東芝の室町正志社長は7日開いた記者会見で、検討を進めているパソコンや家電のリストラでの他社との事業再編について「選択肢の一つ」と話し、両分野で複数のリストラ案を模索していることを明らかにした。年内には案を固めて発表したい意向も改めて示した。東芝に課徴金を科すよう金融庁が勧告されたことで不祥事に区切りを付け、不適切な会計処理の温床となったパソコン事業などでリストラを急ぐ。
東芝はパソコン事業で富士通や、ソニーの事業を分離して独立したVAIO(バイオ、長野県安曇野市)との統合を検討している。一方、不採算部門の一つである白物家電ではシャープの同部門と統合する構想がある。室町氏は会見で両再編のいずれについても「選択肢の一つ」と指摘した。
パソコン事業の統合は具体的な検討を始めており、近く富士通やVAIOと協議入りする見通し。統合会社に東芝と富士通、VAIOの筆頭株主である投資ファンド、日本産業パートナーズ(東京・千代田)が出資する案が有力だ。
ただ、シャープとの家電統合については東芝幹部が7日「パソコン事業の統合とはレベルが違う。外部から構想が持ち込まれている段階にすぎない」と述べた。「『弱者連合』となるだけで難しいのでは」(別の幹部)など、実現には課題が多いとの指摘が出ている。
室町氏は両再編案をひとまとめに「選択肢」と話すことで、テレビ事業を含め、すべての不採算部門のリストラを早急に進めたい意向を内外に示す狙いがあるようだ。「制約を設けない抜本的な構造改革を断行する。内容は相当幅広く検討している最中だ」とも強調。年内をめどに「踏み込んだ発表ができるようにしたい」と話した。
事業統合や売却の前段階として「内部の努力でのスリム化が必要」と述べた。不採算事業で固定費の削減や工場の閉鎖・売却の検討、製品や海外販路の絞り込みに取り組む方針。まず自社で利益体質を取り戻す。「2016年からは黒字体質になるように内部体制を強化したい」とも述べ、事業再編に時間がかかった場合でも経営の足かせにならないようにする考えを強調した。
室町氏の出身母体である半導体では、画像用半導体の生産設備をソニーに売却することを決めるなど改革案を手早くまとめて発表した。リストラの「本命」と位置付けられるパソコンも3社の事業統合が走り出し、家電は工場売却などのリストラ推進が不可欠だ。室町氏の言葉通り、年内をめどに具体策をまとめられるかが問われる。
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