水木しげるさんを偲(しの)んで 連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」総集編 第1回 2015.12.05


♪〜
(松下)皆さんおはようございます。
「ゲゲゲの女房」ヒロイン村井布美枝役の松下奈緒です。
今日はここ深大寺に来ています。
懐かしいですね〜。
紅葉もきれいですし。
さて今日から「ゲゲゲの女房」の総集編をお送りします。
そして番組の中では原案の武良布枝さんにお会いしまして「ゲゲゲの女房」を振り返りたいと思います。
それでは総集編お楽しみください。
どうぞ!
(登志)
安来は島根県の東の端にある歴史ある町です。
中海に面した港から6キロほど内陸に入った所に布美枝のふるさと大塚の町があります。
このころの我が家は先代から続く呉服店を営んでいました。
父と母娘が3人息子が2人そして祖母の私。
飯田家は総勢8人の大家族です
昭和14年布美枝が7歳の時から物語を始めることといたしましょう。
それは布美枝が初めて1人で大塚の町を出たその帰り道のことでした
(布美枝)誰かおるかね〜?何かおる…。

(足音)いや〜!いや!
(少年)うわっ!何だ?どげした?何かおる。
えっ?後ろから追ってくるよ。
ははん。
お前「べとべとさん」につけられちょ〜な?「べとべとさん」?あのね今日「べとべとさん」に会ったよ。
(登志)「べとべとさん」?草履の音が後ろからついてきた。
でも振り向いても誰もおらん。
ほ〜う!それでお前はどげした?「『べとべとさん』先へお越し」って言ったら何だいせんで先に行ってくれた。
へえ〜そげなまじないよう知っとったな。
怖かったろ?うんけどちょっこし面白かった。
面白かった?おばばの話と一緒だね。
大蛇や狐やお化けの話は怖いけど面白いもん。
早く続きが聞きたくなる。
フフフ!怖いもんは面白いか…。
うちにもおるかもしれんよ。
「あずきはかり」。
(登志)「あずきはかり」?見えんけどおる。
見えんけどおる。
布美枝はよう分かっちょ〜わ。
・「『ありがとう』って伝えたくて」・「まぶしい朝に苦笑いしてさ」・「あなたが窓を開ける」・「舞い込んだ未来が始まりを教えて」・「いま輝いているんだ」・「『ありがとう』って伝えたくて」・「あなたを見つめるけど」・「繋がれた右手が」・「まっすぐな想いを」・「不器用に伝えている」・「いつまでもただいつまでも」・「あなたと笑っていたいから」・「信じたこの道を」・「確かめていくように」・「今ゆっくりと歩いていこう」
終戦後源兵衛は酒の小売り免許を取り酒屋を始めていました
布美枝〜酒が届いとるぞ〜!は〜い!何をもたもたしちょ〜だ!ごめん大福作っとって手が離せんで。
(貴司)姉ちゃんどげした?その顔。
ん?何かついちょ〜?
(2人)ああ!余計ひどくなった。
ああ…フフッ!白塗りのお化けだ!
昭和28年布美枝は21歳になっていました
(チヨ子)えっ!?結婚す〜かね!
(松代)し〜っ!チヨちゃん声が大きいわ。
この前「お見合いした」言っちょった人かね?
(節子)うちにもええ話持ってきてくれんかなあ。
節ちゃんはいっぺんお見合いしちょ〜が。
次はまだ一度も経験のない私とフミちゃんの番だが。
なあフミちゃん。
私はまだ先でええわ。
え〜っ!何でだね?フミちゃん奥手だけん。
そげじゃなくて。
うちには小さい妹がおるし酒屋も人手がいるし私がおらんと。
(松代)そげなこと言っちょったらすぐおばさんになるよ!婚期を逃して売れ残〜よ!いかず後家だわ!もう!嫌なこと言わんで!本当になったら困〜わ!ただいま!うむ。
ねえ今ちょっこしええ?相談があるんだけど。
おう。
今日洋裁学校の先生から助手の仕事頼まれて…。
(源兵衛)縁談が来とる。
えっ?見合いの話進めるぞ。
見合いって誰の?お前のほかに誰がおる。
えっ私の!?
突然やって来た初めての見合い話に奥手の布美枝も胸の高鳴りを覚えたのです
いつもどうもだんだん!フミちゃん。
は〜い!フミちゃんってば。
はい。
(チヨ子)フミちゃんってば!えっ?
