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春秋

2014/1/10 3:30
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 刑法には「飲料水に関する罪」という章がある。水道などへの毒物混入や汚染を厳しく罰する条文が並び、これだけで独立した犯罪類型を構成している。毒物混入によって人を死なせた場合の最高刑は死刑。明治時代に刑法を定めたときから、これらのくだりはあった。

▼いつでもどこでも、きれいな水が飲める近代的な水道システムは明治の人々を大いに喜ばせただろう。しかし不特定多数の人が使う浄水だから、毒などが投げ込まれれば被害はとめどなく広がることになる。そんな不安がこの規定を生んだに違いないが、食品でも同じような危険があるとは当時は考えつかなかったようだ。

▼法の不備を思い知らされたのは時代がずっと下って昭和の終わりごろ、グリコ・森永事件が起きてからである。「かい人21面相」が青酸入り菓子をばらまき、世の中は騒然となった。事件は未解決のまま今年で発生30年になる。これを機に流通食品毒物混入防止法なる法律ができたのはせめてもの救いだったかもしれない。

▼アクリフーズ社の冷凍食品から農薬が検出された問題で、警察はこの法律の適用を探っているという。使えるならグリコ・森永のかたきを少しでも討つ格好になるわけだが、くだんの農薬が毒物にあたるかどうかが焦点だというから法はなお不完全な観がある。あの忌まわしい事件の教訓を、いま一度かみしめる時だろう。

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