性的暴行は「神への祈り」
年々増え続けている内部ポリシーの覚書や神学上の議論に基づき、奴隷制度のガイドラインが制定された。この中には、つい先月(2015年7月)、イスラム国・リサーチおよびファトゥワ省が発表したばかりの長いハウツー手引もある。
ISのリーダーたちは、コーランやその他の宗教上の規則の狭義かつ限定された解釈を繰り返し強調し、暴力を正当化するばかりか、各々の性的暴行は精神的なメリットがあり高潔なものだとして持ち上げ賞賛している。
「彼が私を強姦しに来たときは、毎回、お祈りをしていました」と語るのは15歳の少女F。彼女は1年前にシンジャル山の肩で拉致され、20代のイラクの兵士に売られた。ニューヨークタイムズ紙がインタビューした他の何人かと同様、この少女も強姦されたことを恥じ、名前のイニシャルだけを使うことを希望した。
彼女は、男はイスラム経典で「礼拝」を意味する言葉を使い、「これは『イバダ(ibadah)』なんだと繰り返し言っていました」と語る。
「彼は、私を強姦するのは、自分にとっては神への祈りだと言いました。私が、『あなたが私にやっていることは間違っています。そんなことをしても神に近づくことはできません』と言うと、『そんなことはない。これは許されたことなんだ。ハラールだよ』と言いました」と、このティーンエイジャーは語っている。
少女は、約9ヵ月も奴隷にされた後、4月に密輸業者の手を借りて脱出した。
計画的征服
イスラム国が組織的な性奴隷を正式に導入したのは、2014年8月3日だ。この日、兵士たちは北イラクにある焦げ茶色の岩の大山塊でごつごつしたシンジャル山南側にある村々に侵入した。
この谷と峡谷がヤジディ教徒の故郷だ。ヤジディ教徒は小さなマイノリティ・グループで、イラクの推定人口3400万人の1.5パーセント以下を占めるに過ぎない。
この山への攻撃があったのは、イラク第二の都市モースル陥落のわずか2ヵ月後のことだった。最初、それに続いて起きた山への進出は、IS兵士が支配する新たな領土を拡大する試みのひとつのように見えた。
しかし間もなく、今回の目的が異なるものであることの兆しが現れた。
生存者たちは、拉致された後、1時間以内に男女別々にされたと言う。あちらの村でもこちらの村でも、男性と年長の少年たちは近くの野原に追われるか、行進させられた。そこで彼らは地面に横たわるよう言われ、自動銃の砲火を浴びたのだ。
しかし女性と少女、そして子供たちは、囲いのないトラックに乗せられ連行された。