ところが…
布美枝にはまだ言わんでね。
折を見て私から話をするけん。
本当にすんません。
おいミヤコ!この着物片づけてしまえ。
見合い用の着物を残り物の反物で縫ったのがいけんかったのかもしれん。
布美枝には先方には決まった相手がおったと言うんだぞ。
断られた本当の訳は言ったらいけんぞ。
布美枝がくよくよするけんな。
背が高くて断られたとは言うなよ!おいミヤコ!ミヤコ!
(ミヤコ)はい!何ですか?はっ!お前帰っとったんか?これお前にあげるわ。
嫁入り道具に持っていくとええ。
何言っちょ〜ね?私断られたんだよ。
お嫁には行かん。
いずれは行くんだけんその時までしまっといたらええよ。
もらってくれる人どこかにおるんかな?ハハハ!何言っとる?女の背が高いのはやっぱりいけん。
会ってももらえんだけん。
それは違うな。
今回はご縁がなかったそれだけのことだが。
一緒になる人とはきっとご縁の糸で結ばれとるよ。
そげなもの本当にあるんかな?結んであるの見たことないけんね。
見えんでもある。
ちゃんとあるよ。
はい。
よいご縁がありますように。

私があの世に呼ばれてから7年がたち布美枝は嫁ぐ当てのないまま28歳になっていました
ただいまユキ姉ちゃんが来たよ!お邪魔します。
あれ?どげしたの難しい顔して。
何?その写真?布美枝ちょっと来てみぃ。
はい。
この人に会ってみるか?えっ?ひょっとしてお見合い?えっ?会ってみるか?感じのええ人だね。
(源兵衛)うん。
お仕事は何をしとられるの?
(源兵衛)漫画家だそうだ。
本名は村井茂だが漫画は別の名前で描いとる。
水木しげるいうげな。
水木…しげる。
その人は戦争で左腕をなくしていました
布美枝の見合いの日がやって来ました
ええご縁でありますように。
(茂)酒屋かあ。
ふ〜ん。
えらいクラシックな家だなあ。
「座敷童子」か「あずきはかり」でも住み着いとりそうだ。
まだかなあ…。
お前は襖の前で控えちょれ。
はい。
よきところでわしが「ゴホン」とせきばらいをする。
ええな?
(修平)シェークスピア。
(源兵衛)シェークスピア?
(修平)英国の劇作家です。
まだ青二才ですわ。
(源兵衛)青二才!若造ですか?
(源兵衛と修平の笑い声)あの人か。

(せきばらい)
(谷岡)こちらが飯田家の三女の布美枝さんです。
あ…さっきの目玉だ。
赤貝の煮つけ!これは東京ではなかなか食えんです!東京ではどげなふうにやっとられるんですかな?漫画の仕事は苦労も多いでしょうな。
そげです。
骨の折れる仕事です。
注文は来るもんですか?来ます。
来なければ取りに行きます。
ほほう。
小梅書房大円社開界出版つきあいのある出版社がいくつかあるので注文が重なることもあります。
ほ〜う。
締め切りに追われてこれがまあえらいです。
はあ…本当はこげしてる間も惜しいほどで…。
(絹代のせきばらい)
(源兵衛)いや〜そげに働いたら並の勤め人よりずっと稼げますなあ。
(一同の笑い声)
(谷岡)ハクション!ああ〜失敬。
冷えてきましたな。
お父さんストーブ。
すいませんね。
(谷岡)いえいえいえ。
(源兵衛)すいませんね。
(小声で)お父さん自分でつけたことないくせに。
いやいやいや大丈夫。
石油は入っとるんですよ。
もうしゃにむに押してもいけん。
あ〜もう!私がやります!はっ!布美枝…座れ。
ちょっこし俺がやってみましょうか。
よし!それそれそれそれそれ…。
(一同)お〜っ!あつきました。
(一同)お〜お見事!
(一同の笑い声)あれ…。
「『べとべとさん』先へお越し」。
(足音)行ったようだが。
布美枝はその時子供のころの不思議な出来事を思い出していました
え〜本来でしたら日を改めてお伝えにあが〜ところですが村井さんから早速お申し越しがあ〜まして。
はあ。
この度のことは大変よいご縁であり村井家としてはぜひにもお嬢さんを頂きたいとそげにおっしゃっておいでです。
せっかくの良縁ですけん好機を逸することなく話を進めさせていただきたいとこげに思いまして。
はあ…。
世はまさにスピード時代ですけん。
「早速に婚約を」いうことでしょうか?
