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シフト 2035年の未来
【第8回】 2015年12月8日
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マシュー・バロウズ,藤原朝子 [学習院女子大学]

人口爆発がもたらす「水」の足りない未来

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大統領の指針ともなる最高情報機関・米国国家会議(NIC)。CIA、国防総省、国土安全保障省――米国16の情報機関のデータを統括するNICトップ分析官が辞任後、初めて著した全米話題作『シフト 2035年、米国最高情報機関が予測する驚愕の未来』が11月20日に発売された。在任中には明かせなかった政治・経済・軍事・テクノロジーなど、多岐に渡る分析のなかから本連載では、そのエッセンスを紹介する。

多くの先進国では高齢化・人口減が課題となっているが、マクロ的には世界は「これから」人口爆発を迎えるといえる。15年後には食糧需要は135%増だが、食糧生産の伸びはそれに遠く及ばない。マルサスの予言は21世紀に的中するのか――NIC元トップアナリストが分析する。

世界は「これから」
人口爆発をむかえる

水や食料の「欠乏」という表現にはさまざまな含意があり、『グローバル・トレンド2030』(新大統領に手渡される報告書)で使うかどうかは大きな議論になった。マルサス的な食うか食われるかの生存競争を思い起こさせるとして、その表現を嫌う人は多かった。

マルサスの主張は間違っていたからなおさらだ。18世紀の経済学者トマス・マルサスは、人口爆発によって貧困が生じるのは必然だと主張したが、実際にはそうはならなかった。テクノロジーが発達して、農業生産が増えたために、人口爆発は食料供給を凌駕することはなかったのだ。しかし21世紀も同じになるとは限らない

積極的な予防措置を取らなければ、大規模な欠乏が生じるのは間違いない。現在の1人当たりの食料と水の消費パターンを見れば、20年後の問題が予測できる。食料需要は2030年までに35%以上増えるが、食料生産の伸びは遠く及びそうにない。1970〜2000年は年間2.0%のペースで伸びてきたが、現在は1.1%まで鈍化しており、今後も鈍化が予想される。

マッキンゼー・グローバル・インスティテュートによると、「資源価格のトレンド」は2000年を境に、「突然、決定的に変わった」。20世紀の間は、資源価格は実質ベースで下落していたが、2000年以降は2倍以上高騰した(過去2年間は商品価格が下落しているにもかかわらず、だ)。資源価格はいまも歴史的な高値水準にある。

過去8年間、世界の食料消費量は生産量を上回ってきた。ある研究によると、2030年の世界の水の年間需要は6兆9000億立方メートルと、現在の持続可能な水供給量を40%上回ると見られている。

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米国の最高情報機関であるNIC(国家情報会議)の元分析・報告部部長。直近の2号である『グローバルトレンド』(2025/2030)で主筆を担当。ウェズリアン大学(学士号)とケンブリッジ大学(博士号)で歴史学を学ぶ。1986年にCIA入局。2003年にNICに加わる。28年に渡って国家情報アナリストとして活躍。リチャード・ホルブルック国連大使の情報顧問を務めたこともある。2013年に辞任し、現在は「アトランティック・カウンシル」戦略フォーサイト・イニシアチブ部長を務める。ワシントン在住。

 

藤原朝子[学習院女子大学]

 

学習院女子大学非常勤講師。フォーリン・アフェアーズ日本語版、ロイター通信などで翻訳を担当。訳書に『撤退するアメリカと「無秩序」の世紀』(ダイヤモンド社)、『ハーバードビジネススクールが教えてくれたこと、教えてくれなかったこと』(CCCメディアハウス)、『未来のイノベーターはどう育つのか ―― 子供の可能性を伸ばすもの・つぶすもの』(英治出版)など。

 


シフト 2035年の未来

大統領をも動かす米国最高情報機関NIC元トップ分析官が、「2035年」の未来を徹底予測! CIA、国防総省、国土安全保障省……米国16の情報機関を統括し、未来予測・分析を行う諮問機関が、国家情報会議(NIC)です。政治・経済・軍事・テクノロジー、あらゆる領域からNICトップ分析官が在任中には明かせなかった不都合な「シフト」を分析します。

「シフト 2035年の未来」

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