上方落語の会▽「書割盗人」桂福丸、「つぼ算」桂塩鯛 2015.12.04


「上方落語の会」今回のゲストはスポーツコメンテーターの田中雅美さんです。
よろしくお願い致します。
よろしくお願いします。
今日は「上方落語の会」っていう事でこれから落語を聴いてもらうんですけども今まで生の落語を聴きはった事あります?実はあるんです。
桂文珍さんですとかあと王楽さんのお噺も聴いた事があります。
ひょっとしたらここでやった「わがまま演芸会」。
はい。
南光師匠とか出てはった。
はい。
あの時に来て頂きましたね。
そうですね。
その時はもう本当に楽しくて感動しました。
お笑いなんかはお好きなんですか?はい。
現役時代はDVDを…落語だけではなくてコントとか漫才のDVDを海外に持っていって選手でみんなで見てそれでリフレッシュリラックスして試合に臨んだという…。
演芸が銅メダルのお役にちょっとぐらい立った訳でんな?そうですね。
ほかの選手の皆さんもすごい好きだったのでみんなに「見て見て」と言って盛り上がりました。
今度のオリンピックの人も演芸見てほしいでんな。
是非。
というところで効果があります落語をまず聴いて頂きましょう。
桂福丸さんの「書割盗人」です。
どうぞ。

(拍手)
(拍手)ありがとうございます。
今から開演でございます。
今インターネットというのがございましてそこに例えば言葉を入れまして検索というボタンを押しますと情報というのが何千件何万件と出てまいります。
ある日私も芸能人の端くれと致しましてですね自分の名前を検索したら何が出んのやろうと思って「桂福丸」と入れて検索を押してみたんですね。
そうしましたら落語会出演情報とかのほかに「桂福丸日記」というのが出てまいりました。
私はそんな日記書いてないんでございますね。
ちょっと怪しいなと思てね名前勝手に使われてんちゃうか思て見てみたんですね。
「10月1日桂福丸日記。
今日の桂福丸は最高でした」。
お〜ありがたいな。
落語ファンの方かなと思てね。
「10月2日桂福丸日記。
今日の桂福丸も絶好調でした」。
おっ2日連続で見てくれてはんのや。
これひょっとしたらファンの人かなと思たんですが後の文がちょっとおかしかったんですね。
「今日の桂福丸も絶好調でした。
アジの刺身がおいしかった」って書いてある。
何の日記やろなと思いましてね。
「10月3日桂福丸日記。
今日はメバルとイシダイが大漁でした。
海に感謝です」と書いてあるんです。
よく見ますと桂福丸という漁船の日記やったんですね。
漁船の名前と一緒というね。
名前取られてたと思たらねこっちが名前盗んでるようなもんだったんでございますけれども。
え〜今日は盗人のお噺でおつきあいを願います。
「え〜ここかいなお前の住んでる4畳半一間っちゅうのは。
え〜しかし何やなこれ家ん中真っ白けやないか」。
「そうでんね。
あんまり部屋汚いさかいね白い紙をぎょうさん買うてきて壁から柱へベタベタベタ〜ッと貼りましたんや。
ほんで何も物がないさかいあんたに家財道具一式を絵に描いてもらおうと思いましてな。
わたいはそれ見て物があるつもりで生きていきます」。
「いやそらええけどもほんでどっから描いたらええねん。
左の壁の奥?よっしゃよっしゃ。
ほなな皿に水入れて持ってきてくれるか」。
「へえへえはいはい」。
「あっはいこっちもらおう。
ほいで何から描いたらええねん」。
「やっぱりね家には床の間が付きもんですさかい床の間お願いします。
遠慮せんと3間の床の間ど〜んと描いて」。
「お前とこ4畳半やろ?どないして3間の床の間が入んのや。
え〜これぐらいやったらな半間の置床っちゅうやつにしとこか」。
「半間の置床。
よろしいな〜。
うわうわうわこらよろしいな。
ほんで床の間の上にはね宣徳の置きもんお願いします」。
「宣徳?お前貧乏してる割に詳しいねやなそういう事。
う〜ん宣徳やったら唐獅子にしとこかいな。
獅子がな玉をなキュッと押さえとってな。
唐獅子ちゅうのはやな毛がくるっくるっくるっくるっと巻いてあって尻尾だけぴっと立ってあんねん。
ほんでな目のとこにこうちょんちょんと金を入れてやるとそれらしいに見えてくるな」。
「うわ〜立派な床の間ですわ。
おおきにおおきに。
で床の間の横にはね茶棚お願いします。
茶棚の戸がちょっと開いててそっからカステラが見えてるとこ」。
「カステラ。
何でそんなん描くの?」。
「わたい好きでんねんカステラ。
あ〜薄い薄い薄い!もっと分厚いやつ描いて。
そうそうそうそう食べ応えがあるようにね。
でここにはね大きめの火鉢をど〜んと据えてもらいまして鉄瓶が載っててねこう湯がクラクラチ〜ンと沸いてまんねん。
おうおうよう沸いてますな。
ほんで火鉢の横にはねかわいらしい猫ね。
丸うなって猫が寝てるとこ。
そうそうわたい犬嫌いでんねん。
猫描いておくんなはれ。
ほんでこっちの端にはねわたいきれい好きですさかいほうきとちり取り描いて」。
「それぐらい買うたらどうやねんな」。
「買うまでの間とりあえずや。
おおきに。
さあ下りてもらいまして土間台所ですな。
一番奥のとこにはへっついさんかまどお願いします。
