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秘密法適性評価 監視の懸念が消えない

 特定秘密保護法に基づき、情報を漏らす恐れがないかを調べる「適性評価」を受けた公務員や民間人が、9万7560人に上ったという。

     各行政機関が実施する「適性評価」の調査内容には、スパイやテロの活動に関与していないかだけでなく、犯罪歴や精神障害、薬物乱用の有無、飲酒の節度、借金といった項目が含まれている。調査票に記載させるだけでなく、行政機関側が面接をしたり、第三者に照会したりすることも可能だ。プライバシーの侵害が強く懸念される。

     特に精神疾患歴などは、根拠ない差別につながりかねない。こうした調査内容が本来の目的とは別に、人事考課などに利用されてはならない。適切な運用を改めて求めたい。

     「適性評価」を受けた人のうち9割以上の約9万人が防衛省と防衛装備庁の職員だ。昨年12月の秘密法の施行前、「適性評価」の前身の秘密取扱者適格性確認制度に基づいて防衛秘密を取り扱えた職員は約6万2400人だった。秘密法施行前の防衛秘密は、ほぼそのまま特定秘密に移行した。「適性評価」対象者が増えたのは、平時は秘密を扱わなくても緊急時に扱う人に受けさせたためと防衛省側は説明する。

     秘密を漏らした場合、最高10年の懲役が科せられる。そのため、外務省や警察庁などが特定秘密の取扱者、つまり「適性評価」の対象者を絞り込んだのとは対照的だ。

     たとえば武力攻撃発生時、自衛隊の行動計画に基づき多くの隊員が動員される。こうした計画は特定秘密に当たるとみられる。現場レベルの職員が特定秘密に接するという防衛省の独自性は確かにある。ただし、必要な限度の実施にとどまっているのか省内で改めて見直してほしい。

     「適性評価」は、極めて立ち入った個人情報に踏み込む。家族の情報も収集される。民間人も対象だ。

     本人同意のうえで実施されるとはいえ、組織の中で同意は形式的にならざるを得ない。同意があるとの理由で国家が個人の領域に過度に踏み込んだり、行き過ぎた監視などが実施されたりすることは許されない。

     「適性評価」については、誰が対象になっているかなど、ほとんど情報が公開されていない。だが、国民の懸念を払拭(ふっしょく)するためにも、少なくとも調査した資料の保管状況などについては、情報を明らかにすべきだ。

     昨年12月10日の秘密法施行から間もなく1年だ。行政による恣意(しい)的な秘密指定を防ぐチェック機関の役割が改めて問われる。参院情報監視審査会がこのほど、初めて具体的な特定秘密の開示を省庁側に求め審査した。積極的な審査と国民への情報発信を心がけてもらいたい。

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