(ドアの開く音)
(佐藤良行)お入りください。
(月本幸子)杉下さ〜ん!お忙しい中ご苦労さんです。
佐藤です。
(杉下右京)杉下です。
(冠城亘)冠城です。
まあどうぞ。
どうして冠城さんまで?いや女将さんの柄受けって聞いたらじっとしてられなくて。
大した事じゃないんです。
住民から不審者と通報されて連行されるのは十分大した事だと思いますよ。
マンションの前をですね少なくとも10往復ですよ。
ゴミ置き場をのぞいたり駐輪場をのぞいたりもうあっちこっちウロウロウロウロ…。
ですからいいマンションだなあと思ってただ見てただけですよ。
何度言ったらわかるんですか!はいはい。
しかし不審者として連行するにしても警察署ではなく交番で済む話だと思いますがね。
ああまあそれは…。
私に前科があるからですよ。
…前科?そうでしょ?照会してみて前科がある事がわかった途端お巡りさん態度が変わったもの。
まあそれは警察官として自然な反応だと思いますけどね。
いやいやいやいや…ちょちょちょ…ちょっと!お…女将さんに前科?だから何か?いえいえ…。
(ため息)すでに罪は償っていますしだいいちプライベートな事を僕がお教えするというのは大いに躊躇するのですが話題が出た以上致し方ありませんねぇ…。
罪状は殺人未遂です。
さ…殺人?未遂です。
未遂…。
(ドアの開く音)あっすみません。
どうぞ。
結構です。
すみませんお待たせしました。
本当の事?気に入ったからあちこち見ていただけという理由には得心がいきませんねぇ。
だいいち場所が全く明後日の方向じゃありませんか。
さっきの刑事さんはそれで納得してくれたじゃないですか。
それは我々が柄受けに行ったからです。
曲がりなりにも警視庁本部の人間が身元引受人ですからね。
あなたは見かけによらず無鉄砲なところがありますからねぇ。
いささか心配です。
ミス・デンジャラス。
はい?いや…こっちの話です。
(月本)きっかけはこれなんです。
(月本)古着なんですけど…。
江戸小紋ですか。
呉服屋さんをのぞいたらお手頃価格であったので先週の水曜日に買いました。
もちろん丸洗いされててきれいな状態だったんですけど胴裏にほら頑固なシミがあって。
丸洗いだとシミが取れなかったりするんですよね。
まあ改めてシミ抜きに出してもよかったんですけどどうせなら自分で張り替えちゃおうかなと思って…。
えっ女将さん張り替え出来るんですか?お店をやるようになって着物を着だしてから興味が出て和裁を習ったりしたんです。
ちょっとした腕試しのつもりで張り替えようと思って胴裏を剥がしたんです。
そしたら…。
失礼。
口紅みたいです。
そのようですねぇ。
「幸子」?幸子って女将さんの下の名前も幸子ですよね?「さちこ」と読むのか「ゆきこ」なのかわかんないですけど同じ字です。
「いつかおまえがそうしたようにあたしもおまえを殺したい」「でもできないもどかしい」なんか不気味でしょう?わざわざ着物の裏に口紅で。
とにかく気になりだしたら夜も眠れなくなっちゃって。
で安眠のためにもここは真相を突き止めるしかない。
そう思ってこの着物の元の持ち主を突き止めて訪ねていったんです。
でも行ったのはいいんですけどなんて言って会えばいいのか名案が浮かばなくてそれでさまよってるうちにマンションの住人に通報されちゃって…。
いかが致しましょう?隊長。
隊長かどうかはともかく調べるほかありませんねぇ。
僕の安眠のためにも。
…だそうです。
最初っから相談すればよかった。
(講師)はいじゃあね帯揚げはきれいに4分の1に畳んで挟んで…。
(上條愛)はいきれいです。
遠藤さんは衣紋をもう少し抜いたほうがきれいに見えますよ。
では次田中さんお願いします。
ありがとうございました。
(愛)お疲れさまでした。
上條愛さんですね?はい?何か?この着物表参道の神楽屋さんに売ったのあなたですか?は…はい…。
なるほど着物を5枚処分した。
そのうちの1枚が…。
これです?