鍋が載っててね煮炊きもんしてまんねん。
へっついさんから火がはみ出るくらいにグワ〜ッと。
そうそうもっと勢いように。
うわ〜よう燃えてますな。
ここにはね水屋お願いします。
水屋の戸がちょっと開いててねそっからタイの尻尾がピャッとこう見えてるとこね。
へえへえへえ結構です。
そんで玄関の横手にはげた箱いきまひょかいな。
はいはいはいああ結構です。
さあ上がってもらいましてね右の壁上がってすぐのとこに衣桁着物掛けるやつ。
桟が3段おまして一番上がへこ帯と細帯。
真ん中の桟には手拭い。
横手に一反風呂敷8つに畳んでぽいっと引っ掛けてます。
一番下はねこれ仙台平のはかま。
ねえ立派なやつ。
はかまがねくしゃくしゃっと脱ぎ散らかされてる感じをね。
うわ〜立派なはかまですなあ。
で真ん中のとこにはねうん大きめの桐のたんすをど〜んといきまひょかいな。
ええええ。
ようけ物持ってるっちゅう感じをね。
え〜たんすの横手にはね踏み台。
こら要るもんですさかいに踏み台描いてもらいましてで柱のとこは…時計いきまひょかいな。
時計ね。
え〜1つでは寂しいな。
上から12個並べといて。
上から1時2時3時いうてね。
一番下12時と。
好きな時に好きなんぱっと見ますからね。
でこっちの方にはね大きめの金庫をど〜んと据えてもらいまして扉がグワ〜ッと開いてて中から札束がちらちら見えてるとこ」。
「趣味悪い家やなお前。
え?札束ってお前…。
もうええわ。
床にこないして札束落としといたろ」。
「うわ〜大金持ちになった気分ですな。
上のね長押のとこには槍を1筋お願いします。
え?『何で?』てそら表通ってる人が見たら思うがな。
『このうちこんな貧乏やけども元はお侍の出やったんかな』て思われまっしゃろ。
ええええはい結構です。
さあ残ったんは奥の壁。
もうあっさりいきまひょかいな。
内の障子がす〜っと開いてるというと庭が見えてます。
山があって池があって松の木がニュ〜ッと生えてて松の木の向こうには蔵が3つ並んでて…」。
「どんな長屋やねんここは。
造りがおかしいやないか」。
「何でもよろしいがなにぎやかやったら。
え〜左の方さみしいなあ。
あっ大阪城描いて。
わたい好きでんねん。
あっこっちの方もさみしいなあ。
富士山描いて」。
「どこやねんなここは」。
「何でもよろしいがなにぎやかやったらね。
ほ〜らえらい立派なうちになりました。
おおきにおおきに。
まあ座っとくんなはれ。
今お茶いれますわな。
お茶いれます。
お茶…お茶…。
湯沸いてるけど飲まれへんねんこれ。
うち帰ってゆっくりおあがり」。
「何やそれは。
気楽な男やな。
まあまあこれぐらいやったらいつでも描いたるさかいまたうちおいでや」。
「ええ。
えらいすんまへん。
おおきに。
うわ〜立派なうちになったなあ。
しかしなカステラやらタイやら見てたら腹減ってきたな。
飯でも食ってこよか」。
ぽいっと表へ出ます。
そのあとにやって参りましたのが盗人泥棒でございます。
落語に出てくる泥棒というのは大概どこか一本抜けておりましてこの男もご多分に漏れず人一倍おっちょこちょいで人一倍思い込みが激しいという絵に描いたようなアホでございまして。
「あ〜あかんな。
このごろどこ行ってもあかんわほんま。
こんな長屋になため込んでるやつたまにおんねんけどこらあかんわなここ。
あ…。
戸が開いとんなあそこ。
見してもらおう。
うわっえらい物そろてるがな!すごいなここ。
あんなとこで猫が寝とんね。
かわいいもんやなあ。
猫がおるっちゅう事は犬はおらんか。
時計がぎょうさんあるなあ。
集めてんのか?こいつ。
うわっ庭があって蔵が3つも並んどる!おかしな造りの長屋やなここ。
はっ大阪城や!こっちにもあんねやけどな大阪城。
いつの間にもう一個建ったんかな。
はっ富士山や!晴れてたら大阪からでも見えんねやなあ。
へえ〜。
おっ床に札束落ちてるで!入ってとったろかな。
あっ誰か来た。
う〜んまた後で」。
…と帰ってしまう。
やもめの方はうちへ帰ってまいりますとそのままごろっと横になって寝てしまいます。
夜中になって再びやって参りましたのが先ほどの盗人でございまして。
「え〜あんなええうちめったにないでおい。
あそこに入らん手はないがな。
どこやったかな。
この辺りこの…。
あそこやあそこや。
プッ。
こいつまた戸開けとんで。
どんなやつ住んどんねや。
あっやもめか。
へっ入れてもらうで」。
「危ないうちやな。
へっついさん火ついたままやがなおい。
火事になったらどないすんねんこいつ。
うっ気色悪っ!あの猫昼間とおんなじ格好で寝とるで。
『ニャ〜』とか言わんといてやほんま。
さあ何からとったろ」。
「はっはっふあ〜。
何やごそごそ音すんなあ。
ネズミか?あっ誰かおる。
誰や?ああっ盗人や!アホや。
こいつこんなとこ入って何とんねやろ。
おもろいから見といたろ」。
「さあさあさあこんなとこに上等の桐のたんすがあるで。
こういうたんすには上等の着物がどっさり詰まってんで。
まずこれからいこ。
まずこれからいこ。
まずこれから。
これ…。
たんすの環に手が引っ掛からへんなおい。
あ!あかんがな。
着物なんか手つけたら後で足がつきやすいねん。
