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 東京電力福島第一原発に一番近いコンビニエンスストアが連日にぎわっている。今も全住民に避難指示が出ている福島県浪江町にある。客のほとんどは放射性物質の除染や原発の廃炉の作業員たち。店員もすべて町外の人たちで、求人に地元からの応募はない。コンビニから町の復興の実情をみた。(編集委員・大月規義)

 福島第一原発から北西約9キロにある「ローソン浪江町役場前店」。11月中旬の朝5時半、店の前を走る国道6号に車の列ができ始めた。作業員たちが、乗用車やバスで原発に向かう。

 午前6時ごろ、開店を待つ人たちが、店の駐車場に車を止め始めた。店は避難指示区域にあるため、営業は午前7時から午後6時の日中に限られる。店の前で10人ほどが列を作っていたため、店員が予定より30分早く店を開けた。午前7時半、約60台止められる広い駐車場は満杯になった。

 店で買った弁当やおにぎりを車内で食べる人。仲間と仕事の打ち合わせをする人……。店の駐車場は、作業の合間に一息つきたい人の休憩場所にもなっている。昼ごろには「環境省」の作業着を着た人や、警察官らの姿もあった。

 町民約2万人が今も避難している。放射線量が比較的低い沿岸部について、2017年春の避難指示解除を目指し、町内では除染や道路の整備を進めている。

 「この辺りはずっと事故の『爪痕』が残っていたが、ようやくがれきも片付いてきたね」。軽ワゴン車で、同僚と除染作業に行く男性(60)はいう。除染経験4年のベテラン。筆記用具を買いに来た。実家は栃木県だが、平日は原発から二十数キロ離れた広野町の宿舎から通っている。

 店は商店や居酒屋が集まる町中心部の一角にある。もともと地元オーナーのフランチャイズ経営だったが、事故でオーナーが避難し休業していた。政府や自治体から営業再開の要請を受け、昨年8月、本社直営店として営業を再開した。

 原発の廃炉・汚染水対策に1日約7千人、避難指示区域内の除染には1万9千人が携わる。飲食や買い物の需要は高いが、福島第一原発の周辺4町に飲食店はほとんどない。

 再開したコンビニも、この店だけだ。平均来客数は半日営業でも1日1200人。ローソンの24時間営業店の全国平均900人弱を大きく上回る。今春、常磐自動車道が全線開通したころから町内の除染作業も盛んになり、来客数が急増した。10月からは営業時間を午後6時までに延ばした。