人民元、「アジア共通通貨」の一番手に
今夏、北京で会ったある中国人は私に、このように述べた。
「経済問題に疎い習近平主席にとって、人民元の国際化とはすなわち、将来、自分の顔を刷った紙幣が、世界中に流通することに他ならない。いまの人民元の紙幣は、緑色の1元札から赤色の100元札まで、すべて故・毛沢東主席の顔が描かれている。習近平主席は、まずは誰よりも尊敬する毛沢東主席の顔を世界にばらまき、ゆくゆくは自分の顔を世界にばらまきたいのだ」
その時、私は、習近平主席がなぜかくも、人民元の国際化に固執するのかが分かったような気がした。「アジアの皇帝」に君臨しようとしている習近平主席にとって、たとえ世界全体でなくとも、少なくともアジアの民には、将来的に自分の顔を刷った紙幣を使わせたいということだ。
ワシントン時間の11月30日、ついにIMF(国際通貨基金)は理事会を開いて、IMFの準備資産であるSDR(特別引き出し権)の構成通貨を15年ぶりに改定し、来年10月1日より、中国人民元を加えることを決定した。これで人民元は、米ドル、ユーロ、日本円、英ポンドに続いて、5番目の国際通貨となった。
ラガルド専務理事は理事会終了後、会見を開いて次のように述べた。
「今回の人民元をSDRバスケットに含めるという理事会の決定は、中国経済をグローバルな金融システムに統合するための重要な一里塚だ。この決定はまた、中国政府がこれまで中国の通貨と金融システムを改革してきたという進展を、われわれが認識したということだ」
ラガルド専務理事が述べたのはここまでだったが、IMFが発表した来年10月から5年間のSDRの構成比率は、日本に衝撃を与えるものだった。米ドル41.73%、ユーロ30.93%、人民元10.92%、日本円8.33%、英ポンド8.09%---つまり人民元は、SDR入りを果たしたばかりか、日本円を抜いて、一気に将来の「アジア共通通貨」の一番手に躍り出たのである。
加えて、10月1日は中国の国慶節(建国記念日)であり、習近平政権が国威発揚するのにベストの日だ。
5年前の理事会では、中国が議決権を6位(3.65%)から3位(6.07%)に上げたが、日本はなんとかアメリカに次ぐ2位(6.46%)を保った。かつこの決定は、いまだにアメリカ議会が批准していないため、実効されていない。
ところが今回、日本は中国に完敗したのである。5年前と変わったのは、中国経済が日本経済を大きく引き離したことと、IMFトップが親中派のラガルド専務理事に代わったことだ。
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