エピソード1 入社したときの同期のお話
入社したとき、同期の一人が工場に配属になりました。
所属は事務部経理課給与係で、工場に勤務する人たちの給与計算をし、支払うという仕事です。
ある程度、電算機化されていたとはいえ、まだまだ、人力で処理することが多く、給与の仕事だけをやる人が、彼を含め3名いました。
「え?給料の事務をするだけの人が3人もいるの?」
驚いて訊ねたら、
「仕事の波はあるけど、結構、大変なんだぞ」
との答え。
手当ての計算、税金等の計算、天引きの処理等々、中でも一番大変なのは、給料の支払い準備だったそうです。
その工場は、社内でもベスト5に入る大規模工場で、従業員が1000名を越えていましたが、各々の社員に対して「現金」で給与を支払っていたのです。
今だと、ちょっと考えられないのですが、どうやら、工場内の労働組合が、銀行振り込みに反対していたらしく、現金手渡しが継続していたそうです。
仮に一人当たりの支給額が30万円だとして、1000人分、およそ3億円のお金を、1万円札から1円玉まで、1円たりとも間違えずに袋詰めする作業です。
これは大変ですね。3人いても、キツイというのが理解できます。
余談ですが、「給与明細書を書き換えてくれ」と言ってくる人がたくさんいたそうです。
家には、少なめに書かれた明細書を持ち帰り、差額を自分の小遣いにするんだそうで(笑)。
さすがに、そこまでは面倒をみなかったそうですが・・・、ま、おおらかな時代ですね。
当時、このような給与事務を行う事業所は、およそ100箇所程度あったと記憶しています。
各々、仮に3名づつ配置されていたとして、300人が給与事務の専担者として雇用されていた計算になります。
今は完全電算機化のうえ全社1箇所に集約されていて、担当者は、数名程度しかいません。
給与事務だけを見ても、社員数が激減しているのがわかります。
エピソード2 昭和から平成
昭和の時代、私が勤めている会社では、たくさんの人が働いていました。
それが平成になって、ドンドンと減っていき、今は最大時の1/4程度しかいません。
斜陽産業であり、事業規模も大幅に縮小していますが、それ以上の割合で社員数が減っているのです。
他の会社で働く人に聞くと、皆、口を揃えて、「社員数は減った」と答えます。
分社化や持ち株会社化、海外移転、それに団塊の世代のリタイアみたいな要因はあるにせよ、社員数が減っている最大の理由は、効率化のために、
「人間がやっていた仕事を機械がやるようになった」
この1点に尽きると思います。
人がやっていた仕事は「機械化」していき、やがて「自動化」となり、今は「制御化(下)」されています。
例えば、大規模倉庫の中での商品管理。
最初は人が人力で持ち込み、棚に整理し、そこから手作業で選別・仕分けしていたのが、フォークリフトの導入からはじまって、ベルトコンベヤー、ピッキングマシンによる自動化がすすんでいます。
そう遠くない未来、ユーザー(消費者)のネット注文が、倉庫内に待機しているドローンへの直接指図になり、そのまま自宅配送してくれるといった完全制御化された時代がくるかもしれません。
SF映画で見た世界が実現しそうです。
エピソード3 社労士さんのお話し
友人に社会保険労務士をやっている人がいます。
彼から、労務管理の現場で実際に起きている「エグイ話」を聞かされます。
が、この話は別の機会にするとして・・・。
今年の社労士試験の合格率、なんと2.6%です。
通常でも10%弱と、大変な難関ではありますが、今年は群を抜いて低い、史上最低の合格率でした。
年に一度の試験、一生懸命に勉強しても100人に3人受からない、これじゃあとても受ける気にならないですよね?
社労士の友人に、「なんでこんなに低いの?」って訊ねたら、
「マイナンバーが導入されたから。つまり、国というか厚労省は、もう社労士を増やさないということなんでしょう」
との答え。
要は、これまで社労士が担っていた仕事が、マイナンバーによって減る、ということだそうです。具体的な内容までは聞きませんでしたが・・・。
「じゃあ、どうすんの?」の質問には、「仕事の付加価値を高めて、営業力を強化するしかないね。もう準備は始めているけど」とのこと。
エピソード4 制御化の時代
これから、ますます人的労働力に対する需要は減っていくのでしょう。
そんな中、人に求められるのは、2つに大別されると思います。
ひとつは、機械にはできない付加価値を創造すること。
もうひとつは、機械でも出来るけど設備投資するくらいなら、人にやらせたほうが安上がりなこと。
今はまだ、付加価値はないけれども機械化できていない仕事が多々あると思います。
が、やがて、機械化されていくのでしょう。
そういう時代、ますます二極化が進んでいくのかもしれませんね。