床に札束が落ちてんねん。
これやったら足はつかん。
足はつかん。
足はつかん。
手にもつかん。
どないなってんねんこれ。
何…」。
「つるつるや。
あっ絵に描いてんで。
札束絵や。
猫。
皆絵に描いてんの?え〜!しょうもないしゃれ言うてる場合ちゃうでこれ。
どないなってんねんこれ!」。
「びっくりしたか?」。
「びっくりした!何やお前起きとったんかおい!ここどないなってんねん」。
「俺な何も物がないからこないして絵に描いて物があるつもりで生きてんねん」。
「はあ!?あるつもりで生きてるてこれ皆絵かいな。
くそ!えらいとこ入ってもた」。
「残念やったな。
はよ帰りや」。
「待てこら!わしも盗人の端くれじゃ。
このままおめおめと帰れるかい。
う〜ん…分かった!お前があるつもりで生きてんやったらな俺もとったつもりで帰ったるわほんま。
そないせな腹の虫が治まるかっちゅうねん。
掛けてある風呂敷を引き抜いて床にバッサ〜と広げた…つもりじゃ。
たんすの引き出しを引き抜いて中の着物をドッサ〜ドッサ〜ッとぶっちゃけたつもり!札束は忘れんように積み上げたつもり。
ついでにこの猫も置いたつもり。
風呂敷の両端をこうくくったつもり。
あんまりかさが高いからへこ帯をとってきて胴くくりをこう掛けたつもり。
キュッキュッキュ〜ッと引っ張ったらキュッキュッキュ〜ッとかさが低くなったつもり。
風呂敷の両端を顎の下でくくったつもり。
立とう立とうとするんやけども重とうて立てんつもり」。
「何してんねんこいつは。
悪いやっちゃなほんま。
皆持っていきやがんな。
待てこら!なんぼつもりか知らんけどな持ち主は俺やぞ。
とられてたまるかっちゅうねん。
よし!ぱっと立ち上がってそこにあった仙台平のはかまを手早うに身に着けた…つもり!手拭いでこう鉢巻きを締めたつもり。
細帯でこうたすき十字にあやなしたつもり。
長押の槍に手がかかったつもり。
ト〜ンと石突きをついたつもり。
隆々としごいたつもり。
盗人の脇腹目がけてザクッと突いたつもり」。
「よけたつもり」。
「よけるなお前は。
じっとしとけお前。
もういっぺん狙いを定めてザクッと突いたつもり」。
「うお〜突かれたつもり」。
「グリグリグリッとえぐったつもり」。
「血がドバッと出たつもり」。
「もっともっと突いたつもり」。
「隙を見て逃げたつもり」。
「待て待て待て。
待てやお前。
やっと盛り上がってきた時やのにお前。
あいつ何やねん。
逃げたつもり言うてあんなとこぶらぶら歩いとるやないかい。
こら〜とったつもりの盗人!お前何そんなとこのこのこ歩いとんじゃい」。
「やかましい!もうお前みたいなアホにつきおうてられるかい。
こないして歩いてな今日はこの長屋に来なかったつもりや」。
(拍手)桂福丸さんの「書割盗人」でございました。
いかがでした?お部屋がどんどん絵で豪華になっていく感じがすごく想像力働きましたね。
やってみはります?自分。
そうですね。
それでね心が豊かになるかもしれないんですけれども。
また盗人の方が面白かったですね。
言うたらねこれバーチャルリアリティーの落語という事でございますよね。
というとこで次は後半でございます。
桂塩鯛さんの「つぼ算」です。
どうぞ。

(拍手)
(拍手)どうぞ私の方もよろしくおつきあいの程を願っておきますけれども。
まああの古い話をする時にまあちょっと分からんようになってるというような事もある訳でございますけれども。
大体皆さん平気でこの水道なんか使いはりますけれどもねあれもだいぶんこっち側来てからの話でございましてその昔はやっぱり水道なんかなかったんでね。
え〜まあ大体井戸を使ってたんでございます。
井戸のない所はどうしてたかというと水を買ってた訳でございますね。
水をね。
でやっぱり家には水つぼというものが置いてありましてその水でごはん炊いたり汁炊いたりいろいろしてた訳で…。
へっついさんとかねいろいろカンテキとか出てくる訳でございますわな。
今では本当に見かけんようになった事ばっかりなんでございますけれども。
淀川の水というのはちょっとぐらい高かったんやそうでございます。
そのぐらいきれいな水が流れ出たんやそうでございますけれども。
まあまあそういう古い時代のお噺でございますけれども。
「こんにちは」。
「おうおうお前かいな。
まあまあこっち入り」。
「あんたんとこの近所へちょっと宿替えしてきましてな」。
「ああそうらしいな。
聞きてたんや聞いてたんや宿替えしてきたっちゅう事はな。
いっぺん祝いに行かないかんなあと思ってたとこやったんやがな。
まあいずれにしてもなこうして近所になったんやさかい何でも言うてや。
要るもんがあったら何でも貸すで」。
「今日はねちょっと頼みがあって寄せてもらいましたんや」。
「ああそうかいな。
どんな頼みや?」。
「今度のうちはねまことにええうちでございまして便利のええうちでございましてな。
ず〜っと入っていって突き当たりにねへっついさんが置いてありまんねん。
置きべっついのやつと違います。
備え付けのこのやつがど〜んと大きいのが置いてありまんねやがな。
その上にね三宝さんの棚があってね。
