(芹沢慶二)おーい海老原?おい!いねえのかな?
(信近哲也)裏へ回ろう。
(信近)おい車あるぞ。
(芹沢)あれ?
(田村厚)えっ!?なんだって?
(古井太一)どうした?芹沢からだ。
えっ?ちょっ…。
海老原が…。
(芹沢)ご苦労様です。
(伊丹憲一)なんだお前のこの格好は!?
(三浦信輔)お前今日非番じゃねえのか?俺たちが第一発見者なんです。
何?ガイシャと知り合いなのか?知り合いも何も昨夜一緒に飲んでた相手っすよ。
ガイシャとの関係は?大学時代のゼミ仲間です。
昨夜海老原の独身さよならパーティーがあって俺たち一緒だったんです。
バチェラーズ・パーティーか?なんだよそれ?独身最後の夜を男友達が集まって飲んで騒ぐっていうアメリカ流のパーティーだ。
ガイシャに何か変わった様子は?いえ何も…。
今朝海老原がなかなか式場に来なかったので様子を見に来たんです。
まさかこんな事になってるなんて…。
財布が見あたらねえな。
帰宅したところを強盗と鉢合わせか。
つくづく運のねえホトケだぜ。
結婚式の当日が命日になっちまうとはな。
(米沢守)当日ではなく前日ですね。
監察医の報告によりますと直腸の温度死後硬直の具合角膜の混濁の程度から死亡推定時刻は昨夜の10時30分前後だという事です。
置時計とも一致しますね。
昨夜ガイシャが店出た時間…?10時ぐらいです。
帰宅後いきなり頭を殴られ抵抗しようとして刺されたか…。
新居が裏目に出たようですね。
警備会社との契約書か…。
来月からになってんな…。
(信近)なんでだよ!昨夜まであんな幸せそうにしてた奴がさ…。
こんなのひど過ぎるよ!どうしてなんだよ芹沢!
(芹沢)知るかよ!訊きたいのはこっちだよ!おい芹沢!
(芹沢)行こ…。
(亀山薫)ひどい話ですねえ。
式の前日に強盗殺人の被害に遭うだなんて。
(米沢)花嫁はショックでまだ放心状態だそうです。
そりゃそうでしょう。
幸せの絶頂から絶望のどん底に突き落とされたんですから。
一課も事情を訊けずに弱っているようですよ。
(杉下右京)殺害の直前メールが送信されていますね。
ええ被害者が花嫁にメールを…これです。
被害者はメールに気を取られていて無防備だった。
そこをいきなり殴られてブスッと…。
ひどい話です。
最愛の人の花嫁姿を見られずに殺されてしまうとは…。
無念だったでしょう。
ねえ。
ちなみに私は花嫁姿を見た後に逃げられましたが…。
それも無念だったでしょう。
被害者は婚約者に何を話すつもりだったのでしょうねぇ…。
え!?「ごめん。
話はまた日を改めて」という事はその夜彼は花嫁に何かを話すつもりだった。
はぁ…新居とかハネムーンの事とか…ですかね?しかしなぜ日を改めたのでしょうねぇ?さあ…。
友達気の毒だったな。
せめてお前の手で犯人をあげてやるんだな。
できません。
ん?なんで?捜査から外されました。
外された?捜査に私的な感情が入り込むとマズイそうです。
友達殺されたってのに何もできないなんて…。
すっげえ悔しいっすよ。
よし!じゃあ特命に来い!そりゃあちょっと…。
ダチの無念を晴らしたいんだろ?まあ…いや…ですが…。
そんなに右京さんの事が嫌なのか?お前。
だ誰もそんな事言ってないじゃないですか?亀山君そんなに困らせるものではありませんよ。
いやいや…だってこいつがねえ…。
え…ちょっと何言ってんっすか?お気の毒でしたねぇ。
お祝いの色紙ですか。
ゼミ仲間で寄せ書きしたんです。
結局海老原には渡せずじまいでしたけど。
この写真は?大学のゼミ合宿の時の写真です。
海老原も一緒でした。
こいつがそうです。
家に帰って着替えなきゃ。
ん?ああ…これから海老原の葬儀があるんで。
ああ…。
じゃあ…失礼します。
我々も行きましょうか。
どこへですか?…ああはい。
結婚式を挙げるはずだった教会で新郎の葬式出さなきゃならないだなんて…。
まさに悲劇のヒロインですね。
そうですねぇ。
俺だったら寝込んじゃうけどなあ。
