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 喜び以外ないですね。僕は2回優勝を経験しているけど、まだ経験してことがない選手に、優勝の喜びを味わわせてあげたいという思いがあった。

 結果的には、年間の勝ち点で言えば、過去最多の勝ち点を取れたんですけど、シーズン序盤は特に攻撃の面でなかなか良い連係が取れていなかった。去年までの前線の主力が2人抜けたので、仕方のない部分もあった。まさかここまで勝ち点を取れるとは思ってなかった。

 正直言うと、苦しかったシーズンだったかな。本当、いろいろ葛藤しながらプレーしていた。やっぱり理想を求めながら、でも現実を見てサッカーをしていた。そのなかで救われたというか、気持ちの面で落ちることがなかったのは、結果が出ていたっていうのが大きかった。

 3、4月には3試合連続無得点。森保さんに言われたのが「残り全試合、得点が取れなくても、無失点でいけば、試合数だけの勝ち点は取れる」と。ちょっと気持ちが楽になりました。

 チームとして一つ自信になったのが、7月にその時点で今季無敗だった浦和に敵地で勝てたこと。ハーフタイム。監督が選手一人一人に「どこを目指しているのか」と強いげき。みんなが「優勝を狙ってる」と口をそろえた。逆転出来て、我慢すれば、結果を出せるという成功体験。きっかけになった試合だったかな。

 毎年のように選手が移籍していくけど、森保さんが監督になってから結果を出してきたのに、なんで出ていくのかなという思いはある。半面、選手の出入りがあるのがこの世界。ただサンフレッチェでプレーしたいという選手がシーズン初めにはそろっているので、このメンバーで結果をという反骨心はあります。

 僕は地元のクラブでプレーすることに誇りをもっている。広島出身の選手が地元のクラブでもっと活躍してほしい。ユースの大会結果などをチェックしている。自前で育てた選手がトップに上がって活躍しないと、厳しいクラブ。育成型クラブとして、下部組織出身の選手が出てきてくれないと、未来はない。やっぱり気になりますね。

 高校生から試合に出させてもらえた自分がプロで成功することで、下部組織の後輩に「自分たちもできるんだ」と見本になれるような選手でありたいなとは思ってきた。そういう使命があるんじゃないかなと思いながらプレーしています。

 森保監督は、選手時代と変わっていない。誰とでもコミュニケーションを取るのがうまいですし、選手時代も今も、やっぱりリーダーシップっていうか、そういうのはもともとある方だなと思います。選手のときもそうでしたけど、監督になってもそうですし、人として尊敬できる人だなというのは見ていて感じます。

 (双子の弟の)浩司とは、年を重ねるごとに話す時間は長くなったと思います。ほとんどサッカーの話。昔は本当に比較されてばっかりで、まあ一緒にいるのがいやだなという時期ももちろんありました。小学校、中学校の頃とかです。やっぱりお互い刺激をしあえる良い関係だと思いますし、浩司がいたからこそ、自分もこれだけ長くできた部分は多少あると思う。それはたぶんお互いに思っていると思います。浩司が活躍していると、自分もという気持ちに自然となります。逆でもそうだと思います。刺激し合える仲かなと思います。それはたぶん他の選手では感じられない。

 この4年で3度目の優勝。正直、ここまで結果を出せるチームになるっていうのは若い頃には想像出来なかったですね。若い頃は残留争いがほとんどでしたし、2桁順位で終わるのが大体だったので。なかなかタイトルを取るっていうのは口では言ってても、なかなかこう具体的にイメージとかは出来なかった。ここ4年で3度目の優勝が出来たっていうことで、ようやく自分たちもできるんだっていうふうに思いました。(Jリーグを7度制している)鹿島みたいに「常勝軍団」とは、まだ言われないかもしれない。だけど、ようやくそのスタートラインに立ったかな。これからが、大事になってくるのかなと思っています。

 夢は広島にサッカースタジアムが出来ることです。広島の街のシンボル的な感じで、サッカーのときはもちろんのこと、サッカーがない日でも、いろんな人が集まれるスタジアムであってほしい。いろんなことに活用できるスタジアムがいいです。街づくりに役立つためのスタジアムであれば1番いいかなと思う。できれば、やっぱり現役中にスタジアムができて、そこでプレーしたいという思いはあります。でも、仮に現役中じゃなくても、将来できることで、いろんなプラス要素は働くと思う。それが夢というか願いです。(構成・堤之剛)

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 もりさき・かずゆき 1981年生まれ。34歳。広島県出身。1999年のJ1デビュー以来広島一筋で、J1・J2の通算出場はクラブ史上最多の467試合。双子の弟・浩司も広島一筋でチームメート。