そこにほていはんが3体並んでまんねん。
これがこのうちの付きもんでんな」。
「けったいな付きもんやな」。
「まあ前の人が置いていきはったんやね。
まあ縁起もんやさかい残しとけいうて残してまんねんがな。
その上が天窓になってましてな。
そこで猫がちょいちょいと昼寝してますねん」。
「お前うちへ何しに来たんやお前は」。
「いやいやこっから言わんと分からんのです。
猫ね下にネズミか何か見つけおったんでっしゃな。
それ捕ろうと思って上からピャ〜ッと天窓から飛び降りしなにね3体並んだ一番端のほていはんの肩口を後足でぽ〜んと蹴りおったもんやさかいにほていはんが『何すんねんな』てな顔してな真ん中の方へゴトゴトゴトゴトゴトって寄っていきはった。
真ん中のほていはんもこっちから寄ってきたもんやさかいに『アホな事しなはんな』てな顔してなゴトゴトゴトゴトゴトゴトといったんです。
でこっちの一番端のほていはん2つながら寄ってこられてるんでねこらわしも寄らん事にはつきあいが悪いちゅうなもんでゴトゴトゴトゴトといったんやけれどもさあこっちにはもう何もおまへんやろ。
その時に上から下へスト〜ンと落ちたんでんな」。
「そんなややこしいものの言い方しいないな。
つまり猫がほていさんを蹴落とした」。
「そう!猫がほていさん蹴落とした。
拍子の悪い。
下に水つぼがありましてな。
その上にパ〜ンと当たってつぼがパシャ〜ッと割れて水がプッシュ〜ッ。
『えらいこっちゃ。
嫁はんつぼが割れたがな!』…って言うたら『何ちゅう事言いなはんねんこの人は。
宿替えしてくる早々つぼが割れたやなんてそんな験の悪い事言うもんやおまへん。
これは割れたんやない。
数が増えたんですがな』。
どうです?うちの嫁はんええ事言いましたろ?『割れたんやない。
数が増えたんですがな』。
さすが小学校中退してるだけあってね」。
「そんなおかしな言い方しいないなお前は」。
「で『どないしよう』って言うたら『これをええ潮にと言うたらおかしいけれども今まで1荷入りの小さいつぼでちょっと不便をしてたんや。
これをええ機会にちょっと大きい方の2荷入りのつぼに買い替えたい』とこない言うさかいにね『ほなわい買うてくるわ』ちゅうたら『ちょっと待ちなはれあんた。
あんたという人は。
あんたぐらい買いもんが下手な人はない。
あんたな安い品物を高い銭出して買うてきてまたおおきにありがとうて礼を言うて帰ってくるような人や。
そこへいくとあの徳さんという人は…』。
そうあんたの事です徳さんあんたです。
『あの徳さんという人は買いもんがうまいねん。
あら大体人間が悪賢う出来てるさかいにねちょっと腹の黒い人間やさかいあいつうまい事おだてて一緒に行ってちょっとでも安う買うといなはれ』って言われて来ましたんやけれども行てくれるか?」。
「お前今そこで何言うたんや」。
「え?いや何言うたって私は買いもんが下手やちゅうてますねん。
徳さんあんた買いもんがうまいちゅうてまんねやで。
あの人は大体ねえ人間が悪賢い…。
いや違いますがな。
あの〜腹の…。
ハハハハ…!聞いてたん?」。
「当たり前やがなお前。
誰の前でしゃべってんのやお前は」。
「はあ〜こんな事あったな。
本人の前で言うたらあかんわ。
つい陰で言い慣れてるもんやさかい」。
「言い慣れなやそんな事。
ほんまにもう。
しかしまあまあお前には何を言われても腹立たんわ。
それお前の人徳じゃ。
ほんまに。
ほな何か?わしが買いもんがうまいもんやさかいに一緒に行ってちょっとでも安く買うてこうっちゅうこういう腹か」。
「分かりゃそんでええ」。
「偉そうに言わんでもええがな。
ほんじゃまあつきあいしたろ。
あのなこいつにつきおうてなちょっと瀬戸物町までつぼ買いに行ってくるさかいにな。
ああじきに帰ってくる。
そんならなそこにある朸を持って表出え」。
「え?」。
「天秤棒持って表へ出えっちゅうねん」。
「こんなもんどないすんのん?」。
「帰りしなになお前とわしとで差し担いをしてつぼ担げて帰ってくんねん」。
「そんな事せんでも向こうが運んでくれるがな」。
「そんな事言うてるさかいにお前は買いもんが下手やってな事を言われるんや。
それも値切る時のええ道具になんのやさかいに持って出えちゅうねん」。
「うん」。
「えらい忙しいのに引っ張り出してすんまへんな」。
「お前表へ出てからべんちゃら言うやつがあるかいな。
ほんまにもう。
けったいな男やでほんまに」。
「けど何やね買いもんには上手下手があるそうやね」。
「そらそうやな。
買いもんぐらい上手下手があるもんはないで。
昔から『買い物上手買い物天狗』ってな事をいうた。
まあ仮にやなこれからお前とわしとが古着屋へ1枚古着を買いに行くとせんかい」。
「いやいやこれからね瀬戸物町へつぼ買いに行くねん」。
「そら分かってるがな。
せやから仮に行くねん。
仮に古着屋へな古着を1枚買いに行くとすんのやがな」。
「ほなまあ行てもええけれどもなあ銭が足らん」。
「お前話のしにくいやっちゃな。
仮に行くとするんやがな。
紋付きの羽織が欲しかったら紋付きの羽織を見してくれっちゅうたらあかんのやで」。
「何でやな。
