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中国の人民元 円を抜き第3の主要通貨に12月1日 2時06分
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IMF=国際通貨基金は11月30日の理事会で、新たに中国の通貨・人民元を世界の主要な通貨に位置づけ、加盟国との間の資金のやり取りなどに活用していくことを決めました。人民元はドル、ユーロに次ぐ、第3の通貨に位置づけられ、第4の通貨となった日本の円を抜き、国際的な通貨システムのなかでも中国の存在感が高まることになります。
IMFは、世界の加盟国が資金不足に陥る非常時などに備え、ドル、ユーロ、イギリスのポンド、日本の円の世界の4つの主要通貨を組み合わせた特殊な資産「SDR」を作り、加盟国の間の資金のやり取りなどに活用しています。
これまではドルを41.9%、ユーロを37.4%、ポンドを11.3%、円を9.4%の配分で組み合わせてきましたが、30日の理事会で来年10月から人民元をはじめて主要通貨に加えることを決めました。
さらにIMFは、新たな組み合わせでドルを41.73%、ユーロを30.93%としたうえで、第3の通貨に人民元を選び10.92%としました。円はそのあとの第4の通貨で8.33%、ポンドが8.09%となりました。
人民元が第3の主要通貨となり、日本の円を上回ることは、中国の巨額な貿易量に加え、国際的な金融取り引きで人民元の使い勝手がよくなってきていることが反映されています。
今後、世界各国が外貨準備として、人民元の保有をより増やす一方、円の存在感は相対的に低下していくことも予想され、G7=先進7か国などの主導のもと維持されてきた、ドルを基軸にした世界の通貨システムのなかでも中国の存在感が高まることになります。
これまではドルを41.9%、ユーロを37.4%、ポンドを11.3%、円を9.4%の配分で組み合わせてきましたが、30日の理事会で来年10月から人民元をはじめて主要通貨に加えることを決めました。
さらにIMFは、新たな組み合わせでドルを41.73%、ユーロを30.93%としたうえで、第3の通貨に人民元を選び10.92%としました。円はそのあとの第4の通貨で8.33%、ポンドが8.09%となりました。
人民元が第3の主要通貨となり、日本の円を上回ることは、中国の巨額な貿易量に加え、国際的な金融取り引きで人民元の使い勝手がよくなってきていることが反映されています。
今後、世界各国が外貨準備として、人民元の保有をより増やす一方、円の存在感は相対的に低下していくことも予想され、G7=先進7か国などの主導のもと維持されてきた、ドルを基軸にした世界の通貨システムのなかでも中国の存在感が高まることになります。
SDRとは
IMF=国際通貨基金の「SDR」は、加盟各国で対外的な支払いに充てる外貨が不足した時に、ドルやユーロ、円などと交換できる特別な資産です。
仕組みがスタートしたのは1969年で、当初SDRの価値は1SDR=1ドルに固定されていましたが、現在は貿易量が大きく金融市場で頻繁に利用されるドル、ユーロ、イギリスのポンド、それに日本の円の4つの主要通貨をもとにSDRの価値が決まる仕組みになっています。SDRの価値は、4つの通貨のレートに応じて日々変動し、11月30日時点では、1SDR=およそ1.37ドルとなっています。
IMFは5年に1度、世界各国の経済の実力に見合う形で主要通貨を見直していて、中国はかねてから人民元をSDRに含めるよう求めてきました。
IMFは、5年前の2010年の見直しで、中国の貿易量はすでに十分な基準を満たしているものの、人民元は世界の金融市場で広く利用されているとはいえないとして採用を見合わせました。
ただ、その後、貿易の決済などで人民元の利用が拡大し、中国も人民元の制度改革を徐々に進めているとして、IMFのラガルド専務理事は、人民元が主要な通貨の仲間入りをするのは「時間の問題だ」という認識を示していました。また、基軸通貨ドルを抱え、世界の通貨システムを主導してきたアメリカも、人民元をドルや円などの自由に取り引きできる通貨と同じ土俵に乗せることで、中国政府に改革の加速を迫ろうとSDRに人民元を加えることを容認する姿勢にかじを切りました。
アメリカのルー財務長官は講演などで、「主要通貨の仲間入りを果たしたいという中国政府の思いは金融市場を開放し、自由な通貨制度への改革を迫る強力なきっかけになる」と述べ、IMFの基準を満たせば主要通貨に加わることを歓迎する意向を示していました。
仕組みがスタートしたのは1969年で、当初SDRの価値は1SDR=1ドルに固定されていましたが、現在は貿易量が大きく金融市場で頻繁に利用されるドル、ユーロ、イギリスのポンド、それに日本の円の4つの主要通貨をもとにSDRの価値が決まる仕組みになっています。SDRの価値は、4つの通貨のレートに応じて日々変動し、11月30日時点では、1SDR=およそ1.37ドルとなっています。
IMFは5年に1度、世界各国の経済の実力に見合う形で主要通貨を見直していて、中国はかねてから人民元をSDRに含めるよう求めてきました。