かなり無理してんでしょうね。
申し訳ありません。
我々があんなパーティーをやらなければ…。
ちゃんと彼を家まで送り届けるべきでした。
まさかこんな事になるなんて…。
俺たちの責任です。
すいません。
(津島瑞希)いいえ…みなさんのせいでは…。
警視庁特命係の杉下です。
亀山です。
この度は心からお悔やみ申し上げます。
ご丁寧にありがとうございます。
海老原さんの事で少しお話を伺いたいのですが…。
杉下警部彼女のつらい気持ちも考えてください。
私なら大丈夫ですから…。
お座りください。
彼の最後のメールに「ごめん。
話はまた日を改めて」とありました。
彼はあなたに何かお話があったんですね?はい。
パーティーの後大事な話があるから夜遅くなっても私の部屋を訪ねると言ってました。
大事な話!?しかし彼のメールでその予定はキャンセルになった。
はい。
今夜はもう来ないと思い私は翌日のお式に備えて休みました。
あの時…彼はもう…。
すみません。
いえ。
あの…大事な話ってのはなんだったんでしょうかね?わかりません。
例えばその…すいません女性関係の事とか…。
過去の女性関係や若い頃の話なら彼私にすべて話してくれました。
海老原の奴昔は結構遊んでましたけど彼女に出会って生まれ変わったって言ってましたから。
(伊丹)特命係の亀山〜。
このヤマには関係ないでしょ警部殿。
芹沢に泣きつかれたんだよ。
芹沢に?いえいえ僕は別に泣きついてなんか…。
ダチの敵をとりたいけど捜査から外されて悔しい〜って泣いてたろう。
それは…。
言ってましたよね?右京さん。
若干ニュアンスは違いますがそのような事を言っていたようですね。
いやいやいや…。
おめえなあよりによって特命とつるむとはよう。
見下げ果てた奴だぜ。
いやだから違いますよ。
(浅葉ハルミ)元章!
(ハルミ)元章…。
元章…元章…。
ハルミ…おいハルミわかったからほら…。
離してよ!おいいい加減にしろよ!あの方は?海老原が大学時代から付き合っていた浅葉ハルミです。
おい。
ハルミ!何やってんだおい止めろ!大丈夫ですか?あなたのせいよ!あなたのせいで元章は…。
あなたさえいなければこんな事には…。
ハルミ!もうよせ!だって…。
落ち着いて…。
さあ行こう。
元章とは大学時代からの付き合いで結婚の約束もしてました。
なのにあの女のせいで…。
結婚の約束を反故にされたんですね?みんなあの女が悪いんです!あの女に会って元章は変わってしまいました。
変わったってどう?変に分別くさくなってまるで別人みたいに。
未練があったんですね彼氏に。
だって私は何も悪くないんですから。
彼氏の心変わりが許せなかった?式の前夜10時半頃あなたどこで何してました?芹沢君この人たち私を疑ってるの?誰にでもする質問だよ。
ちゃんと答えた方がいい。
うちで仕事を…。
私Webのデザインの仕事をしてるんですけど会社から仕事を持ち帰って自宅のパソコンで作業を…。
大好きな元彼の結婚式が翌日に迫っているのに仕事する気分になんかなれないんじゃないんですかね普通は。
逆です!仕事でもしてないといられなかった…。
あなたのアリバイを証明してくれる人は?誰かいないのか?私はやってない。
元章を殺したのはあの女津島瑞希よ。
(芹沢)根拠もないのにそんな事言うのはよせよ!根拠ならあるわ…。
あの人の…お父さん。
海老原は絶対ハルミと結婚すると思ってました。
あの2人うまくいってたからな。
でもいくら悔しいからって花嫁殴るか?
(横山欧彦)あれは許せないよ。
(氏家肇)でもあの性格だからな。
(坂之上浩二)あいつ思い詰めると周りが見えなくなるから。
もしかしたらあいつが…。
海老原さんの事を相当恨んでたって事ですか?
(田村)8年も尽くしてきましたからねえ。
ところで事件の夜海老原さんは花嫁の津島瑞希さんに大事なお話があったようなんですがその内容についてどなたかお聞きになってませんか?パーティーではそんな話してませんでした。
なあ?