紋付きの羽織欲しかったら紋付きの羽織見してくれ言わんとしゃあないがな」。
「さあさあそこらがコツやがな。
紋付きの羽織が欲しかったら初めはわざと縞物を見してんかとこういくねんな。
で向こうがこう出してきよるこの縞物をないろいろこの…う〜ん傷をつけんねん」。
「はああの…傷つけんの?破んの?」。
「違うがな。
口で傷をつけんのやがな」。
「食いつくのん?」。
「違うわアホお前は。
分からんやっちゃな。
つまりけちをつけるんやがな。
『ああ縞柄がぼやけてる』とかな『わきつぼに傷がある』とか『何かこれもひとつこうぱっとしたんがないな。
まあまあせっかく入ったんや。
手ぶらでも出られへんがな。
ついでやけれども紋付きの羽織でもあったら見してんか』と初めにこの『ついで』っちゅうやつをボンとかましとくのや。
な?で向こうが出してきよるわ紋付きの羽織を。
『あ〜これ紋もええしな裏の模様もおもろいな。
裄丈もよう合うたある。
これなんぼや?』ってな事言うてみいお前。
向こうは足元見よるがな。
15円と言おうと思ててもやなそこ16円17円とちょっと高う言いよるわ。
そこをやな『どうも具合悪いねえ。
ここらこれ染みがあんのと違うか。
裏の模様はもうひとつやしな。
え〜まあ裄丈も合うてないやろうけれどもなあ。
まあいずれは仕立て直しはせんならんやろうけれどもまあ安けりゃ買うとこか』と。
次にこの『安けりゃ』っちゅうやつをボ〜ンとかましとくねん。
初めの『ついで』っちゅうのも効いとるやろな。
向こうはどう思いよる?『こらうかうかしてたら買いよらんかも分からんな』ってなもんでんな。
15円と言おうと思ててもそこ14円13円。
ちょっと遠慮して言いよるがな。
まあ13円なら13円で話がつくとせんかい。
でいざ銭を払う段になって初めて気が付いたような顔をして『あっこら紋が違うがな。
紋代にもう一円引いといて』とこない言うてみい。
これで上下5円から開きが出てくるやろ。
こういうところを指して『買い物上手買い物天狗』てな事が言うてあるねん。
分かったか?」。
「はあ…」。
「分かったか?」。
「はあ…。
つまり何やねえ。
縞柄がぼやけてて裏の模様がもうひとつでえ〜紋が違うて5円やね」。
「お前分かってんのかいな。
お前はほんまに頼りない男やで。
ほんまにもう。
まあまあ言うてるうちに瀬戸物町やって来た。
これ軒並みず〜っと同商売や。
どこへ入っても構へんねんけどもなとにかく商人っちゅうのは足元見よるさかいな足元見られんように気を付けや。
ほなここの店入ろか。
邪魔するで」。
「お越しやすお越しやす。
どうぞお越し。
ちょっと座布団持ってきなはれ」。
「いやいやいや。
そない大層にしてもらうほどの買いもんやないねやがな。
ちょっとな水つぼ見してもらおうと思て」。
「へえ水つぼ。
こちらでございます。
前に並んでおりますのが1荷入り。
後ろに並んでおりますのが2荷入りという事になっておりましてな」。
「あ〜そうかそうか。
いやいやいやあのなわいの買いもんと違うねん。
ちょっと待ってや。
おい入ってこいお前。
何してんやお前その入り口で。
裾が引きずっとるやないかい。
何してんやつくぼって」。
「足元見られんようにして…」。
「言うと思うたわほんまにもう。
しょうもない事ばっかり言いやがってお前は。
誰がそんな足元見るかい。
こっち入ってこい。
こっち入ってこい。
どないや?どないやこのつぼ」。
「ハッハハ〜なってない」。
「偉そうに言わんでもええがな。
どないなってない?」。
「どないなってないってこれ縞柄がぼやけてる…」。
「これこれ…。
つぼに縞柄ない。
つぼに縞柄ない」。
「裏の模様が…」。
「裏の模様あらへんっちゅうねん」。
「紋が違う」。
「どアホ!そっち行けアホ。
どこぞの世界に紋付きのつぼってなもんがあるかアホ。
表へ出えこら。
ドブはまれ!入ってくるな!」。
「すいません。
何やもめ事が起こったようでございますけどどうぞ穏やかにひとつお願い致します」。
「いやいや穏やかにという訳やないけれどもな今我々のこの会話をお前聞いてたやろ?今。
こいつはねこういうアホやねんこの男は。
せやからここの嫁はんからねわしは頼まれてきてんねん。
一緒に買いについていってやってくれっちゅうて。
せやさかいなゴチャゴチャなし。
おかずの多いのん大嫌いやねんな。
せやからもうあっさりいこう。
この1荷入りのつぼこれこれなんぼにしてくれる?これなんぼにしてくれる?」。
「へえまあなんぼかんぼと申されましてもな見てのとおりこのままず〜っと同商売でございます。
朝商いのこってございますしあんさん方の事でございますで決して高い事は申さしまへんのでございます。
おまけ致しましてえ〜…値切りましてもう本当にまあまあど〜んと働いたところが3円50銭が一文もまかりまへんので」。
「なるほどな。
ほな軒並みず〜っと同商売やのうてやな朝商いのこっちゃのうてあんさん方の事やのうて勉強せんとおまけせんとど〜んと働かなんだらなんぼになんねん?」。
「え〜…あっそれがね何でございますあの…3円50銭」。
「おんなじこっちゃないかい。
せやから初めから言うてるやろお前。
なあ。