IMFは、5年前の2010年の見直しで、中国の貿易量はすでに十分な基準を満たしているものの、人民元は世界の金融市場で広く利用されているとはいえないとして採用を見合わせました。
ただ、その後、貿易の決済などで人民元の利用が拡大し、中国も人民元の制度改革を徐々に進めているとして、IMFのラガルド専務理事は、人民元が主要な通貨の仲間入りをするのは「時間の問題だ」という認識を示していました。また、基軸通貨ドルを抱え、世界の通貨システムを主導してきたアメリカも、人民元をドルや円などの自由に取り引きできる通貨と同じ土俵に乗せることで、中国政府に改革の加速を迫ろうとSDRに人民元を加えることを容認する姿勢にかじを切りました。
アメリカのルー財務長官は講演などで、「主要通貨の仲間入りを果たしたいという中国政府の思いは金融市場を開放し、自由な通貨制度への改革を迫る強力なきっかけになる」と述べ、IMFの基準を満たせば主要通貨に加わることを歓迎する意向を示していました。
欧米主導の金融秩序で存在感高める
人民元が世界の主要な通貨に位置づけられたことは、欧米が主導するいまの国際的な金融秩序のなかで、中国の存在感を高めるものだという受け止めが広がっています。
中国は経済の急速な成長にともない、経済の規模に見合うような発言権の拡大をIMFなどに求めてきましたが、中国の影響力の拡大を懸念するアメリカの反対などで思うように実現していません。
このため中国は、発展途上国の意見がより反映される国際的な金融機関として、アジアの途上国のインフラ整備を支援する、AIIB=アジアインフラ投資銀行の設立を提唱しました。その結果、アジアだけでなく中国との経済的な関係を強めたいヨーロッパ各国なども参加を表明し、合わせて57か国が創設メンバーに加わり、国際的な開発金融の枠組みに風穴を開ける形となりました。
それに続いて、今回、人民元が新興国の通貨として初めて欧米主導のIMFで主要な通貨に加わったことは、中国の存在感を一段と高めるものだという見方が広がっています。
また、人民元は世界の主要な通貨に加わったことで、今後、需要が実際に増えることも予想されます。現在、世界中で保有されている外貨準備のうち、人民元の割合はおよそ1%にとどまっていますが、世界の主要な通貨としていわばお墨付きを得たことで通貨の信用が高まるとして、この割合が最大で4%まで増え、日本円で40兆円相当の人民元の需要が新たに生まれるという試算もあります。
中国は経済の急速な成長にともない、経済の規模に見合うような発言権の拡大をIMFなどに求めてきましたが、中国の影響力の拡大を懸念するアメリカの反対などで思うように実現していません。
このため中国は、発展途上国の意見がより反映される国際的な金融機関として、アジアの途上国のインフラ整備を支援する、AIIB=アジアインフラ投資銀行の設立を提唱しました。その結果、アジアだけでなく中国との経済的な関係を強めたいヨーロッパ各国なども参加を表明し、合わせて57か国が創設メンバーに加わり、国際的な開発金融の枠組みに風穴を開ける形となりました。
それに続いて、今回、人民元が新興国の通貨として初めて欧米主導のIMFで主要な通貨に加わったことは、中国の存在感を一段と高めるものだという見方が広がっています。
また、人民元は世界の主要な通貨に加わったことで、今後、需要が実際に増えることも予想されます。現在、世界中で保有されている外貨準備のうち、人民元の割合はおよそ1%にとどまっていますが、世界の主要な通貨としていわばお墨付きを得たことで通貨の信用が高まるとして、この割合が最大で4%まで増え、日本円で40兆円相当の人民元の需要が新たに生まれるという試算もあります。
さらなる規制緩和が課題に
中国は人民元が世界の主要な通貨に加えられるよう金融の自由化を進めてきましたが、アメリカのドルや、円など、先進国の主要な通貨と比べるとまだ多くの規制が残っています。
中国政府は人民元について、1日当たりの為替レートの変動幅について、今の上下2%にまで段階的に拡大してきたほか、国境を越えたお金のやり取りのうち、貿易での決済については、中国全土でどの企業でも人民元でできるように規制を緩和しました。
また、人民元の金利について、中国政府はこれまで国内の銀行業を保護するために、預金と貸し出しの金利の上限と下限を規制してきましたが、貸し出し金利はおととし、預金金利もことし10月にそれぞれ規制を撤廃し、形のうえでは銀行が自由に金利をつけることができるようになりました。
その一方で、中国では今も、投機的な取り引きを制限するため、お金を自由に海外から持ち込んだり、海外に持ち出したりすることができません。
個人の場合、人民元と外貨の両替は原則として、年間5万ドルまでと決められています。企業の場合も、モノやサービスの貿易や中国国内で稼いだ利益といった裏付けがある場合を除いて、原則として人民元と外貨の両替や国境を越えた送金は認められていません。
このため、中国に直接投資を行う場合には、そのつど必要な資金の計画を当局に提出し、許可を受ける必要があり、外国の投資家が中国の市場で人民元建ての株式や債券に投資する場合も、当局が認めた機関投資家や証券取引所を通じ、一定の金額の枠内に限られています。
