(店員)どうぞ。
こちら日田の響鮎を使いました菊花あんでございます。
(女性)まあうれしい。
東京銀座のとあるレストラン。
予約が取れない時もあるこの店で提供される料理にはレシピに秘密があります。
(女性)上品なお味。
ねえ。
すんなりずーっと入っていくっていう感じがする。
その秘密はなんと醤油。
しかも魚の鮎から作った鮎魚醤なんです。
このちょっとユニークな調味料が今ジャンルを問わず料理界で注目を集めています。
鮎魚醤を生み出したのは大分県日田市の老舗の蔵元。
『日本のチカラ』。
今週は世界の料理人が認めた日本伝統の食文化お醤油の物語です。
大分県西部に位置する日田市。
中央を清流三隈川が流れ水郷とも称される水の町です。
日田は江戸時代より幕府直轄の天領として繁栄を遂げました。
今も歴史情緒あふれる町並みが残り観光地としても知られています。
風情ある屋形船。
かがり火に照らされた中繰り広げられる伝統漁法の鵜飼。
昔と変わらぬ美しい日本の風景が広がります。
観光客に人気の通りに店を構えるまるはら。
創業は明治32年。
従業員22人の小さな老舗の醤油蔵です。
社長は4代目の原正幸さん。
先代の父親が亡くなり原さんは32歳で116年の歴史を持つ醤油蔵を継ぎました。
そういう評判でしたね。
本格的に家業を手伝ってこなかった原さんは社長になってから2年間必死に醤油作りと経営を学びました。
もともと努力家でアイデアマンでもある原さん。
周囲にはどう映っているのでしょうか?行動的ですね。
まず実行力っていうか思い付いたらやってみるっていう事も多々ありますので。
新しい商品とかも作っていただいて僕たちもやっぱり仕事のやりがいがあります。
職場ではささいな事でも若い従業員と原さんが意見を交わす光景がよく見られます。
こうした自由な社風が老舗の伝統を守り続けているのです。
あっ…。
(原さん)大丈夫よハハハ…。
昔から使ってくれているお客さんとかが結構いますね。
戦前とかですね。
はい。
だから非常に接しやすいというか仕事がやりやすい。
ユニークな商品開発で知られるまるはら。
それを象徴するのが創業当時から続くラムネ。
赤やオレンジなど色鮮やかなその名も虹色ラムネです。
(原さん)炎天下に太陽の下に置いたらですね1週間で色が消えてしまうんですね。
色が消えるからまあ虹色ラムネっていう事で名前を付けたんですね。
他にもペースト状の柚子ぽん酢に南国フルーツを使ったドレッシングなど次々と開発。
作ったきっかけはどれもお客さんや地元の人からのリクエストに応えた事と振り返ります。
アイデアマンで何事にも真剣に取り組む原さんのもとには地域の人たちからいろいろな相談が持ちかけられます。
その結果生み出されたのが鮎を使った醤油鮎魚醤です。
日田市の清流三隈川では鮎漁が盛んです。
山あいから流れ出る栄養をふんだんに含んだ水が質のよい鮎を育むのです。
夏場からは昔ながらのやな場が設置されとれたばかりの鮎の料理を楽しめます。
(男性)おいしくおいしく…。
めっちゃおいしい!日田市の代表的な名物鮎ですが関係者には悩みがありました。
この養殖場では出荷に当たって形や大きさなどの基準がありどうしても大量の規格外が出てしまうのです。
出荷出来ない鮎を活用してほしい。
地元業者の願いが鮎魚醤開発のきっかけとなりました。
私のところのタイのナンプラーやベトナムのニョクマムなど魚を材料にした醤油魚醤。
濃厚なうまみが特徴ですが独特の香りが苦手だという人も少なくありません。
鮎で醤油を作っても売れないのではと原さんは当初考えていました。
臭みのない魚醤は作れないか?原さんは食品開発も手がける大分県の研究機関に協力を依頼しました。
試しに作ってくださいっていう事ででサンプルをお預かりしてでまあ半年ぐらいかけて試しに作ってみてなめたらビックリするほどおいしくてですね。