商人は口がうまいねん。
何やそないしてまくしたてられたら安うなったような気になるっちゅうねんな。
そやさかい今も言うたろ。
言う節や。
ここの嫁はんからなわしは頼まれて来てんねん。
まんだらお前言い値でも買われへんやない。
ちょっとわしのなわしの顔立てて3円50銭のその50銭ちょっとこっちやってもて3円ちょうどという事…。
あ〜つらいつらいつらいつらいつらいつらい。
つらいの分かる。
つらいの分かる。
つらいの分かる。
なにもむちゃな事言うてる訳やないがな。
3円50銭の50銭取って…。
3円引いてくれ言うてんのと違うがな。
そうやろ?50銭だけちょっとちょっと。
いやまあつらい…。
あのな商人というものはな損して得取れちゅう事があんねん。
そやろ?これ3円ちょうどっちゅう事にしといてくれてみいな。
帰ってここの嫁はんに言うがな。
向こうの瀬戸物屋へ無理聞いてもうたんや。
これからよそで瀬戸物買いなや。
ここで嫁はんに言うがな。
ここの嫁はんここにほくろがあんねやがなここにほくろが。
ようしゃべりよんで。
近所でもスズメのおまつっちゅうて2つ名前が付いてはんねがな。
ペラペラペラペラお前とこの評判よう言いよるがな。
後からお客さんがどんどんどんどん増えるってなもんや。
後々っちゅう事があるがな。
3円ちょうどっちゅう事でな。
頼むわ。
な!」。
「かないまへんなほんまにもう。
え〜?そないまで言われたらおまけせん訳にいきまへんな」。
「3円ちょうどっちゅう事にしといてくれるか?」。
「そこをなんとか…」。
「お前も往生際が悪いがな。
あのな見てくれお前。
天秤棒まで持ってきてんねん。
なにも運んでもらおうなんて思てへんで。
差し担いして担げて帰るねやが。
お前とこ仲仕賃だけでも助かんのと違うか?」。
「分かりました。
そこまで言うてくれはりまんのやったら3円ちょうどっちゅう事にさして頂きます」。
「分かった分かった。
どうもおおきにありがとう。
ほなな今も言う節やこれなちょっとこう担げて帰りたいんでな荷造りだけ頼むわ」。
「へえ荷造り。
ええ。
定吉とんこの1荷入りな荷造りだけ頼むわ。
はいはいはい」。
「でなんぼや。
3円やな。
おいおいおいおいおいおい」。
「へ…へ?」。
「『へ?』やないがな。
3円出しい。
3円出しいっちゅうねん」。
「ほんまにもう!アホやとかボケやとかさんざんぼろくそに言われてほんまに。
でやっぱりわしが銭払うねん」。
「当たり前やないかいお前。
お前の買いもんに来とんのやないか。
お前が払わなんだら誰が払うねん。
ほなここに3円置いとくさかいな」。
「へえどうもおおきに。
ありがとうさんでございました。
どうぞ後々よろしゅうにお願い致します」。
「分かった分かった。
さあ肩入れ肩入れ」。
「あっ…あっあっこれあかん。
これあかん」。
「分かってる分かってる。
表へ出え表へ出え」。
「いやこれあかんがな。
嬶な2荷入りの大きい方を買うてこい言うてんねん。
これ小さい1荷入りやがな。
こんなん買うていったらまた怒られる」。
「分かってるっちゅうねん。
表へ出えっちゅうのやがな。
表へ出たら2荷入りに変わんねん」。
「え?このつぼ表出たら2荷入りに変わんの?風当たったら膨れるか?」。
「アホな事言うてんやないがな。
さあさあさあさあ左行け左。
ぐるっと左行け。
もういっぺんぐるっと回れ回れ」。
「そんな事したら元の瀬戸物屋へ帰ってきた」。
「それでええそれでええ。
さあさあ下ろせ下ろせ」。
「瀬戸物屋の」。
「ああ何ぞお忘れもんでも?」。
「おっ『お忘れもんでも?』ちゅうとこを見るとまだ顔覚えててくれたな」。
「そんなアホな事言いなはんな。
今つぼ買うてもうたとこでっしゃないか」。
「いや忘れてもうてたらどないしようかいなと思とったんや。
実を言うとな今そこまで行ってんそこまで。
これ担げて行ったんや。
ほなそこまで行って行ってそこまで行ってやでこの男がまたほんまは2荷入りの大きい方のつぼが欲しかったんやてこんな事言いよんねんそこまで行ってから。
それやったら初めから言うときゃええやろ?」。
「わいは初めから…」。
「黙ってやがれ。
いらん事言うなアホ。
そやさかいな2荷入りのつぼに買い替えたいと思うんやけどどないやろな」。
「ええそれは結構でございます。
2荷入りは後ろの方に並んどります」。
「で値段はどない事になってんで?」。
「ええお値段の方は1荷入りのちょうど倍という事になっておりますんでな1荷入りが3円50銭でございますので2荷入りは7円という…。
ああ…あっその1荷入りそれ3円でお願いしたんでんな。
ほんなら倍の6円。
あんた買いもんうまいなあ。
ほんな事したらあんた1円からおまけせなあきまへん」。
「それならそれでええがな。
倍なら倍って勘定がしやすいねん。
6円ちょうどっちゅう事にしといて」。
「いやいやそらあきまへん。
そらあきまへん。
これはねこれはあんた1円も引ける品もんやございまへん。
こら堪忍しておくんなはれ」。
「そんな事言うな。
なにもたくらんでした訳やないやないかいお前。
たまたまこうなったんやないかい。
な?6円にしといてくれたら…」。
