2015年11月28日、松崎いたる板橋区議主催の、
「板橋区ホタル生態環境館」問題 報告学習会
に参加しました。
会場限定っぽい話もいくつか出たので、そちらは詳しくは書きませんが、訴訟資料を読む上でポイントとなりそうな点をいくつかまとめます。
1.阿部vs板橋区の紛争について
阿部氏は、2014年3月に懲戒免職になっており、そのことについて板橋区と係争中である。この時の懲戒免職の理由は、業者への便宜供与、他自治体との無許可契約などが理由であり、ホタルの飼育偽装が原因ではない、ということである。
免職の理由がホタルの飼育そのものではない以上、阿部vs板橋区の紛争で出された訴訟資料では、ホタル飼育の事実関係は重要視されないことが予想される。従って、飼育偽装について区側の代理人がスルーしたとしても、そのことをもって、ただちに飼育偽装が無かった、ということの裏付けにはならない。飼育実態については、本件訴訟での証拠提出を通して主張していく必要がある。
民事訴訟における攻撃防御の中での立証は、科学の立証とは異なる。原告と被告双方が同じ主張をした場合、客観的に科学として間違っていても、裁判所の判断の前提となる。これは別に裁判所が間違った科学にお墨付きを与えたわけでもなんでもない。法的紛争を解決する機能を持たされた裁判所としては、原告被告で争いが無い事実は判断の前提にしなければならないことになっているだけである。
したがって、区側の代理人が、訴訟とは直接の関係のないホタルの飼育実態について争わなかったとしても、それは単なる訴訟手続上の問題に過ぎず、「自然科学としての」実態については別途検討する必要がある。
2,板橋区資源環境部環境課の報告書について
普通に読んでも、阿部氏の主張よりは信憑性が高いと考えられる。
福島由来のホタルを累代飼育したという主張は、DNA検査によって、東北地方のホタルが存在せず、西日本のホタルばかり見つかったということでホタルが福島由来だという主張は既に覆っていると考えるべき。
3.乙2号証の報告書に登場する伝票の「むし企画」という会社はウナギを扱っている会社で、ホタルを飼育している会社ではないとのこと。会社を見に行ったが、ホタルを飼育できそうな設備は存在していなかったという報告があった。
大学に居る人間として気になった点は、学位論文審査についてである。
経歴から見ても、その後の主張(ナノ銀除染を言いだしたこととそれに関連するデモンストレーション)を見ても、阿部氏には、科学の基礎的な知識や素養は無いと判断するしかない。板橋区の調査でホタルの累代飼育が行われていなかったということになると、累代飼育が可能になったという前提で書かれた博士論文の一部が捏造ということになる。また、阿部氏の英語論文はproceedingsが1つあるだけで、他に投稿論文もない。茨城大学としてはこちらの方が問題ではないか。社会人特別枠の審査が甘すぎたということではないのか。一体どういう基準で審査を行ったのだろうか。