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就業者の49%「将来、機械や人工知能で代替可能」
12月2日 14時43分

就業者の49%「将来、機械や人工知能で代替可能」
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10年から20年後には、今、日本で働いている人の49%の職業が、機械や人工知能によって代替することが可能だとする分析を民間の調査研究機関がまとめました。技術の進歩によって近い将来なくなる仕事があるのか、関心を集めそうです。
この分析は、野村総合研究所がイギリスのオックスフォード大学の研究者と共同で行ったもので、601種類の職業について、技術の進歩によって将来、機械や人工知能が代替できる確率を計算しました。
職業ごとに必要な知識や技能を数値化したデータを基にコンピューターで分析した結果、10年から20年後には235種類の職業が代替できる確率が高いと分析されました。
具体的には、スーパーの店員や一般事務員、タクシー運転手、ホテル客室係、警備員などとなっていて、これらの仕事をしている人は合わせておよそ2500万人に上り、今、日本で働いている人の49%に当たります。
一方、医師や教師、美容師、それに観光バスガイドなど、人とのコミュニケーションが重要な仕事や、映画監督、音楽家など創造性が特に必要とされる仕事は、機械が代わって行うのは難しいと分析されています。
この分析では社会情勢の変化などは考慮されていませんが、技術が進歩し機械の導入が進むことで、近い将来なくなる仕事があるのか、関心を集めそうです。
野村総合研究所の寺田知太上級研究員は「今後、労働人口が減っていくなか、人手不足をテクノロジーで解決する可能性を示したもので、議論のきっかけにしてほしい。将来は、機械に多くの仕事を任せる一方、人は創造性やコミュニケーションがより求められる仕事を担うようになるのではないか」と話しています。

消えた職業 生まれた職業

これまでも、社会の変化や技術の進歩によって、さまざまな職業が生まれては消えてきました。

かつて日本の経済を支えた炭鉱労働者。昭和15年には14万人を超える人が働いていましたが、エネルギーの主流が石油に代わり、平成14年、北海道釧路市にあった国内最後の炭鉱が閉山し、歴史に幕を下ろしました。
かつて働く女性の花形職業と言われたタイピストも、最近聞かれなくなった仕事の1つです。昭和40年代には速記者を含めて9万人近くが働いていましたが、多くの職場でパソコンなどが使われ始め、タイプライターが姿を消すと、タイピストという仕事もなくなりました。
電話の普及に伴って必要とされた「電話交換手」。かつては手動で電話をつながなければ通話ができませんでした。昭和40年には16万人以上がいましたが、自動交換機が出来たことで、次第に減っていきました。

一方、新しい仕事も出てきています。
国勢調査によりますと、平成22年までの5年間で農業従事者が53万人以上減った一方、医療・福祉施設の介護職員やソフトウェア開発の技術者はいずれも20万人以上増加しました。
さらに、就業者が342万人に上る「分類ができない職業」の中には、これまでにない新しい仕事も数多く含まれています。
こうした数字からは、多くの人々が社会の変化に合わせて新しい仕事に移っていることがうかがえます。

レジは自動化進む

スーパーなどのレジは、すでに機械による自動化が進んでいます。
東京の大手レジメーカーでは、従業員がレジを打つ必要がない「セルフレジ」の販売がここ数年大きく伸びています。今の主力商品は、客が商品をレジにかざしてバーコードを読み取らせるもので、電子マネーでお金の精算もできるため、これまでのレジに比べて平均で1.5倍の早さで会計を済ますことができるということです。コンビニや外国人観光客の多い百貨店などからも問い合わせが相次いでいるということです。この会社、日本NCRの吉次功夫シニアコンサルタントは「最近は人手不足の影響もあって、需要が伸びている。人材確保の観点からも、将来はセルフレジが主流になるのではないか」と話していました。

製造業 「人間型ロボット」が活躍

製造業の現場では、人間並みの作業ができるロボットが活躍しています。
埼玉県にある釣り銭用機械などの工場では、ヒューマノイドと呼ばれる最新鋭の人間型のロボットが19体導入されています。頭と胴体、腕があり、「フランちゃん」「ユーロくん」などと名前もついています。顔の目に当たる部分には高性能のカメラがあり、作業台の位置や部品のある場所を確認し、みずからの判断で工場内を動き回って作業します。これまでは人間でないと難しいとされていた、ゴムなど柔らかいものをつかむこともでき、薄いシールを剥がすといった作業も楽々とこなしていました。このロボット、1体でおよそ740万円しますが、導入後、人間の従業員は別の作業をできるようになり、生産性が上がったということで、この工場では今後も積極的に導入していくことにしています。
グローリー埼玉工場の辻利文工場長は「ロボットの導入で生産性も上がり、コストの削減もできたが、一方で、生産ラインの改善提案などクリエイティブな仕事は人間にしかできないので、人間の仕事がなくなるわけではない」と話していました。

銀行の窓口も人工知能に?

銀行の窓口業務も、将来、機械が行うことができる可能性が高いとされた仕事の1つです。
福島県の地方銀行、東邦銀行のホームページには、人工知能の行員が遺産相続の手続きについて相談を受けるサービスがあります。東日本大震災や原発事故のため県外に避難した客が、わざわざ銀行の窓口に来なくても利用できるよう、去年、導入しました。東邦未来さんという行員に「相続の手続きについて教えてください」などと話しかけると、会話をするように答えを返してくれます。相談者の意図をくみ取って答えを出すほか、「趣味は何ですか」といった個人的な質問にも答えるなど、人間味のあるやり取りができ、多い月には2000件程度の利用があるということです。

専門家「労働者 変化の認識が重要」

労働政策研究・研修機構の松本真作特任研究員は「海外では機械化によって失業者も出ているが、日本の企業ではすぐに人を解雇したりせず、少しずつほかの仕事に移ってもらったり、新しい技術に慣れてもらったりするよう努めてきた」と話し、「今後なくなる仕事が出てきたとしても、日本の場合は比較的ゆっくり進むだろう」と指摘します。一方で、「人工知能やITの導入で、パターン化された仕事や体を使う仕事はどんどん機械化され、頭を使う部分しか人間には残らないと言われている。仕事の内容が高度化して、コミュニケーションの必要性が高まっている」と述べ、「労働者は常に変化を認識することが重要で、機械化の波が来たときに波に乗るよう対処することが求められる」と話しています。
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