2015-12-08

吉野家の七味

対面のおじさんが必死に七味を振り掛けている。

おじさん、ここの七味は香り重視だ。たれの味を損なわない吉野家のこだわりだ。

そんなに辛いのが好きか、おじさん。

俺はU字カウンターの向こう側に回り、おじさんに瓶を差し出す。

愛用のマイ一味(業務大瓶)だ。

おじさんは驚いた表情で俺の顔を見つめ、その後目をそらし言った。

「ありがとう」

無言で微笑み返す俺。

自席に戻った俺は食事を再開する。

会計の時に店員に言う。

今日たまねぎの煮込み具合は実に俺好みだった」

あわててマイ一味(業務大瓶)を返そうとするおじさん。

いいんだ、おじさん。それはあんたにあげたんだ。

ユア一味(業務大瓶)だ。

ポケットから未開封のマイ一味(業務大瓶)をおじさんに見せた。

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