ちょっと臭いにおいになるような成分があまり入ってないっていうのがすごい特徴だと思います。
(原さん)あれにはビックリしたですね。
これやったら面白いなという事でじゃあやってみようかという…。
まあ思ったんでしたね。
研究員の山本さんは魚醤特有の香りを抑えられた要因を川に生息する鮎だからと推測します。
塩分を含む海水と違って淡水で育った鮎を塩漬けすると体内の微生物の活動が抑えられ臭みがなくなるという事です。
新しい魚醤作りは地道で厳しいものでした。
それでも目標を達成するため原さんは山本さんと力を合わせ4年間の研究の末ついに鮎魚醤が誕生しました。
従来の魚醤とまるはらの鮎魚醤はどう違うのか?科学的に検証すると独特の臭みの元となる成分に歴然とした差がある事が判明しました。
臭み成分というものはイソ吉草酸やプロピオン酸や乳酸というそういうような有機酸が考えられます。
ここに示しますようにナンプラーはそのような成分が豊富に含まれているんですけれども。
(清水さん)それを抑えて…。
この分析データから私たちは感じております。
鮎魚醤は製造工程にも工夫が施されています。
一般の魚醤は常温の魚を使用しますがまるはらでは冷凍した鮎を使います。
なるべく新鮮な状態を保つためです。
仕込みのポイントは徹底した温度管理にあります。
一般の魚醤では1年かかる発酵をなんと半年で可能に。
発酵したあと漉していくのですがここで力を発揮するのがこの設備。
従来のものと比べ10倍の速さで搾り出す事が出来ます。
醤油が空気と触れる時間を極力短くする事で品質のよい状態で瓶詰めが出来ます。
こうして鮎と塩だけで出来た鮎魚醤の完成です。
この鮎魚醤うまみを引き立たせる役割を果たします。
醤油をかけた卵かけごはんにひと振り。
試食した人は…。
コクが…コクが増しましたね。
うん…あっ本当だ。
深みが出るというか鮎の香りがやっぱり漂ってくるので。
卵の味も生きてきますね。
素材の味を引き出し料理に深みを増す。
鮎魚醤の評判は徐々に全国に広がります。
もともとの目的だった規格外の鮎の活用では賄えなくなり現在では商品価値のある鮎も使って生産しています。
原さんは昼休みには必ず自宅に戻り妻嘉子さんの手料理を食べます。
結婚して37年。
夫の性格は知り尽くしているものの嘉子さん醤油作りに打ち込む原さんに言いたい事もあるようです。
(嘉子さん)大体事務所にいて…。
(原さん)大体…。
夜も1時間ぐらいはね仕事してるから最低ね。
(2人の笑い声)好奇心旺盛な原さん。
その性格は昔から変わらず大学卒業後はおよそ1年半かけて52カ国を渡り歩いたそうです。
若い頃海外を放浪した経験それが今では財産となっています。
(原さん)アフリカとか行ったらねもう言葉通じないからねまるで。
もう身振り手振りでするし。
だからまあ…最後はどうにかなるからね。
不思議なもんでね。
4代続く小さな醤油蔵。
過去には苦しい時もあったそうです。
もろみの重さだけでポタポタと垂れてきたものを取ります。
これが一番搾りというものになります。
次に2日目はですねこちらの…。
地元の観光振興にもひと役買うようになった醤油蔵の工場見学。
しかしこの施設が原因で一時経営難に陥ったという事です。
もう本当にその時はやっぱり…。
廃業も覚悟した原さんでしたが持ち前の根性と地道な努力で2億円以上あった借金を10年で完済しました。
東京銀座にある高級イタリアンレストラン。
『ミシュラン』の一つ星を獲得しているこの店でも厨房をのぞくとまるはらの鮎魚醤が活躍しています。
本当
(原田さん)調味料として。
オーナーシェフの原田さんは鮎魚醤の商品化を心待ちにしていた1人。
試作段階であるだけ買いたいと申し出た事も。
その魅力とは?