(谷岡)飯田様もご了解でしたらこの際めでたく縁談成立ということで。
え〜式は1月30日ではいかがでしょう?1月30日というと来年の?いやいや今年ですわ。
5日後の1月30日でお願いできんでしょうか?はあ?
(修平)「善は急げ」と申しますけん。
ひとつよろしくお願いいたします!
(哲也)結婚式を5日後に!?うんもうたまげてしまって!むちゃな話だなあ。
何でそげに急いどるだ?仕事の都合で東京に戻らねばいけんらしい。
「婚礼のために改めて来る時間もないけん一気に式まで挙げて嫁を連れて東京に戻りたい」とそげ言うんだ。
(哲也)でもそれじゃあんまり…。
貴司お前はどげん思った?俺は挨拶しかしちょらんけん。
姉さんは?体が大きくて頼もしげな人でしたね。
(貴司)東京に住んどる割にはキザな感じせんかったな。
言葉もこっちふうで素朴な感じがしましたねえ。
でも結婚式まで5日では…。
ろくな嫁入り支度もしてやれんですがね。
お前は反対か?よさげな方みたいですけど…。
そげですねえ。
決めてええか?ありゃええわ。
ええ相手だと思う。
これで決め〜だ。
どげだ?申し込み受けてええか?はい。
(一同)えっ?あっあんたちゃんと考えて言っとるの?お前は黙っちょれ。
承知と返事したら5日後には式を挙げてすぐに東京にたたないけんぞ。
それでもええか?日にちがなくても私はかまわん。
そげなら…決めるぞ!…はい!進めてください。
お願いします。

昭和36年1月28日大安。
めでたく結納の品々が納められました
東京は安来からはるか遠い場所でした。
今度いつ戻ってこられるか分からない故郷。
懐かしいその景色を目に焼き付けながら布美枝はふるさとの山や川や町並みに別れを告げました
本当に当座のものしか入れられんね。
着物も前に作ったもんばっかりやし。
ええよ。
東京には暁子姉ちゃんしか知り合いおらんし着ていく先もないかもしれんしね。
どげしたの?まさかあんたを東京にやるとは思わんかった。
お母さん…。
私がいけんかったねえ。
あんたが家のために一生懸命やってることを当てにして…。
もっと早こと嫁に出しとったら近くにええご縁があったかもしれんのにね…。
そげなこと言わんで。
いやいや嫁に行くわけじゃないんだけん。
そげだね。
おかしなこと言ってごめんね。
愚痴だわ。
お母さんの愚痴。
近くにおったらしてやれることも東京に行ったら何もしてやれん。
そげ思ったらもう情けなくて。
…お母さん。
これ少し地味かもしれんけど。
これお母さんが縫ってくれたの?そげだよ。
青海波の波の模様には日々の暮らしが静かな海のようにいつまでも続くいう意味があんだよ。
いつ縫ったの?夜なべしたの?何枚も何枚も持たしてやりたかったけど…。
結局一枚しか作れんかった。
無理したらまたリューマチ出るよ。
うん。
痛くなってももうお灸据えにあげには来られんよ。
体に気ぃつけてな。
元気でいなさいよ。
ね!ありがとう。
何しとるの?ん?明日出す酒選んどる。
酒屋がよそから酒を買う必要はないけんうちから持っていく。
お前の晴れの日だけん一番ええ酒を出してやる。
どげだ…ピカピカの特級酒だ。
さっき兄さんがネクタイの結び方教えに来てくれた。
おう。
お父さんが気が付いてくれたんだってね。
片手じゃネクタイ結べないって。
旦那さんほかにもできんことがあるかもしれんぞ。
うん。
最初は…苦労するかもしれん。
慣れん土地で…わしらには分からん漫画家いう仕事をしとってしかも片腕だ。
楽はできんかもしれん。
だども人生はその先が大事だけんな。
40年50年…一緒に生きた果てにこれでよかったと思えたらそれでええんだ。
うん。
あの男はなかなかええ。
お父さんはどこが気に入ったの?食べっぷりだ。
