虎に激震が走った。阪神が、2年契約を終えて来季の慰留に努めてきた呉昇桓投手(33)と交渉を打ち切る可能性が急浮上した。7日、母国の韓国メディアが海外での不法賭博容疑で検察に召喚すると報道。かねて大リーグ志望の呉昇桓に対して残留を熱望してきた阪神も緊急で事情聴取する方針だ。今週末を回答期限にしており、契約がまとまっても、今後の捜査で有罪なら破棄する方向。にわかに暗雲が垂れ込めてきた。
新人が晴れ舞台に立つ裏側で、阪神に衝撃的なニュースが舞い込んだ。この日の午前中だ。来季も守護神と見込んで残留交渉を行っている呉昇桓が不法賭博の疑いのため、今週中にも母国韓国の検察に召喚されると大手紙を含めた韓国メディアで一斉に報じられた。
韓国・サムスンの同僚だった林昌勇がマカオでの不法賭博について取り調べを受けた。親しい呉昇桓にも疑惑の目を向けられていたが、阪神との交渉で代理人が「賭博行為はない」と否定したこともあり、引き続き慰留に努めていた。複数の現地報道を総合すると、カジノで暴力団関係者から巨額の資金を借りた疑いがあり、今週中にもソウル中央地検で取り調べを受けるという。被疑者として非公開調査になり、捜査に協力的な姿勢を示す呉昇桓側と日程を調整中だと伝えている。
今季で阪神との2年契約を終え、11月で締め切られた保留選手名簿にも記名されなかったことから自由契約になっていた。かねて大リーグ志望を打ち出しており、今日8日から米国で始まる大リーグのウインターミーティングに備えて、代理人とともに米国に滞在しているとみられる。本格的な交渉に入るタイミングでの報道。去就に大きな影響を与えるのは間違いない。
阪神も対応に迫られる。金本監督も2年連続セーブ王の残留を熱望してきた。この日、四藤球団社長は交渉の打ち切りについて問われると「事実関係が分からないし、何とも判断しようがない」と話すにとどめた。「ヒアリングさせてもらいます」とも説明し、担当者を韓国に派遣することも検討。阪神側から交渉を打ち切る可能性も浮上する。
11月末には、球団首脳が「召喚されるようなことがあるなら(契約は)アウトだろう」と見通しを明かしていたが、まずは推移を見守る方針。検察で取り調べを受ければ長期化する恐れもある。ある韓国筋は「何度も取り調べを受ければ結論が出るのは3、4月になる可能性もある」と説明。阪神は今週中に設定する最終回答で残留が決まっても、今後の取り調べで有罪が確定すれば契約破棄する方向だ。戦力を編成する上でも不透明な状況に陥った。
◆韓国選手賭博問題 韓国の警察が中国マカオのカジノで不法賭博に関わっていた野球選手を捜査していることが明らかになり、韓国プロ野球サムスンが10月20日、複数の選手がこれに関与した疑いがあることを公表。その後、同球団で守護神として活躍する元ヤクルトの林昌勇が含まれていることが判明。同26日に韓国シリーズの出場登録メンバーから外され、プレミア12の韓国代表からも除外された。韓国メディアによれば、11月24日にソウル地検で取り調べを受けた林は賭博行為は認めたが、数千万円と言われる賭け金については数百万円だと主張しているという。同30日に発表された球団の保留選手名簿から外れ、引退危機に追い込まれている。
◆韓国の賭博事情 韓国では賭博に対する厳しい規制を敷いている。国内には複数の賭博施設があるが、ほとんどが外国人向けで韓国人が出入りできるのは1カ所だけ。また、刑法では、海外で韓国人が賭博を行った場合の処罰規定もある。明確な線引きはないが、「常習」と「一時的」な行為で解釈が変わってくる。起訴されると、どの程度の金額を使ったか、賭博を行う頻度、行った人の社会的地位も総合的に判断される。今回、韓国検察は、韓国のプロ野球選手の賭博額が娯楽レベルを超えたとみて司法処理する方向を決めた。