(一同)うん。
結婚式前夜の惨劇。
単なる強盗殺人かと思いきやなんだか雲行きが怪しくなってきましたね。
そのようですねぇ。
(奥寺美和子)おかしいね。
何が?男が結婚相手になんでも隠さずに話すか?だって彼女がそう言ったんだから。
それが変だって言うの。
右京さん結婚前にたまきさんに何もかも話しました?さあどうでしたかね…まあ言わずもがなという事もありますからね。
でしょう。
(宮部たまき)私は特に聞きたいと思わなかったわ。
過去は過去だし結婚前に変な事聞かされて幻滅するのもね。
その花嫁婚約者の元彼女に平手打ちまで食らって怒りもしないなんておかしいよ絶対。
いい人なんだよ。
いい人?そう。
右の頬を打たれたら左の頬を差し出す。
そういうタイプ。
信じられない。
私だったら暴れるね。
往復ビンタ2倍返し…。
お前はそうかもしんないけどその人は全然違うんだよ。
なんていうかな…。
(たまき)聖女みたいな感じ?そうです。
聖女みたいな感じ。
(美和子)絶対いないってそんな女。
いるんです!
(美和子)いません〜!
(角田六郎)その被害者若いのに会社の社長なんだろ?ええ精密機械メーカーの2代目です。
ああだったら花嫁にする話は決まってるさ。
えっなんすか?今まで君には景気のいい事ばかり言ってきたけれど実は会社は火の車。
今にも倒産するかもしれない。
それでも僕についてきてくれるかい?まっそんなところだな。
残念ながらここ数年経常利益は黒字らしいですよ。
いやでも…ほらどっかの会社みたいに粉飾決算って事もあるだろ。
なあ?失礼別の事を考えていました。
別の事って?メールです。
メールって被害者が最後に打ったあのメールですか?ええ。
大切な人との大事な予定をキャンセルするのにメールで済ませるでしょうかねぇ?電話するよな普通は。
花嫁が待っていたのを彼は知ってたんですよ。
君ならメールで済ませますか?ああ…そう言われりゃそうっすね。
ごめんって謝ってるぐらいですもんね。
メールは別人が打ったんだと思いますよ。
えっなんでですか?ウエディングの「エ」です。
エ!?人には書き癖があります。
海老原さんが打った最後のメールでは大文字の「エ」が使われていますね。
ああ…はい。
ところが彼が普段使っていたのは…。
全て小文字の「ェ」なんです。
え…ホントだ。
うわー相変わらずちまちまと細かいねえ警部殿は。
お褒めの言葉と受け取っておきます。
だとしたら被害者が花嫁と会う事を知っていた人物が犯人って事になりません?そういう事になりますねぇ。
その人物…捜し出しちゃいましょうよ。
(鐘の音)
(鐘の音)今日もこちらだとお聞きしました。
ここにいると心が落ち着きます。
少しよろしいですか?海老原さんが誰かに予定を話したか聞いてませんか?あなたの方はどうですか?どなたかにお話を?…いえ。
式の前夜に新郎から大事な話があると言われたわけですよねえ。
不安はなかったですか?不安はありませんでした。
彼は私になんでも話してくれましたし彼の過去もすべて含めて私は受け入れるつもりでいましたから。
その…大事な話がなんなのかやっぱり見当つきませんかね?教えて欲しいくらいです。
2人の間にはもう隠し事なんかないと思ってたのに…。
(伊丹)邪魔だ。
消えろ!なんだとこの野郎!おめえの相手をしてるほど暇じゃねえんだよこっちは。
何!?ちょっとお話を伺いたいんですがよろしいですか?話ってなんだよ?おめえには関係ねえ。
ここではなんですので署までご同行願えますか?任意同行!?なんでだよ?それなりの根拠がおありなんですね?ええもちろん。