えっ?あげんうまそうに朗らかに遠慮も何もなしに飯を食う人間はなかなかおらんわ。
あの食べっぷりはええ。
ものの食い方には人間の品性が出るだぞ。
生きる力がどれだけ強いかは食い方を見れば分かる。
生きるということはすなわち食うことだけんな。
あの男はええ。
ちゃんと見るとこ見とるね。
当たり前だ。
見どころのない男に大事な娘はやれんわ。
お父さん…。
長い間…お世話になりました。
何を言うちょ〜だ…もう寝れ。
明日の朝は…早いぞ。
ぐずぐずせんと…もう寝れ。
(戸を閉める音)
そして今日は晴れの婚礼の日
(邦子)フミちゃん!食べとかんと途中でおなか減るよ。
だんだん。
お茶入れてくるけん。
水でええよ。
(源兵衛)ああ〜お前まだそげなとこで。
はよせんとハイヤーが迎えに来るぞ。
姉ちゃんおめでとう。
式には行けんけどしっかりな。
(いずみ)おめでとう。
(邦子)フミちゃんお水。
立って食べるやつがあるか!行儀の悪い。
あっミヤコはどげした。
ミヤコ〜!・
(ミヤコ)はいはい。
今…。
お前何しちょ〜!早う美容院で着付けせんと。
花嫁が遅れたらみっともねがな!はい。
あっいけん草履。
草履忘れた。
あ〜。
(一同のため息)あの〜。

(車のクラクション)あっハイヤー来た。
(源兵衛)わしと哲也はおっつけ行くけん。
ほんなら先行ってますけん。
ああ…きれいにしてもらえよ。
お姉ちゃんあがらんでね!行ってきます!早う!
(一同)行ってらっしゃい!
(神主の祝詞)では三献の儀を執り行います。

終生の契りを誓う婚儀はこうしてつつがなく進みました
(横山)まあひとつやってごしなさいませ。
ありがとうございます。
ぐっとやってごしない。
飯田の父が張り切ってよい酒をそろえたと言ってましたけん。
いけると思いますわ。
はい。
(絹代)あれあれ?茂が飲んどる。
(光男)兄貴大丈夫か?お母さんが。
駄目!ああ…。
あんまり無理せんでくださいね。
でも断るのは悪いですけん。
(横山)さあさあどんどんやってごしない。
大丈夫ですか?ひどいあぶら汗。
ちょっこし失礼して。
(源兵衛)皆さん!え〜本日は遠路お運びいただきまことにありがとうございます。
せん越ではありますがここで2人へのはなむけに1節歌わせていただきます。
お父さん?
(拍手)・「安来千軒名の出たところ」・「社日桜に十神山」俺おやじが歌うの聴くの初めてだ。
私は聴いたことある。
ず〜っと昔だけど。
・「荷物にならぬ」回想・「聞いてお帰り安来節」・「めでためでたの若松様よ」・「枝も栄えて」・「葉もしげる」
(拍手)あっ!しげさんが…。
あっ!
勧められるまま飲めないお酒を飲んで花婿はすっかり酔いつぶれてしまいました
水くれ…気持ち悪い。
だけん無理せんでって言ったのに…。
婚礼の夜布美枝は境港の村井家に泊まり翌朝茂と東京に向かうことになっていました
ほんなら行くけん。
元気でな。
ああ。
イカル何か言うとったですか?俺にやっと嫁が来たというんで張り切っとるからなあ。
「イカル」って何ですか?母のことです。
よう怒るけんうちでは「イカル」と呼んどるんですわ。
ああ。
回想
(絹代)ばからしい。
「暮らしの金」をなんとかしてごしなさい!うまい!…でおやじは「イトツ」。
食いしん坊で胃が突出して丈夫だけん「イトツ」です。
「イカル」に「イトツ」ですか…。
親にあだ名を付けるなんて私のうちでは考えられませんけん。
ほい。
え…?そっち持ちますわ。
はい。
だんだん。
トランクを軽々と持つ茂の広い背中はなかなか頼もしく見えました
おばば…。
布美枝のやつとうとう嫁に行きましたわ。
東京に嫁ぐことになりましてな…。
ああ…そろそろ汽車が出るころだわ。
村井布美枝の前途を祝して…万歳〜!
(哲也)村井茂布美枝夫婦の前途を祝して…万歳〜!
