12年連続販売増に暗雲か
それだけではない。「実は、サントリーが抱える悩みはもっと深い」と同社幹部は漏らす。「スタンダードビール『ザ・モルツ』の失速が、虎の子の『ザ・プレミアム・モルツ』のブランドイメージを毀損するリスクがある」(同幹部)というのだ。
そもそも、既にプレミアム価格帯の商品を持ちながら、同ブランドでスタンダード価格帯の商品を後から投入するのは異例中の異例。「『ザ・モルツ』不調のイメージが、『プレモル』へ悪影響をもたらしかねない」と競合のマーケティング担当者も指摘する。
2003年の発売から11年連続で販売数量増を達成してきた「プレモル」だが、「今年は更新できるか微妙な状況だ」(サントリー関係者)。となれば、「ザ・モルツ」の不調が、サントリーのビール事業全体へまん延しかねない。
「ザ・モルツ」の投入プロジェクトは、新浪剛史・サントリーホールディングス社長の“肝いり”で進められたもの。社内の批判が新浪社長に集中し、求心力が低下する恐れもある。
サントリーは12月上旬から「プレモル」の味を2年9カ月ぶりに刷新する。新プレモルで連続販売数量増を死守できるか。ビール事業の先行きを左右する正念場の師走となりそうだ。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 泉 秀一)