どういったお話でしょうか?亡くなられたあなたのお父上についてお話を伺いたいんですが。
父の死と今回の事は関係ありません。
こっちは関係あると思ってるんですよ。
お互いの溝を話し合いで埋めませんか?わかりました。
行きましょう。
おいちょっ…おい。
なんなんですか?あなたの実家は工場を経営していましたね?はい。
だが得意先の切り捨てにあい工場は倒産。
お父上は自ら命を絶った。
間違いないですね?「得意先はテクノ精機」「つまりあなたの婚約者海老原元章さんの父親が社長を務めていた会社です」「不況で経営危機に陥ったテクノ精機は非情にも下請けを切り捨てた」「お宅の工場もその1つだった」「提案したのは当時執行役員だった海老原さんです。
その事は?」「知っていました」そうするとあなた海老原さんが自分の父親を自殺に追い込んだ相手と知っていて結婚しようとしたんですか?はい。
許せたんですか?そんな相手を。
父の死はもちろんショックでした。
でも誰かを恨んでも仕方のない事ですから。
だが結婚となると事情は違うでしょう?彼は心から悔やんでいました。
私はそれだけで十分でした。
そんなにいい人がいるんですかねえ世の中に。
彼からその話を聞いたのは結婚式の前夜じゃないんですか?あの夜海老原さんはあなたを新居に呼び出し懺悔した。
今までその事実を隠してきた彼にあなたはショックを受け猛烈に腹を立てた。
そして…。
違いますか?彼からその話を聞いたのはもっと前です。
じゃあ彼はあの晩あなたに何話そうとしてたんでしょうね?今の話以上に大事な話ってあるんですか?わかりません。
「とぼけるんじゃないよ!」「あのメールだってあんたが打ったんじゃないのか?」
(泣く声)「どうして泣いているんです?」「泣いてたらわからないじゃないですか」嘘だろ。
まさか瑞希さんが…。
(伊丹)警部殿!今非常に大事なところなんですけどね。
すぐに済みます。
これに「ウエディング」と打ってみてください。
いつものようにどうぞ。
どうもありがとう。
お邪魔しました。
お邪魔しました。
例の書き癖ですか?ええ。
彼女も小文字の「ェ」を使っていますねぇ。
メールが犯人の偽装工作なら打ったのは瑞希さんじゃない!そういう事になりますねぇ。
大文字ですね。
この「祝・ウエディング」と書いたのはどなたですか?幹事の信近だと思います。
どういう奴なんだ?その信近っていうのは…。
幸浦市の市議会議員です。
あの若さで市議会議員か…。
信近疑ってるんすか?あいつには無理ですよ。
だって海老原が殺された時間俺たちは店でずっと一緒だったんですから。
みなさん日頃から仲がよろしかったんですか?いやあ俺がみんなに会うのは8年前のゼミ合宿以来です。
なるほど。
信近さんに会ってみましょう。
はい。
あのパーティーは海老原にやって欲しいと頼まれたんです。
あっあの…この色紙なんですけれどもね「祝・ウエディング」これを書いたのはあなたですか?いえ田村です。
田村さん?田村さんってのはどういう…。
優秀な弁護士ですよ。
田村さんもずっとお店に?
(芹沢)ええ一緒でした。
お前海老原からなんか相談受けなかったのか?一番信頼されてたのお前だろ。
ほらあいつがアル中になりかけた時だってお前が立ち直らせたんだし。
いや俺じゃねえ。
立ち直らせたのはハルミだ。
ああハルミさんが海老原さんにその…捨てられそうになった時何か話はされましたか?意見はしましたよ。
けれど…。
(信近)付き合ってもう8年だろ。
ハルミはどうなる?