(原田さん)香りと味ですね。
間違いなく。
少し一歩引いて下からその素材を持ち上げてくれるみたいなそういうイメージなので。
これが素材の味を引き出す鮎魚醤。
その実力はイタリアン以外でも発揮されます。
フランス料理界の権威日本エスコフィエ協会。
副会長を務める堀田大さんもまるはらの鮎魚醤を絶賛。
普段から持ち歩くほどの愛好家です。
出てくる料理をまず食べて。
それでそれを1滴入れるわけ。
もう全然また違ってくるわけね。
焼きそばもいい…スパゲティもいいね。
コンソメスープにも合うしね。
揚げたコロッケにかけてもおいしいし。
醤油くさくならないわけ。
非常に…。
もう本当にね…。
東京銀座にある大分県のアンテナショップ。
ここでも鮎魚醤は好評との事。
昼間ランチイベントしたんですけどね終わってからご婦人方がねえごっそり買われるんですよ。
自分で食べてみて味わってみて1回使ってみましょうか。
で使ったお客様がまたこれはいいわという事でリピーターになるという展開ですよね。
ヒット商品だと思います。
海外での販路を広げるためこの日原さんは日本貿易振興機構ジェトロと打ち合わせ。
海外戦略の専門家と話し合い現地の見本市でどうやってPRするかアイデアを練ります。
素人でやってるのでなかなか苦労してですね…。
展示会も商談会も出会いの場でしかないのでもういきなり何百万とか売り上げが上がるわけではやはりないので。
しつこくバイヤーにもメールしてつかんでいく。
それこそフォローしていく事が非常に重要ですね。
若い頃と変わらず行動派の原さんはニューヨークや中国フランスと積極的に海外を回り現地の料理人たちと会って鮎魚醤の魅力を熱く語りました。
その結果今では鮎魚醤は世界の三つ星レストランでも愛用されるまでに至ったのです。
うれしいですよね。
小さな田舎のね醤油屋さんがまさかパリとかねニューヨークとかで使われてるなんてね。
それもその世界ランク100位に入ってるねそういうレストランに使ってもらえるなんて考えもしなかったですからね。
2013年には鮎魚醤のノウハウを生かし大分県の地鶏を使った醤油肉醤も完成させた原さん。
更に2016年の商品化に向け鮎魚醤をベースにしたある醤油作りにチャレンジしています。
ついに新しい商品出汁醤油が完成。
特別な場所で本格的なお披露目をする事に。
2015年5月から半年にわたりイタリアミラノで開かれた国際博覧会。
およそ150の国が参加し伝統や文化の情報を発信しました。
日本のブースの一角にある大分コーナーに原さんの姿が。
ウッドユーテイストアシイタケダシ?イチ押しはイタリアンにも相性のよい鮎魚醤のはずだったのですが…。
イタリアは魚醤が…あと肉醤ですね原材料が20パーセント以上はダメなんですよ。
うちは魚醤を売り込みにきたんだけどもうバツ。
イタリアでは食品の厳しい輸入規制があり魚肉成分の多い鮎魚醤は販売が禁止されました。
そこで原さんは急遽方針を転換。
鮎魚醤をブレンドしたあの出汁醤油をPRします。
(原さん)そっちがカツオですね。
カツオですか?これは。
(原さん)カツオもあります。
これの方がおいしい。
(原さん)おいしいでしょ。
現地の人たちの評判は上々。
手応えを感じた原さんはイタリアでも販売を目指します。
20パーセント以下オーケーですから…。
博覧会の会場を出た原さん。
ホテルで休む間もなくある場所へ向かいます。
自分のとこでまあそこまでなくても…。
イタリアではどのような調味料が使われているのか?料理人が求めているものは何か?現地でしか知り得ない情報をつかむため一流レストランを回りました。
(2人)ボナセーラ。
訪れたのはミラノ郊外の老舗レストラン。
この店には事前に鮎魚醤を届けていました。
シェフの評価は?よかったらこれで今日作ってください。
お願いします。
グラッツェ。
グラッツェ。
味見を済ませその実力を認めていたシェフ。
なんと原さんに隠し味に鮎魚醤を使った料理を振る舞ってくれました。
イタリアンの本場のシェフに認められ原さんも熱い思いが込み上げてきました。
