イスラム国、まもなく中国に侵入か【佐藤優のインテリジェンスレポート】拠点を奪われたテロリストが向かう先

2015年12月04日(金) 佐藤 優

佐藤 優賢者の知恵

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邦丸: 中国政府も新疆ウイグル自治区に対しては、ずいぶん報道もされているなかで、弾圧に近いこともやっていますし、これに対して中国というのは今、そうとうデリケートになっているということですか。

佐藤: いや、ちょっと違います。どこが違うかというと、新疆ウイグルのウイグル人は複合アイデンティティを持っているんです。どういうことかというと、ウイグル人だというアイデンティティもあります。それが民族独立運動につながるんですね。同時にもう一つ、イスラム教徒、特にイスラム国と同じスンニー派のイスラム教徒だという意識もあるんですよ。

中国は民族独立運動の弾圧はすごくやっているんですが、イスラム主義についてはどう働きかけたらいいかわからないんです。

邦丸: 今?

佐藤: なぜかというと、「回族」って聞いたことありますか?

邦丸: はい。回族。

佐藤: 回族は漢人と同様、中国人なんです。ところが、宗教だけがイスラム教なんです。だから中華レストランで、ブタ肉を使わないでヒツジの肉だけを使う店があるんですよ。それは回族の店なんです。回族はブタを食べないから。

イスラム国がこの回族に波及すると、ものすごく深刻なことになるんですよ。中国はイスラムには触らないという感じでやっていますから、イスラム主義に対する防御が十分にできていないんですね。

だから、ウイグルの回族の人たちが「トルコに行く」ということだと、東トルキスタン独立運動があるからそれは認めないで、ものすごく警戒する。ところが、「巡礼に行きたい」と言えば国外に出られますから、そこでアルカイダ系と接触したり、イスラム国と接触したりすることは平気でできますからね。

イスラム主義に対しては、実は中国は緩いんです。というか、よくわかっていないんです。アメリカと中国は、複雑な問題はあまり理解できないんですね。大国過ぎるんです。

邦丸: 大き過ぎちゃうの?

佐藤: 大き過ぎる。

邦丸: はあ~~。ということは、シリア、イラクからISが追われて中央アジアの方に行って、新疆ウイグル自治区も含むそのエリアに新しい国をつくろうとするのを阻止する手はないんですか?

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