(海老原元章)あいつが惚れてるのは俺じゃない。
俺の肩書きだ。
打算的な女なんだよハルミは。
瑞希は違うんだ。
損得じゃなく俺自身を愛してくれてる。
もう瑞希さんに夢中で…。
瑞希さんのお父さんの件で彼の方に負い目のようなものはなかったんですか?初めはそれもあって責任感から瑞希さんに近づいたようです。
でも彼女は広い心で海老原を許した。
それですっかり参ってしまったんです。
なるほど。
聞けば聞くほど愛憎絡みのヤマって気がしてきましたよ。
アリバイがなくまだ書き癖が確認できていないのは浅葉ハルミさんだけですね。
動機もあります。
彼女は確かWebデザイナーでしたね。
ええ。
(芹沢)そうか…。
ハルミの手掛けたホームページ。
最近ケーキ屋のホームページをやったって。
あった。
大文字です。
(芹沢)ハルミ!俺に話があるんじゃないのか?芹沢君まで私の事疑うの?お前がどんだけ海老原に尽くしてきたか俺は知ってる。
裏切られてどんなに悔しかったかも。
わかったような事言わないでよ。
私は20代を彼に捧げたわ。
女の20代はすべて彼。
なのに私はただ捨てられてな〜んにもなしで終わり?ひど過ぎるわ。
あの人が自殺未遂をした時だって私がついてなければ…。
海老原が自殺未遂!?それはいつの事ですか?大学4年の時でした。
その後彼の生活が荒れていろんな女と遊んでる時も私は我慢してたんです。
彼を信頼してました。
でもなんで…なんであんな女と…。
自殺未遂の原因はなんだったのでしょう?よくわかりません。
必ず原因はあると思いますがねぇ。
その年の夏頃から人が変わったみたいにおかしくなっていくら訊いても話してくれませんでした。
夏ですか…。
ゼミ合宿に行った頃かな。
確かそうだったと思います。
それからは何もかもが嫌になった。
死ぬしかないって…。
そう言えばあいつゼミ合宿の後なんかおかしかったな。
おいゼミ合宿でなんかあったのか?いや何もなかったと思いますけど…。
けどってお前も参加してたんだろ?ええまあ…。
はっきりしねえなおめえは!あの時俺熱出して寝込んでたもんですから…。
クッ!それじゃあ合宿に行った意味ねえじゃねえか!すいません。
ってなんで俺が先輩に謝らなきゃいけないんっすか?亀山君。
おいっ。
どうやらメールを送ったのは彼女じゃないようですねぇ。
ええ。
君に調べて欲しい事があります。
結婚祝いをやった店で追悼の会とはね…。
あまり趣味がいいとはいえないな信近。
俺の発案じゃない芹沢の発案だ。
芹沢の?
(ドアの開く音)
(芹沢)おっみんな集まってるな。
芹沢なぜ刑事さんが?
(芹沢)うん事件についていくつか訊きたい事があるんだ。
俺は海老原を弔うために来たんだ。
そうだ!こういう事なら帰らしてもらう!
(芹沢)いや頼むいてくれ。
みんなの協力なしではこの事件解決できない。
わかったよその代わり早く済ませてくれ。
(芹沢)うん。
海老原さんの事は本当に残念でした。
残された花嫁・津島瑞希さんの心中を思うと実に胸が痛みます。
前置きは結構ですから早く済ませてください。
では早速本題に入りましょう。
芹沢君確認のために当日の経過を教えていただけますか?はい。
パーティーが始まったのは夜7時です。
みんなで飲みながら昔話をしたり写真を撮ったりしました。
(カメラのシャッター音)
(一同の笑い声)
(芹沢)〔おいみんな!カンパイしようぜ!〕
(芹沢)〔はいカンパイ!〕
(一同)〔カンパーイ!〕
(芹沢)夜10時翌日に式を控えた海老原が1人で先に店を出ました。
〔明日早いから僕はここで失礼するよ〕その時海老原さんを見送りにどなたか外へ出ませんでしたか?僕と古井が出ました。
外でタクシーをつかまえて海老原を乗せて帰したんです。
なるほど。
続けてください。
その後は…残ったメンバーで酒を飲み深夜の2時頃お開きにしました。
つまり夜10時から深夜2時までみなさんはこのお店にいたというわけですね?そうですよ。
海老原さんが殺害されたのは午後10時40分頃。
場所は彼の新居。
しかしみなさんは全員このお店に残っていた。
1人残らず?芹沢が証人ですよ。
(芹沢)ええ。
なるほど。
みなさんにアリバイがある事はわかりました。
刑事さんは俺たちの中の誰かを疑ってるんですか!?単なる確認ですよ。
あっ確認ついでにその4時間の間に長時間このお店を離れた方は?誰もいないよな?ああ。
短時間ならどうです?そりゃあトイレに行ったり携帯かけに行った奴はいましたけど。
あなたはいかがですか?お店の中は電波が悪いようですが。