(一同)万歳〜!万歳〜!万歳〜!万歳〜!万歳〜!万歳〜!
(一同)元気でね。
(貴司)頑張れよ!
(俊文)おばちゃ〜ん!
(ミヤコ)布美枝〜!元気でね!体に気ぃつけんだよ〜!さようなら…。
ふるさとを後に布美枝は東京の生活へと踏み出していったのです
いっぱい人がおりますね!この程度は少ない方ですよ。
まだ朝が早いですけん。
大塚でこげにいっぱい人がいるのは祭りの時くらいです。
(運転手)奥さんここが丸の内です。
うわ〜!ビルがいっぱいある。
先に見えるのが皇居です。
は〜!ほんに東京なんだわあ!あの東京タワーはどの辺りにあるんでしょうか?ちっと方角が違いますなあ。
(運転手)あっ回りましょうか?いや今日は急いどるんで。
また今度でええですね?あっはい。
私こげな町に暮らすんだわ!
ところが…華やかな都心を走り抜けると車はどんどん郊外に向かっていきました
東京にもこげに畑があるんですね…?
(運転手)あ〜っ!
(急ブレーキの音)
(運転手)すいません!
(牛の鳴き声)もうこの先です。
あの〜ここですか?ええここです。
ここ?うそでしょ…。
ああ…。
何もないなあ。
何もかもがそろっていた大塚の実家とはあまりに違う調布の新居でした
男の人の1人住まいってこげなもんなのかなあ。
寒い…。
石油がない!フライパン鍋お玉菜箸ザル大小お皿…。
あっ!おみそ。
(ノック)・
(男)お〜い。
おるか?すんません。
お客さんですよ。
(ノック)あの〜お客さんですよ!・客?誰だ?私誰が誰か分からんのでちょっと出てみてください。
ちょっと…声を出したらいかん。
おらん振りをしなさい。
えっ?集金かもしれん。
今日来られてもどうにもならん。
(ノック)し〜っ。
(ノック)・茂はおらんのか?俺だ。
あっ何だ兄貴か…。
あ…。
すんません。
お茶が切れとりまして。
(雄一)あ〜いやもう!背広を取りに来ただけだから。
はあ…。
あの時の背広…?ああ。
これ兄貴からの借り着なんですわ。
ああ。
茂のはよそに預けてあるんだよな。
ああハハハ…。
預けて?直しに出しとるんですか?いや銀行に預けとる。
銀行?一六銀行。
(茂雄一)ワハハハ…。
おかずどげしよう。
お店の場所も分からんし…。
新妻の布美枝をほうり出したまま茂は仕事部屋に閉じこもっていました
あの…お仕事中すんません。
入りますよ。
(ペンを走らせる音)・
(カラスの鳴き声)
(ペンを走らせる音)えっ!?嫌!キャッ!あれ?どげしました?・
(カラスの鳴き声)あ…。
商店街なんてどこにあるん?はあ…。
畑ばっかり。
目印になるもん何もないわ。
あの絵何だったんだろう?ああ遠いなあ…。
あの…どげですか?えっ?何がお好きか分からんもんで。
ああうまいですよ。
そげですか。
お店も向こうと売っとるもんちょっこし違っとりますし何がええのか迷ってしまって…。
何でもええです。
嫌いなもんはないですけん。
あっそうだ…。
ご近所への挨拶はどげしましょう?引っ越しの挨拶せんといけんですよね。
気にせんでええですわ。
でも…。
みんなそれぞれでやっとりますけん。
あっ!あ〜あ〜あ〜!もう!えっ?あんたこれにネギなんぞ入れてはいかん!あっ買い物かごが見当たらんかったもんですけん。
これがちょうどええかと…。
あんたこれは漫画を入れる袋ですぞ。
においのつくものを入れられては困ります!ああちょっこしにおうなあ!あっすんません。
よう洗って干しときます!そうしてください。
(置き時計の時報)あっいけん!もうこんな時間だ!そしたら俺は仕事があるんで。
えっ?まだ仕事ですか?ええ。
何時ごろに終わります?家財道具や何かのこともちょっこし相談…。
任せます。
え…。
今は締め切りに向かってばく進しとる時ですけんほかのことは考えられん。
はあ…。
1週間も帰省したのが致命的でした。
致命的…!?遅れを取り戻すには猛ダッシュあるのみです!お茶…今お茶入れますけん。
いけん。
お茶の葉買い忘れた。
あ〜あ…。
締め切りのことしか言わん人だわ…。
東京での生活が始まって4日目の朝のことです
(猫の鳴き声)あらこの間の猫…。
(2人)キャ〜ッ!待て〜!行火!すっかり怖がっとる…。
あ…行ってしまった。

(浦木)うわ〜っ嫌!嫌!うわ〜っ。
(悲鳴と猫の鳴き声)あっイタチさん?じゃなくてえっと…。
浦木です。
俺猫嫌い。
あ〜!