「いやいやこれ…奥へ聞こえたら怒られますんでな。
すんまへんすんまへん。
ちょっと30銭だけ…30銭だけちょっとつけさしてもらう訳にいきまへんやろ?」。
「な?せやさかいそこらが商売が下手やっちゅうねん。
あっさり6円ちょうどっちゅう事にしといてくれてみい。
うわ〜粋な商人やな。
爽やかな商人やな。
ここの家へ帰ってここの嫁はんだけやないでうちの嫁はんにも言うがな。
うちの嫁はんここにほくろ2つもあんのやで。
こら言い倒しよんで。
お前とこの評判のええとこ。
こらよそへ行きなやって。
ドワ〜ッと。
明日から団体でど〜んど〜んど〜ん買いに来るよ。
それを僅か30銭だけ…。
うわ〜汚い商人やな。
せこい商人やな。
これが言うてごらんこれ。
こらもうお前とこの評判ガタガタガタガタガタガタ〜だ。
誰も買いに来んようになってしまうよ。
こんな小さい子どもでもどっちが得か分かるやないかい。
6円ちょうどっちゅう事にしといてえな。
な?な?な!」。
「かかか…かなわんなほんまに。
こんなして押して言われたらほんま…。
あ〜あんたみたいな人知りまへんわほんまにもう。
これねほんまにね1円から引ける品もんやおまへんのでどうぞないしょにしといとくなはれや。
ほんであの後々お願い致しますよ」。
「分かってる分かってる。
ちゃんと言うとく。
これもちょっと荷造りだけ頼むわ」。
「へえ分かりました。
定吉とんこの2荷入りやちょっとまた荷造りだけ頼むわ」。
「でさあそこでや。
この1荷入りのつぼやけどな今そこまで持ってったんやそこまで持ってったんや。
ほんで帰ってきたんや。
でこのつぼ何も要らんようになったんやけどこれなんぼかで下に取ってもらう訳にいかんかいな。
下取りをしてもらう訳にいかんかいな。
ちょっとぐらいの損やったらさしてもうても構へんねんけどな」。
「あんたこそそんな嫌らしい事言いなはんないな。
そこまで持っていきはっただけでっしゃないかいな。
傷さえなかったら元の3円で引き取らしてもらいますがな」。
「そうか。
そら話が分かるがな。
そうか。
先に現金で3円払うたんな」。
「へえ。
これ直さんとここに置いてありますねん」。
「でこの1荷入りのつぼな3円で下に取ってくれんのやな」。
「へえへえさいでございます」。
「ほなそのつぼの3円とこの現金の3円都合6円でこの2荷入りのつぼもうていってもええな」。
「そういう事になりますかな。
どうぞどうぞお持ち帰りを」。
「邪魔したな。
さあ肩入れ肩入れ」。
「プ〜!なるほどこういくか」。
「ゲラゲラ笑いなゲラゲラ笑いな。
早い事行け早い事行け」。
「さすがにあんたは買いもんがうまい」。
「ゲラゲラ笑いなっちゅうてんねん。
早い事行け。
早い事行けっちゅうねん」。
「お客さ〜ん!ちょっとすいまへん。
いっぺん戻ってきてもらえまへんか?何やちょっと勘定がややこしいように思いますねんけど。
ちょっとすいまへんけど戻ってきてもらえまへんやろか」。
「見てみいアホ。
お前がゲラゲラゲラゲラ笑うもんやさかい感づきよったやないかい。
戻ったれ戻ったれ。
何や?」。
「あのねちょっと勘定がややこしいように思います」。
「いかんなあその勘定がややこしいっちゅうのは。
どないややこしい?」。
「『どないややこしい?』てねその2荷入りのつぼねそれ6円でんねん」。
「6円やろ?分かっとるで」。
「あの…3円よりないんです」。
「3円やろ?現金で3円渡してるやろ」。
「直さんと置いてあります」。
「そうやろ。
でそこまで持っていった1荷入りのつぼをやねお前それ3円で下に取る言うたのと違うんか?」。
「え?1荷入りの…。
あっこれがおましたんやな。
これの事をねころっと忘れとりましたんで。
えらいお手を止めましてすまんこってございました」。
「分かったらそれでええ。
さあ肩入れ肩入れ」。
「ブ〜!まだ気が付かん」。
「ゲラゲラ笑いな。
ゲラゲラ笑いなっちゅうの。
早い事行けって」。
「そうかてわいでも分かってんのに商人が気が付かん」。
「ゲラゲラ笑いなっちゅうてるやろ」。
「お客さ〜ん!すいません。
もういっぺん戻ってきてもらえまっか?やっぱり何やちょっと勘定がややこしいように思いますねん」。
「見てみいアホ。
お前がゲラゲラゲラゲラ笑うさかいに向こう何や分からんけどおかしいなと思いよるんやないかい。
戻ったれ戻ったれ」。
「今日中にいねるか?」。
「いねるわアホ。
こら!世間の米食う虫がぎょうさん見とんのやぞ。
人がつぼ担げて表へ出るなり勘定が合わんの銭が足らんの。
まるでわしらがつぼ担げて逃げてるみたいやないかいアホ」。
「いやいや怒ってもうたら困りまんねん。
それねあのその6円でんねんそのつぼ」。
「分かってるわ6円は!何べん同じ事抜かすねん」。
「え…その…銭が3円しかないんで…」。
「分からんやっちゃな。
そろばん持てそろばん。
そろばん持てっちゅうねん」。
「これぐらいの勘定にそろばんは要らんと…」。
「そのぐらいの勘定ができへんのやないかい。
そろばん持て」。
「持て言うて持たん事おまへんけど」。
「ほなその先にな銭3円渡してるやろ」。
「これここに置いてあります」。
「そう。