出ましたけど…。
何時頃に?時間は覚えてないです。
携帯の履歴を見ればわかると思いますよ。
なんか疑われてるみたいでやだなぁ。
単なる確認ですよ皆さんはいかがですか?外に出た方?僕も出ましたよ駐車場に止めた車に色紙を取りに…。
飲み会なのにお車でいらした?ええいつも車だし酒は飲めないんで。
もういいでしょう。
あなたが何を疑ってるか知らないけど僕らにはアリバイがあるんです。
では最後にもう1つだけ。
亀山君。
この「祝・ウエディング」と書いたのは田村さんあなたで間違いありませんね?ええそうですけど…。
なるほど。
それですべてがわかりました。
わかったって…何がわかったんですか?海老原さんを殺害した犯人ですよ。
僕らの中に殺人犯がいるとでも言う気ですか!?いいえあなた方の中にではありません。
あなた方…全員が犯人です!フッ…バカバカしい!確かに非常識な話です。
しかし僕にはそうとしか考えられないんですよ。
ちょっと待ってくださいよ。
僕たちには確実なアリバイがあるって今あなたが言ったんですよ。
言いました。
じゃあどうやればこの店にいながら自宅にいた海老原を殺せるんですか?おっしゃるとおり。
どうやっても自宅にいる海老原さんは殺せませんねぇ。
(信近)でしょう!?ですが彼は自宅ではなくこのお店の近くにいたとしたらどうでしょう?夜10時お店を出た海老原さんを見送ったのは古井さんと氏家さんでしたね?ええ。
しかしあなた方は彼をタクシーには乗せなかったんです。
なんらかの理由をつけて海老原さんを駐車場へ連れていき背後から襲った…。
(海老原)〔うっ…!〕気絶した海老原さんを縛り上げ隠しておいた。
そして店で時間が経つのを待つ。
海老原さんが自宅に帰りつくはずの時間を見計らい今度は田村さんと信近さんが店を抜け出す。
身動きのとれない海老原さんを殺害する。
その時血が飛び散らないようにナイフは抜かなかった。
そのあたりは周到な計画性を感じさせます。
海老原さんが花嫁と会う予定をキャンセルするため携帯メールで…。
「ごめん。
話はまた日を改めて」と送った。
そして何事もなかったかのように店に戻った。
メールを打ったのは田村さんあなたですね?この6人の中で大文字の「エ」を使うのはあなただけですから。
殺害後店で酒を飲み続けアリバイを作る。
証人には芹沢君を利用しました。
刑事である彼ほどアリバイを立証してくれる人はいませんからねぇ。
深夜2時パーティーをお開きにした後海老原さんの死体を自宅へと運び…。
室内を荒しそこで殺害されたかのように偽装工作をした。
同時に殺害時刻を確かなものにするために置時計の針を戻し…。
それを壊しておいた。
これで犯行時刻の10時43分には全員がこの店にいたというアリバイができるわけです。
だけどそれは全部あなたの推測でしょう?携帯電話の基地局を調べたんだけどね…。
最後のメールはどういうわけだろうね〜この近辺から発信されてるんだよ。
待ってください!肝心な事忘れてませんか?はい?俺たちには…海老原を殺す動機がない。
そうだ海老原は仲間なんだ。
友達を殺すはずがない。
(坂之上)明日結婚するって友達を殺したりするもんか。
そこが一番の悩みでした。
田村さんあなたは大学4年のゼミ合宿の後突然勉強が手につかなくなり確実視されていた司法試験に落ちていますねぇ?そ…それは実力がなかっただけです。
なぜ勉強が手につかなくなったのか話していただけませんか?そんな事を話す義務はない!
(信近)田村!落ち着け。
この男に見覚えあるだろう?しっかり見るんだ!あんたら…8年前の夏この人に何をした?結婚式の前夜海老原さんが花嫁にしようとしてた大事な話ってのはこの人の事なんじゃないのか?彼はあんたらに相談したんじゃないのか?「式を挙げる前に瑞希さんにすべてを話したい」って。
それを聞いたあんたらは口封じのために殺害を計画した!ダメだ…信近全部バレてる。
黙れ!しゃべるな!だから俺は嫌だって言ったんだ!なのにこいつが無理矢理…!
(信近)黙れと言ってるだろ!「計画は完璧だ自分が手を下すから協力しろ」って言ったじゃないか。
何が完璧だ!お前ー!
(芹沢)よせよ!やめろ信近!話してくれ信近…全部話すんだ。
今なら…自首扱いにできる。
俺が話す!いや俺が話す。
ゼミ合宿最後の夜…熱を出して早く寝てしまったお前を残して…みんなで遊びに出たんだ。
(騒ぎ声)
(男)君たち!あ…すいません。
(一同)すいませんでした。
(男)ふん!親のすねかじりどもが!手出すなよ!
