大村智さん、梶田隆章さんらへのノーベル賞授賞式があさって、ストックホルムである。

 1世紀余の歴史をもつノーベル賞は、後世にいっそうの重みをもつ先駆的な賞である。

 アルフレッド・ノーベルは「人類のために最大の貢献をした人々」の顕彰を遺言した。自らが発明したダイナマイトの軍事利用で多くの人々が死傷し、「死の商人」と批判されたことを気に病んだためといわれる。

 今風にいえば、軍事・民生どちらにも技術が使われるデュアルユースへの割り切れぬ思いがノーベル賞を誕生させたのだ。

 科学技術の軍事利用の最たるものが核兵器であろう。

 原爆を開発した核物理学者らの後悔や社会への責任感は、核戦争阻止を訴える世界的な科学者組織「パグウォッシュ会議」を生み、同会議は1995年にノーベル平和賞を受けた。

 原爆投下70年の今年、被爆地長崎で開いた世界大会では「世界の政治指導者に対し、被爆者の叫びを受け止めるよう強く訴える」「核兵器の法的禁止を目指す全世界的な運動が重要」などとする宣言を採択した。

 大会では核問題を超え、科学者の社会的責任についても、広い観点で話し合った。

 非公開の分科会では、最先端のデュアルユース技術として、生命工学や情報技術、ナノテクノロジー、自律型ロボット、ドローンなどが議論に上った。

 ほぼすべての領域に科学技術が浸透した現代は、その成果が思いがけない形で軍事と結びつく恐れが広がっている。

 パグウォッシュ会議の宣言は「今日、科学者の社会的責任はかつてないほど重大なものになっている」とも指摘する。

 科学の最前線を担う大学などの研究機関で、その責任感を培う努力をもっと高めたい。

 防衛省は今年初めて、大学などの研究者を対象に「将来装備に向けた研究開発」を公募し、大学からの4件を含む9件を採択した。

 一方、新潟大は10月、大学の「科学者の行動指針」に「軍事への寄与を目的とする研究は、行わない」との一文を加えた。

 従来、軍事研究と大学の垣根が比較的高かった日本では、科学者や技術者が社会的責任やデュアルユースの問題を考える機会は少なかった。だが、関心が低いままでいいとは思えない。

 簡単に答えの出ない問いだからこそ、大学や学会などが積極的に教育課程に組み込んでほしい。世代を超えて科学と社会のかかわりを考え続けることが、ノーベルの願いでもある。