現れたのはイタチ…いえ上京する列車の中で出会った茂の幼なじみ浦木克夫でした
中森さんをこの家に置いてもらえないか?はあ〜?ええ!?バカなこと言うな!うちはアパートでも下宿屋でもないぞ!まあ聞け。
「手ごろな貸間はないか」と中森さんから相談を受けたんだがどこも敷金だの礼金だのようけ取るだろう?ああ。
あんなものは不動産屋をもうけさせるための無駄金だ。
知り合い同士家賃のやり取りだけすれば無駄な金は使わんで済む。
でもろくにお世話もできませんし…。
賄いはいりませんよ。
奥さんの手を煩わせることはありません。
ねえ中森さん。
(中森)はい?ああ部屋さえ貸していただければそれで…。
(ちゃぶだいをたたく音)よし。
貸そう!ええっ!
浦木の紹介で2階に住むことになった貸本漫画家の中森はその日のうちに引っ越してきました
おばばの居場所もなくなってしまった…。
村井さん一体どういうつもりなんかね?どうも。
幽霊族の死体から生まれた赤ん坊墓場で生まれたので「墓場鬼太郎」。
(富田)ふ〜ん。
鬼太郎ね…。
鬼太郎のおやじはせがれのことが心配で目玉だけになっても生きようとするんです。
目玉のおやじそう「目玉親父」です!子供の行く末を案じた親の執念が目玉にこもったわけです。
どうして目玉がしゃべんの?口もないのに。
はあ…。
鬼太郎ひねた子供だねえ。
こんちは〜。
(亀田)はいラジオ。
おおっ久方ぶりのご対面!原稿料入ったんだ?ええまあ。
背広はどうする?ボヤボヤしてたらじき流れちまうよ。
背広か…もうちょっと止めておいてください。
しかたないな。
うわっラジオ!
(ラジオのノイズ)
(ラジオ「ダイアナ」)あっ!これ…どげした?お留守の間に空気を入れ替えてついでにちょっこし片づけときました。
何で余計なことするんだ…。
えっ?あ〜あ!これを捨てて。
すんません!本まで並べ替えたのか?高さそろえたらきれいに見えるかと思ってあの。
勝手に触らんでくれ!本の並べ方にも意味があるんです。
動かされたら困る!物の置き場所にもあんたにはごみに見える紙くずにもこの部屋のもんにはみんな意味があるんだ!すんません!何も分からんで。
教えてもらえたらこれからはそういうようにしますけん。
ええです。
どうせあんたには分からん。
えっ?余計なことはせんでくれ。
私…ほんに分からんのです。
気の利かん人間ですけんちゃんと話してもらえんと何が大事なことで何が余計なことなのか何も分からんのです。
村井さんのお仕事のことも知らんし漫画のこともよく分かりません。
でも一緒に暮らしていくんですけん村井さんの考えとること少しでも話してもらわんと私どげしたらええのか…。
一緒にここで暮らしていくんですけん。
もうええ。
とにかく勝手なことはせんでくれ。
ほ〜う!いつの間にか部屋が変わっちょ〜。

(カラスの鳴き声)回想一緒にここで暮らしていくんですけん。
ここで一緒にか…。
ただいま帰りました!あれ?おられん。
どこに行かれたんだろう?いらんことしたから怒って出ていかれたのかなあ。
・お〜い!ちょっこし出てきてくれんかね!お帰りなさい。
あれ?あんたの自転車です。
中古ですけどものはええですよ。
俺のはボロすぎて乗せられん。
買い物もこれで行ったら楽でしょう。
そうだ仕事も一段落したことだしサイクリングにでも行きますか?ね!どげしました?自転車乗れますよね?えっ?これ買いに…?ええ。
私びっくりして…。
だって自転車買ってきてくれるなんて。
いやあんたなにも自転車ぐらいでそんな…。
思いがけない茂からの初めてのプレゼントでした
どこまで行くんですか?ええとこがあるんですよ。

茂が案内してくれたのは豊かな木々に囲まれた深大寺という古いお寺でした
ここは天平時代からある寺だそうです。
天平時代?どれぐらい前なんですか?え〜ざっと1,200年前かな。
まあ。
そげに昔!静かなとこですね。
元は武蔵野の雑木林です。
東京にもまだこげな所があるんですね。
どこ歩いても水の音がしますね。
ええ。
水どこから流れてくるんでしょう?わき水ですけん土の底からあふれてくるんでしょう。
土の底から?土の底からわいてせせらぎになって多摩川まで流れていくんですよ。
ええもんですね。
水の流れる音って…。
そげですな。
見合いからたった5日で交際期間もなく結婚した布美枝と茂です。
2人にとってはこれが初めてのデートでした
(ドアが開く音)村井さん外に怪しい男がいます!えっ?あなたのこと捜しているようです。
俺?水木さん水木さんですよね!?