(信近)そこで男とトラブルになった。
後で片づけるよー!謝ってんじゃないか!わかってんだよ!
(男)どういう事だ!なんだよ!
(男)ああっ…!
(田村)ヤバイよ死んだんじゃないのか?救急車呼んだほうが…!おうおう。
手伝え!何してんだよ?いいから手伝え!!早くしろ!
(海老原)川へ運ぶんだ。
(海老原)早くしろ!こっちだ!
(川に投げ込む音)
(川に投げ込む音)
(信近)数日後川下で死体があがった。
その時7人で誓い合った。
「この事は絶対に秘密にする」と。
それなのに海老原の奴…。
(海老原)あの事を秘密にしたまま結婚はできない。
式の前の晩に瑞希にすべて打ち明けようと思う。
(信近)よせ!そんな事したら破談にされるぞ!
(海老原)破談になってもいい!彼女にだけは嘘をつきたくないんだ。
(信近)俺たちはどうなる!?彼女が警察にしゃべれば…。
瑞希はそんな口の軽い女じゃないさ。
(信近)海老原の口を封じるしかないと思った。
(芹沢)自分の身を守るために海老原を殺したのか?ああそうだよ。
あれから8年…みなそれぞれに守るべきものがあるんだ!友達殺して…!それで俺をアリバイ工作に利用したんだな?そうだよ悪いか!?お前だって熱出してなきゃな俺たちと同じ立場だったんだ!運のいい奴だ!うらやましいよお前が。
自首します。
自首扱いにしてもらえるんですよね?その前に…。
あんたらに見て欲しい人がいる。
来てくれ。
あの人は…!あんたらが殺したと思っていた小渕さんだよ。
そんな…バカな…。
どういう事なんだ!?ゼミ合宿でなんかあったんじゃないかと思って調べてみたんだ。
地元署で小渕さんの捜索願を見つけた。
だって…新聞記事で「死んだ」って…。
あれは別人だ。
小渕さんはいったんは溺れかけたものの自力で川岸までたどり着き一命を取り留めた。
だが…捜査はされなかった。
なぜならば…その時にはもう小渕さんは記憶を失っていたからだ。
つまり…あんたらが海老原さんを殺す必要はまったくなかったって事だ。
そんな…!じゃ…俺たちなんのために海老原を…。
苦しんできたこの8年はなんだったんだ!?苦しんできたのはあなた方だけではありませんよ。
小渕さんはあの時のケガが原因で今でもお嬢さんの手を借りなければ生活する事もできないんですよ。
(信近)物証は!?俺たちが海老原を殺したっていう確実な物証はあるんですか!?お前まだそんな事を…!こんなだまし討ちみたいな事で捕まってたまるか!いい加減に目を覚ましなさい!!この期に及んでまだ逃げるつもりですか!?あなた方が8年前に小渕さんにした事そして今回海老原さんにした事一生かかっても償えるものではありませんよ!しかし今向き合わなければいつ向き合うんですか!?警察ナメんなよ。
証拠なんかこれからいくらでも見つけてやるよ。
逮捕か自首かはあなた方ご自身でお決めなさい!
(芹沢)俺もあっち側にいたかもしれない。
そう考えると本当に恐ろしいんです。
でもあなたはこちら側にいる。
今できる事をすべきではありませんか?ちゃんと瑞希さんに説明できんのか?やってみます。
なんだお前らまた邪魔しに来たのか?うるせぇよ亀。
あ?俺らも一緒に行くわ。
え?彼女を容疑者扱いしちまったしな。
仕事とはいえひどい事を言っちまった。
まっ謝るのも仕事のうちだ。
はい!ではいきましょうか?はい!2015/12/04(金) 16:00〜16:58
ABCテレビ1
相棒season4[再][字]
「黒衣の花嫁」
詳細情報
◇番組内容
“警視庁一の変人”だが天才的頭脳で鋭い推理をみせる杉下右京(水谷豊)と“おひとよしな熱血刑事”亀山薫(寺脇康文)の名コンビがあらゆる難事件に挑む!
◇出演者
水谷豊、寺脇康文、鈴木砂羽、高樹沙耶(益戸育江)、遠野凪子(なぎこ)、川原和久、大谷亮介、山中たかシ(崇史) ほか
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
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