イタリアの現状っていうのをですねつかみましたから。
なんでも実際現場に行かないとですねはっきりしませんからね。
まあそういう面においていい面と悪い面両方見つかったからですね。
結局原さんはイタリアに13日間滞在し三つ星レストラン4軒を含む13軒の店を訪れ精力的に商談を行いました。
海外で確かな手応えをつかんだ原さん。
次なる一手とは?和食にフレンチイタリアンとジャンルを問わず活用される鮎魚醤。
原さんは家庭でも気軽に使ってもらいたいと専門家とレシピの研究に取り組んでいます。
魚醤と出汁醤油と…。
ずっとですね最初から何に使ったらいいかっていつも言われてました。
もう本当2年目ぐらいからですね十何年間言われっぱなしでですね。
いつものようにいつもの材料を使ってそれが何割もおいしく仕上がるっていうのがこの調味料だと思いますので。
ちょっとイメージと違うこんなものにも使えるんだっていうのがご紹介出来ればいいなと思っています。
ふるさとの清流で育まれた鮎で作る醤油が国内外の料理界で評価を得た原さん。
これからの目標は?鮎魚醤がうまくいってればね当然引き継ぐ人が出てきますからね。
事業が継続していけばですねまあ歴史が続いていくわけですから。
まあとにかく絶やしたくないというのだけはありますね。
世界の料理人が認めたひと振り。
伝統を守りつつ進化を追い求める原さんのチャレンジにこれからも私たちは驚かされるでしょう。
『日本のチカラ』次回は富山県。
地元産業を盛り上げるチーズ職人半農半芸歌手に密着します。
2015/12/06(日) 06:00〜06:30
ABCテレビ1
日本のチカラ[字]
大分県でうまれた、魔法の調味料をご存じですか?卵かけご飯からイタリア料理まで、料理のコクと旨味を引き出す「鮎魚醤」!世界の料理人も認めた、人気の味をご紹介!
詳細情報
◇番組内容
“水郷”と称されるほど、美しい清流と自然豊かな大分県日田市。歴史情緒漂う街で、明治15年に創業した老舗醤油蔵元が舞台。社長のユニークな商品企画・開発が、数年前から注目を集めています。その一つが、地元の特産品“鮎”を使った「魚醤」!見本市の出展などで鮎魚醤は徐々に話題を呼び、東京の高級レストランなどからも注文が相次ぎました。さらに販路拡大とともに、フランスの三ツ星レストランとも契約。
◇番組内容2
どんな料理にもマッチする実力を、海外のシェフも高く評価しています。全国的にみても珍しい川魚の魚醤は、地元の養殖業者から規格外の鮎の活用法について相談を受けたのが誕生のきっかけ。県と共同で研究に取り組み、試行錯誤の結果、4年間かけて完成。こだわったのは、醤油で最も大事な味と香り。4か月間寝かせて濾過した魚醤は、独特の臭みがなく旨味が強いのが特徴です。
常に世界を見据えた老舗醸造蔵の挑戦を追います。
◇番組内容3
全国各地の「魅力あふれる産業」を通して、地域の歴史や文化・人々の英知や営みを学び、日本の技術力・地方創生への道・温かいコミュニティー、生きるヒントを描き出す、教育ドキュメンタリー番組。
◇ナレーション
久長美奈子(大分放送アナウンサー)
◇音楽
高嶋ちさ子「ブライト・フューチャー」
◇制作
企画:民間放送教育協会
制作著作:大分放送
協力:文部科学省/中小企業基盤整備機構
◇おしらせ
☆番組HP
http://www.minkyo.or.jp/
この番組は、朝日放送の『青少年に見てもらいたい番組』に指定されています。
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – ドキュメンタリー全般
趣味/教育 – 生涯教育・資格
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
OriginalNetworkID:32723(0x7FD3)
TransportStreamID:32723(0x7FD3)
ServiceID:2072(0x0818)
EventID:45073(0xB011)