(中森)おかしな男ですよ。
しきりに「水木さん水木さん!」と私を呼ぶのです。
水木は俺のペンネームだけど…。
えっ?そうなんですか?
(ノック)・
(男)ごめんください。
こちら水木さんのお宅ですよね?来た!
(男)失礼します。
あれ?水木さんは…。
水木は私ですが何なんですか!?あんたいきなり。
あ〜あなたが水木さんですか!そうかそうか!あなただったんですか!よ〜し。
全部読みました!感動しました。
あなたはすばらしい!誰なんですか?あんたは。
戌井です。
僕も漫画家なんです。
え…。
突然現れたこの怪しい男が布美枝と茂の人生にこの先深くかかわっていくことになるのです
一度は打ち切りになった「墓場鬼太郎」の再開が決まり茂は部屋に閉じこもって仕事に打ち込んでいました
せめて力のつくもん食べてもらわんと!
少ない食費の中で少しでも栄養のあるものを食べさせようと日々料理に奮闘する布美枝でした
これでよし!ごはん出来ましたよ。
夕飯…支度出来ましたよ。
あれ…寝とるのかな?
(ペンを走らせる音)・奥さん!あ…戌井さん。
聞きましたよ!「鬼太郎」再開するそうですね。
おめでとうございます!ひと言お祝いが言いたくて来てしまったのですが…あれ?奥さん!どうかしたんですか?戌井さん。
はい?私…声もかけられませんでした。
えっ?あんなに仕事に打ち込んでる人の背中…初めて見ました。
あの人…片腕ですけん左肩で紙を押さえて描いとるんですよ。
背中がぐいっとねじれとって…。
(ペンを走らせる音)あげに精魂込めて描いとるもんが人の心を打たんはずないんです。
売れても売れんでももうかまわんような気がします。
あの人の努力は…本物ですけん。
あれ?まだ起きとったのか?あっはい。
もう夜中じゃないか。
はよ寝ろ寝ろ!今ショウガの湿布作ってますけん。
昔おばばに教わったんです。
これ肩凝りに効きますよ。
そげなことせんでええ。
肩凝りは漫画家の宿命みたいなもんだ。
私も…何か役に立ちたいんです。
ほ〜っ。
ちょっこし熱いかもしれんけど。
どげな具合ですか?う〜ん。
ホカホカしてなかなかええ。
しばらくそのまんまにしちょってください。
そこ座ってくれんか?えっ?その「スミ」と書いてあるとこ…そこにこれ塗ってくれ。
えっ?ぼさっとしとらんで!朝までに仕上げんとならんけん。
ほれ…早く!はい。
これでムラがないように塗れよ。
はい。
そげに力まんと!私…こげなことするの初めてで私で…ええんでしょうか?あんたならできる!手伝ってくれ。
時間ないぞ!ほれさっさと!はい!なかなかええじゃないか。

布美枝が初めて茂のアシスタントを務めた夜仕事は夜更けを過ぎても続き…。
いつしか夜が明けていました
しいたけと春雨と…。
(和代)何?今日の晩ごはん?今日すき焼きなんです!
