど、やって悪いことなど何もない。

Jリーグ側がポロポロと漏らす本音では、「スポンサーが逃げたから」という話も出ています。そういう意味では、スポンサー獲得=金のためとも言えます。しかし、それを一段掘り下げれば結局は「面白いものでなければ、金が取れない」という原点に立ち戻ることになります。

「その案なら面白そうなんで地上波中継しますよ」「その案なら面白そうなんでスポンサードしますよ」と言ってもらうために、面白そうな仕組みを考えて提案したのです。そういう意味では今季の制度は「2ステージ制」ではなく「チャンピオンシップ制」と呼ぶべきもの。2ステージをやるための仕組みではなく、チャンピオンシップをやるためにステージを半年区切りにしたのですから。

「大きなモノを賭けた短期決戦をやる」アイディアが先にあり、後付けで理念理屈をくっつけたのです。金に困ったという現実が、「どうやらJリーグはあんまり面白いと思ってもらえていないようだ」という気付きにつながり、何か面白そうなことを始めなくてはいけないという意識を生んだ。そういう順番です。意味なんて、ないのです。

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「成功」と「失敗」を論じるための基準とは?

本件で「成功」と「失敗」を論じたがる人は、多分に見るべき基準を間違えています。「スポーツのルールとは何のためにあるか?」という質問をしましょう。公平性を保つため?選手の安全を守るため?反則を取り締まるため?それはもちろんそうなのですが、答えはその一段下の階層にあります。

スポーツのルールは、面白くするためにあるのです。

「手を使わずにボールをゴールに入れるゲームをしたら、面白いんじゃね?」「手を使ってもいいけど、屋根にぶら下げたカゴにボールを入れることにしたら、面白いんじゃね?」「ボール投げて棒で打ち返したら、面白いんじゃね?」という根幹のゲーム性を定義し、面白いものにしていくためにルールはあるのです。

公平じゃないとモメて面白くなくなる。安全じゃないとモメて面白くなくなる。反則されたらモメて面白くなくなる。そうならないようにルールが制限をかける。だから、時代とともにルールは変わるのです。今まではオフサイドだったものが、ある時から急にOKになったり。守るべき原理原則などないのです。

だから、今回のチャンピオンシップ制についても「面白かったかどうか」を意識して論じなければ意味がありません。テレビ中継が増えたとか、観客動員数が増えたとか、スポンサーがついたとかは、面白さを示す指標のひとつではあるけれども全部ではありません。何とかして「失敗」という結論を導き出そうとする人が見ているモノは副次的な指標ばかり。本質に触れてはいません。

そもそも失敗論者すら、何やかんやで見ているわけじゃないですか。本当に失敗なら「つまらなくなったので今年は見てません」というところから論じ始めるべきなのに、見ちゃってる。チャンピオンシップに興奮して「神試合やー!」と言っていたクチから、「しかし、この制度は失敗だったと思う(キリッ)」なんて言葉が出てくると滑稽でさえあります。エッチなお店で気持ちよくなったあとで説教する客みたいな感じで。エッチなお店で気持ちよくなったあと説教する客、ほんとみっともないです。気持ちよかったんなら、楽しく終わりましょう。

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では、チャンピオンシップ制は面白かったと結論づけてよいのか?

チャンピオンシップ制は面白かった、と僕は思っています。今は。ただ、これもまた結論づけるべきことではない。ルールが常に変化するのは、面白さそのものが変化していくから。今年に限っては面白かったけれど、来年もそうとは限らない。制度によって面白さが決まるのではなく、時々刻々変化していく面白さに寄り添うように制度が変わっていかなければならない。

面白くありつづけるというのは、変わりつづけるということ。どんなに素晴らしい物語も繰り返せば飽きます。飽きれば、これまでの面白さは否定され、一転つまらないものになる。Jリーグなんてのは、プロ化という大変革でメインストリームにのしあがったエンタメ。変わることの効果を実感として知っているはずです。これで決定!なんて終着点はないのです。

「チャンピオンシップ制」もそのうち飽きられます。今の評価と将来の評価はまた違う。そのときはまた別の面白い仕組みを出すのです。それが飽きられたら、また別のものを出す。そのローテーションの中で、チャンピオンシップ制の出番もまた巡ってくる。戦術やシステムに流行があるように、制度もめぐりめぐるものなのです。

2015年の我々が「この制度は大失敗であった」みたいなレポートを書いたら、将来の手持ちカードが1枚減るだけです。逆に「大成功」なんて言い出したら、飽きたときに「何故ダメになったのか?」と追及されかねない。「面白かったなぁ」というボヤーッとした思考停止で結論を「棚上げ」するのが適切です。「3バックは終わった」とか言っちゃうと数年後に絶対痛い目見るわけじゃないですか。そういう短絡思考はみっともないですし、将来の人の迷惑になるので勝手に結論づけないようにしましょう。


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1年主義者がコレからすべきこと

「マニアがジャンルを潰す」とはよく言いますが、正確にはマニアが潰すのではなく、長年の愛玩によって凝り固まった思考や、煮詰まった趣味嗜好がジャンルを潰すのだと思います。変化を嫌う者ばかりが集まり、大きな声を上げることで、新たな面白さについていけなくなるのです。

昨今のJリーグはすべてが見事な手腕とまではいかないものの、新しい取り組みを始めています。ウェブ周りをちゃんとしようという意識も見えますし、動画配信のスピードも上がってきました。インスタグラムのようなSNSからの発信というのも心がけ、スピード感で言えば各クラブのそれを上回っていると感じます。その足を引っ張るようなことは避けたいもの。

「ダメだ」「イヤだ」「ヤメロ」の連呼ではなく、「なるほど面白そうだ、いっちょ試してみたまえ」という前のめりの姿勢でありたいもの。前のめりに待ってくれているなら、半分ダメかなーと思うような案も日の目を見るのです。拒絶したって無駄なんですから、まずは新しい仕組みを受け入れて楽しみましょう。楽しんでいる人がいる場所に、楽しみを探す人は吸い寄せられてきます。

そして、また「飽き」のターンがめぐってきたとき、そっと自分の理想を提示するのです。「こういう案も面白いんじゃないか?」と。チャンピオンシップ制しか知らない人が多くなったところで、改めて1年主義を提示すれば、新しくて面白いような気がするのです。そのとき、運営側に拒否する道理はないのです。運営側は別にどっちでもよくて、みなが「面白そう」と思うものを探しているだけなのですから。客が減ったら手を替え品を替え、熱気が冷めたら手を替え品を替え。必ずまた1年主義の出番はきます。世界の多くのスポーツで採用されている制度なのですから、悪いものであるはずがない。すべてはめぐりめぐっているだけ。もうしばらく黙ってお待ちください。

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どっちがいいとか成功とか失敗じゃないんだ!飽きたら替える、それが唯一の真理!