「石焼~き芋~、お芋~」。石焼き芋の移動販売は、ニッポンの冬の風物詩だ。数は減っているものの、いまだ都内でも時々見かける。
その中の一人、塚本勲さん(46歳)は勤めていた中古車販売店を辞め、今年10月に仲間3人と「石黒」という屋号で石焼き芋の移動販売を始めた。現在は、江東区、墨田区、中央区、台東区を中心に巡回している。
「今日は豊洲にいますよ」というので、さっそく訪ねて話を聞いた。
「過去にやっていた人から『けっこう儲かるよ』という話を聞いたのが、焼き芋屋を始めたきっかけ。いろいろと調べてみましたが、ネット上にはほとんど情報がなかった。じゃあ、逆にSNSなどで宣伝すれば、珍しがられてウケるんじゃないかと思ったんです」
全国各地の芋を味見した結果、種子島産の安納芋と九州産の紅はるかで勝負することにした。これを100g200円で売る。値段が多少高くても圧倒的に美味しいものを売ることで、スーパーの店頭などで売られている焼き芋との差別化を図ろうという戦略だ。
初期費用として約200万円を投入し、販売車を2台用意した。1台にかかった費用の内訳は、車が70万円、ほろが5万円、石窯が22万円、焼き芋専用の石が15kgで3000円、提灯が1500円。その他、1台ごとのランニングコストとして、プロパンガスのボンベレンタル代に4000円(約2日分)、芋の仕入れに10kgで4000円、プリント入り紙袋が100枚で900円、車のガソリン代に1日1000円ほどかかるという。
「こういう高層マンションが立つ街を狙うので、客層は主婦がメインですね。売り上げは1日平均で1万5000円から2万5000円ぐらい。実際には定価より安く売っちゃうんでボロ儲けというわけにはいきません」
開業するにあたって気になるのは申請の類だが、焼き芋のように簡単な加工をするだけの場合は保健所への届け出は不要だそうだ。また、縄張りのようなものもないが、「新参者なので、同業者とぶつかったらさっと譲ります(笑)」とのこと。
「この仕事の楽しい点は、何と言っても自由なところ。夏はどうするんだ、とよく心配されますが、じつはいまアイスのような“冷凍芋”を開発中で、暑くなったらこれを投入しようと思っています」
最後に、冒頭の呼び声について聞いてみた。あれは全国共通のようだが――。
「おじさんの声のやつは1本1万円のテープ。でも、うちはネットで拾ったボーカロイドの音声を使っていて、男性版と女性版を交互に流しています(笑)」
おお、SNSの活用といい、どうやら新世代の焼き芋屋さんのようだ。
【路上のビジネスデータ】
「石焼き芋 石黒」(焼き芋移動販売)
・開業資金:約100万円
・営業地域:江東区、墨田区、中央区、台東区を中心に都内23区
・営業時間:13:30ぐらい~21:00ぐらい。雨天のみ休
・メニュー:規格品100g200円(サービス品100g150円)
・月収:約150万円 (2台分)
・毎月の必要経費:仕入れ代、ガソリン代、プロパンガスのボンベレンタル代、紙袋代などで30~40万円程度
・HP:http://石焼き芋.com
(石原たきび)
■スモールビジネスの舞台裏 第4回
(R25編集部)
※コラムの内容は、フリーマガジンR25およびR25から一部抜粋したものです
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