(靖代)随分豪勢だわね。
(徳子)何かいいことあった〜?今日本が出来上がるはずなんです。
(3人)ふ〜ん。
ほんなら。
(和代)毎度ありがとね〜。
(靖代)張り切ってんねえ。
…本って何だろう?さあ…。
あらもう帰っとったんですか?うん。
あ〜。
ええ話と悪い話があるが…どっちから聞く?じゃあ…ええ話から。
本が出来たぞ!ほれ。
わ〜っ本当に出来たんだ!これ…。
これはあんたと一緒に作った本だけん。
最初の1冊はあんたにプレゼントだ。
あっ待て!泣くのは悪い方の話を聞いてからにしろ。
何ですか?実はな…原稿料はもらえんだった。
そんな…。
困ったな〜!本が出来ても金が入らんのではどうにもならん!そげですね。
…けどなんとかなりますよ!もう今日はお金の心配はやめてうれしいことだけ考えましょう。
せっかく本も出来たんですけん。
実はなもう一つええ話がある。
「鬼太郎」の長編を頼まれた。
続けて「鬼太郎」を描いてくれと富田書房のおやじに頼まれたんだ。
あのどケチ社長もようやく分かったらしい。
これが傑作だということが。
原稿料はそれと併せてということになるんじゃないかな。
おい聞いとるのか?やった…やった!やったやったやったやった!よかった本当によかった!やったやったやった…!何だ!その踊りは?ああ〜うれしい!あなた本当にすごいです。
やった!やった!あ〜もう分かった分かった。
漫画に懸けた茂の努力がやっと少し報われた気がしてうれしさを抑えきれない布美枝でした。
よかったなあ布美枝
今日はよろしくお願いします。
(武良布枝)こちらこそ。
よろしくお願いします。
お久しぶりですよね。
本当お久しぶりで。
最初ここに初めてロケに来た日に深大寺のあのソファーの所でお会いしましたもんね。
最初のころって東京に調布に出てきて深大寺でいろいろ自転車デートをしたりとかドラマの中ではありましたけども実際もよく来られてたんですか?実際もある日中古車を買ってきてくれて…。
買ってきてくれたのは水木先生ですか?そうなんです。
質屋から。
質屋から出してきてくれて。
水木先生のどういうところが一番好きだったんですか?好きなんていうんじゃないですが生きていく姿勢ですわね。
自分の運命を委ねざるをえなくて戦争に行ってああいうことになって命を繋いで帰ってきたからには絵で生きるんだということを念頭に置いてやっていることは私もうすぐに分かりましたから。
それに懸ける意気込みたるやもう…。
そうですよね。
おっしゃってましたね。
背中を見るともう動けなくなるぐらいにすごい気迫だったって。
これだけと思ってね何も声かけられない状態。
それはもう何回もありましたからね。
これだけ仕事に打ち込んでここの地でやっていくつもりでやってるのに私は何をか言わんやとね。
それで割と雰囲気は明るいんですよ。
飄々としてますし。
楽しそうだなって私も思いました。
それでは今日はこの辺で。
総集編第2部もお楽しみに!動き回るのが大好きなボストン・テリアのローズちゃん。
2015/12/05(土) 16:40〜17:48
NHK総合1・神戸
水木しげるさんを偲(しの)んで 連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」総集編 第1回[解][字]

島根県・安来に生まれ育った布美枝(松下奈緒)は、貸本漫画家の茂(向井理)と見合いをし、あわただしく結婚式を挙げて東京へと旅立つ。布美枝を待っていたのは…。

詳細情報
番組内容
島根県・安来に生まれ育った布美枝(松下奈緒)は、他人より背が高いことをコンプレックスに思う、引っ込み思案な女性。良縁に恵まれないまま、20代の終わりを迎えようとしていた布美枝に、貸本漫画家の茂(向井理)との見合い話が舞い込む。布美枝と茂は慌ただしく結婚式をあげ、東京へと旅立つ。そして、布美枝を待っていたのは…。
出演者
【出演】松下奈緒,向井理,大杉漣,古手川祐子,風間杜夫,竹下景子,平岩紙,桂亜沙美,星野真里,有森也実,星野源,大下源一郎,朝倉えりか,磯野貴理子,菊池和澄,野際陽子
原作・脚本
【原案】武良布枝,【脚本】山本むつみ
音楽
【音楽】窪田ミナ

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
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日本語(解説)
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