ほな3円入れんかい」。
「まあ3円ありますがね。
入れました」。
「この1荷入りのつぼをやな3円で下に取んのやな」。
「へえ取らしてもらいます」。
「ほなつぼの3円入れんかい」。
「ここがちょっとややこしいように思います」。
「何がややこしいのやお前は。
ややこしい事あらへんがな。
お前なちょっとな惑わされたらあかんよ。
よう考えや。
これつぼの格好してるさかいにおかしいと思てるんちゃうか?これお前客が来たら3円とか3円50銭で売るんやろ?ここのつぼがあるという事はここに3円があるっちゅう事やないか。
これ3円やないかい」。
「そうですなあ。
ねえつぼがあんねやさかいに…え〜…」。
「なんぼになった?」。
「え〜6円ですけどね」。
「ほなこの2荷入りもうていってもええな」。
「え〜ちょちょちょ…あのねええ事ないように思います。
ちょっとね何でもない事やろと思いますんでちょっとちょっと考えますんでちょっと待っとくれやっしゃ。
まずこの銭の3円はこれ確かに加えてね。
でこのつぼの3円つぼの3円…このつぼというものが一体どういうつぼやったっちゅう事をまず…。
向こう行ってこう…これを入れると6円。
何でございます?え?カンテキですか?それね三河もんになってまして今朝荷が着いたとこで。
え?あもうええもんでございます。
お値段?お値段は2円50銭でんねん。
一文もまかりまへんねん。
どこで聞いてもうても一緒でございますんでえらいすいまへんな。
やいやい言いなはんな。
今やりますさかい。
このこのこのこの3円とここのつぼつぼ…。
ちょっと大きい方のそろばんと替えてくれるか?目がチカチカしていかんこれな。
え〜この…。
まず銭の3円があってこのつぼ…このつぼがどういう素性のつぼやったかっちゅう事をまず考えなあかんねんからこのつぼを入れると6円になるんやけれども…。
え?何です?そのカンテキね。
へえへえ。
それ見た分かってる。
うんうん。
値段は今も言いましたようにどないもできまへんのや。
ええ。
2円50銭ちゅう事でお願いします。
えらいすいまへん。
カンテキが2円50銭で…。
8円50銭!今日カンテキ売りまへんもう。
帰っておくんなはれもう。
大戸閉めえ大戸閉めえ。
この勘定の決着つくまで店休みやさかいにあんた帰っておくんなはれ帰っておくんなはれ。
ほんでな母屋行って旦さん呼んできてんか。
店で番頭一人で扱いかねてる事件が起こってるっちゅうて行ってこいほんまにもう。
最前からもう脈早うなってきとんねやほんまに。
この銭の3円があってこのつぼがこのつぼ…このつぼが…入ったらこれ…。
何でこないになんねやろなほんまに」。
「こら!いつまで待たすんじゃ己は!3円と3円が6円ぐらいの事が分からんのか!」。
「ポンポンポンポン言いなはんなあんた。
私も最前から一生懸命汗かいてやってますやないかい。
何でもない事やろと思うんやけど頭こんがらがって訳分からんようになってまんねやがな。
おい神戸の親へ電報打ってくれ。
今晩辺り危ないっちゅうて。
脈早うなっとんねんほんまに。
銭の3円とこのつぼ…このつぼ…。
ああこのつぼ訳分からんようになりました。
もう持っていっておくれもうあんた」。
「ハハッそれがこっちの思うつぼやがな」。
(拍手)桂塩鯛さんの「つぼ算」でございました。
いかがでした?登場してきた徳さんの交渉術っていうんですかあれが面白かったですね。
あれ交渉術いいまんのかな。
いうんでしょうね。
そろばんをはじく辺りなんかもちょっとコミカルで面白かったです。
あのまねしたらあきまへんで。
そうですよね。
ほぼ捕まると私思います。
そうですね。
「上方落語の会」本日のところはこれにてお開きでございます。
さよなら。
2015/12/04(金) 15:15〜16:00
NHK総合1・神戸
上方落語の会▽「書割盗人」桂福丸、「つぼ算」桂塩鯛[字]

▽「書割盗人」桂福丸、「つぼ算」桂塩鯛 ▽第357回NHK上方落語の会(27年11月12日)から▽ゲスト:田中雅美▽ご案内:小佐田定雄(落語作家)

詳細情報
番組内容
第357回NHK上方落語の会から桂福丸の「書割盗人」と桂塩鯛の「つぼ算」をお届けする。▽書割盗人:家財道具がないので絵の上手な甚兵衛さんに壁に貼った白い紙に家財調度一式を描いてもらった男の部屋に泥棒が来て…。▽つぼ算・喜六に頼まれ壷を買いに行った源さんは一荷入りの壷を3円で買った後、店に戻り本当は二荷入りの壷がいると先ほど払った3円と下取りの3円とで6円の壷を買おうとするが…。▽ゲスト:田中雅美
出演者
【ゲスト】田中雅美,【案内】小佐田定雄,【出演】桂福丸,桂塩鯛
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落語
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漫才

ジャンル :
劇場/公演 – 落語・演芸
バラエティ – トークバラエティ
趣味/教育 – 音楽・美術・工芸

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