【特命記者】
“常識破り”の野球帽72万個無料配布【拡大】
前例のない経営改革が進んでいる。プロ野球参入から、わずか4年。DeNAは、数十億円単位で赤字を膨らませていた球団を、単体で黒字化させようとしている。
「親会社の宣伝ツール、広告としての色彩を、球団経営からなくそうと思っていた。プロ野球も株式会社。単独で生きられないといけない。考え方を変えるところからのスタートでした」
池田球団社長が穏やかな笑みを浮かべ、振り返った。単体で黒字のプロ野球球団は巨人、広島など数球団にすぎない。多くは親会社から宣伝広告費の名目で10億円にも及ぶ赤字補填(ほてん)を受けている。2011年12月、ベイスターズの株式をTBSから65億円で取得した。当時は約30億円の赤字を抱えていた。
ところが、11年度に約50億円だった売り上げは今年度90億円に達し、赤字は5億円を切る見通し。横浜スタジアムの運営会社の株式公開買い付けも進んでおり、来年度は合算での黒字転換が実現する可能性が高い。
好調の理由は観客動員の急伸にある。参入前の11年、総動員は約110万人で動員率(球場の座席数に占める観客数)は52%。なんと半分が空席だった。約181万人を動員した今季の動員率は88%。43度の大入り満員、23度のチケット完売は、日本一で空前のフィーバーとなった1998年の23度、10度を上回る球団新記録だった。
「秘訣(ひけつ)はマーケティング。どの業種も同じ、セオリーです」
池田社長が力を込めた。1日、球団誕生5年目の記念に、72万個の野球帽を神奈川県下の小学校など3730カ所の子供たちに無料配布すると発表した。緻密な戦略が、地域貢献と集客の両立を支えている。