一方、人民元の為替レートでも取り引きの目安となる「基準値」と呼ばれる、中国独自の仕組みが設けられています。ことし8月に中国は基準値の決め方を市場の実勢をより反映するように改めたと発表しましたが、市場関係者の間では中国政府が市場介入を通じて事実上、操作しているという指摘もあります。
人民元が世界の主要な通貨に位置づけられても、企業や投資家の間では人民元の使い勝手が悪いという指摘が依然として根強く、人民元の国際化を目指す中国政府としては、今後もさらに規制を緩和していけるかが課題となります。
中国政府は人民元について、1日当たりの為替レートの変動幅について、今の上下2%にまで段階的に拡大してきたほか、国境を越えたお金のやり取りのうち、貿易での決済については、中国全土でどの企業でも人民元でできるように規制を緩和しました。
また、人民元の金利について、中国政府はこれまで国内の銀行業を保護するために、預金と貸し出しの金利の上限と下限を規制してきましたが、貸し出し金利はおととし、預金金利もことし10月にそれぞれ規制を撤廃し、形のうえでは銀行が自由に金利をつけることができるようになりました。
その一方で、中国では今も、投機的な取り引きを制限するため、お金を自由に海外から持ち込んだり、海外に持ち出したりすることができません。
個人の場合、人民元と外貨の両替は原則として、年間5万ドルまでと決められています。企業の場合も、モノやサービスの貿易や中国国内で稼いだ利益といった裏付けがある場合を除いて、原則として人民元と外貨の両替や国境を越えた送金は認められていません。
このため、中国に直接投資を行う場合には、そのつど必要な資金の計画を当局に提出し、許可を受ける必要があり、外国の投資家が中国の市場で人民元建ての株式や債券に投資する場合も、当局が認めた機関投資家や証券取引所を通じ、一定の金額の枠内に限られています。
一方、人民元の為替レートでも取り引きの目安となる「基準値」と呼ばれる、中国独自の仕組みが設けられています。ことし8月に中国は基準値の決め方を市場の実勢をより反映するように改めたと発表しましたが、市場関係者の間では中国政府が市場介入を通じて事実上、操作しているという指摘もあります。
人民元が世界の主要な通貨に位置づけられても、企業や投資家の間では人民元の使い勝手が悪いという指摘が依然として根強く、人民元の国際化を目指す中国政府としては、今後もさらに規制を緩和していけるかが課題となります。
“円の存在感が低下”との指摘も
日本政府は、人民元が主要通貨に入ることは象徴的な意味はあるものの、国際的な金融取引で直接的な変化はないとみています。
ただ今後、各国の外貨準備に加えられたり、国際取引での使用量が増えたりするなど、人民元の存在感は徐々に増すことが予想され、円の存在感の低下は避けられないという指摘も出ています。
世界で貿易や投資のための資金決済に使われる通貨のうち、円の割合は2012年1月には2.48%で、ヨーロッパの単一通貨ユーロ、アメリカのドル、イギリスのポンドに次ぐ4位で、0.25%で20位だった中国に大きく差をつけ、その後も4位を維持していました。
しかし、ことし8月には円の割合が2.76%だったのに対し、人民元が2.79%となり、円は人民元に初めて抜かれ一時、5位に転落しました。
円の存在感を高める取り組みは、1980年代から2000年代初めにかけて「円の国際化」として積極的に議論され、海外から日本に投資する際に事前の届け出をなくすなど、円の使い勝手をよくする環境整備が進められました。
しかし、日本経済の停滞などによって政府・日銀のねらいどおりには進んでいないという指摘もあります。
日本としては今後、中国に対して日本の投資家による中国国内での人民元建て取り引きや、人民元の決済ができる銀行の日本国内での設置などを求めて、人民元の勢いを取り込む一方で、金融市場で遅れを取らないよう円の使い勝手を一層よくすることが引き続き課題となります。
ただ今後、各国の外貨準備に加えられたり、国際取引での使用量が増えたりするなど、人民元の存在感は徐々に増すことが予想され、円の存在感の低下は避けられないという指摘も出ています。
世界で貿易や投資のための資金決済に使われる通貨のうち、円の割合は2012年1月には2.48%で、ヨーロッパの単一通貨ユーロ、アメリカのドル、イギリスのポンドに次ぐ4位で、0.25%で20位だった中国に大きく差をつけ、その後も4位を維持していました。
しかし、ことし8月には円の割合が2.76%だったのに対し、人民元が2.79%となり、円は人民元に初めて抜かれ一時、5位に転落しました。
円の存在感を高める取り組みは、1980年代から2000年代初めにかけて「円の国際化」として積極的に議論され、海外から日本に投資する際に事前の届け出をなくすなど、円の使い勝手をよくする環境整備が進められました。
しかし、日本経済の停滞などによって政府・日銀のねらいどおりには進んでいないという指摘もあります。
日本としては今後、中国に対して日本の投資家による中国国内での人民元建て取り引きや、人民元の決済ができる銀行の日本国内での設置などを求めて、人民元の勢いを取り込む一方で、金融市場で遅れを取らないよう円の使い勝手を一層よくすることが引き続き課題となります。