(愛)あの…私が売った着物がどうかしたんですか?ああ…裏地剥がしたらこんなものが。
調べたらこの幸子さんあなたのお姉さんですね?それも双子の。
ええ…。
どういう事でしょう?…どういう事って?その文章一種の恨み言のように読み取れます。
そして末尾の「幸子」を署名と考えれば幸子さんが書いたものとなる。
しかしそうなると奇妙ですねぇ。
「いつかおまえがそうしたようにあたしもおまえを殺したい」わかりますか?つまりこの文章の「あたし」は過去に「おまえ」なる人物に殺されていてその復讐をしたいとつづっているわけですよ。
まるで幸子さんは死んでしまっているようじゃありませんか。
幸子が書いたものだと思いますけどわかりません。
幸子さんはどういうつもりでこんな事を書いたのでしょうねぇ?意味不明です。
これって事件なんですか?警察ってこんな事で動くんですか?何しろ「殺したい」などと物騒な事が書いてありますからねぇ。
過敏に反応するのが警察官の悲しい性でしょうかねぇ。
あっそうだ。
幸子さんどんな仕事なさってるんですか?クラブで働いてます。
ホステス?…兼マネジャーです。
なんてお店か教えてもらえます?ちょっと本人に確認したい事が。
赤坂のアルヘナ。
母のやってるお店です。
お母さんの名前絵美さんですね?ああそうだ。
正確を期すためにお店の名前と住所電話番号書いてもらえませんかね?まあそちらにしてみればこっちで勝手にいろいろと調べておきながら甘えるなって言いたいでしょうけどどうか寛大な心で。
お店ではなんていう名前?源氏名。
今日子です。
今日子…。
(上條絵美)ようこそいらっしゃいませ。
シノブちゃんヨウコちゃんここはいいわ。
(シノブ・ヨウコ)はい。
ごゆっくりどうぞ。
失礼致します。
たとえ調べ物でいらしたとしてもお勘定は頂きますよ。
愛さんが通報済みですね。
フフフ…。
2人組のご新規さんでいきなり今日子をご指名ですもの。
すぐわかりました。
愛がいろいろ言っていましたけどちっとも要領を得なくて…。
どういう事なんです?お母様ではなく幸子さんご本人とお話ししたいのですがね…。
ああ失敬。
ここでは今日子さんでしたね。
あいにく今日子はまだなんですよ。
そのうち来ると思うんですけど気まぐれな子でねぇ…。
(愛)いい加減出てきなさいよ!幸子!幸子ってば!幸子ったらいつもそう。
都合悪いと隠れて…。
(ため息)
(絵美)すみませんねお待たせしちゃって。
出直しますか?そうですねぇ。
そこらで腹ごしらえしてからまた来ましょう。
軽いものでしたらお出し出来ますよ。
なんなら出前も取れますし。
いやいやいや…!しがない公務員そんな贅沢なんか出来ません。
近所で安くて美味しい店知りません?中華でしたらいいとこありますけど。
いいですね!あっ正確を期すためにお店の名前と軽く地図なんか描いてもらえると助かるんですが。
目印なんかも入れて。
お勘定高くつきますよ。
サービスで。
フフフ!はいはい。
(上條吏玖)ブーン!ブーン!ブンブンブン!ブーン!ブーン!
(上條幸子)ちょっと待ってて。
(吏玖)うん!おはようございます。
おはようございまーす。
上條幸子さんですね?
(幸子)そうだよ。
どなた?恐らくお母様や愛さんからお耳に入っていると思いますが…。
ああ〜!ああああああ…。
ねえあの子送ってからでもいい?もちろん。
(幸子)本当は愛の役目なんだけど昨日店休んじゃったペナルティーで。
ええ待ちぼうけでした。
ごめんね。
弟さんの名前吏玖くんですね?なんでも調べるんだ警察って。
そこの通り出て右行くとすぐお茶出来るとこあるから待ってて。
お待たせ。
誰?彼氏。
2人も?悪い?ほら行こう。
遅れちゃう。
おっきいほうがイケメンだね。
(幸子)そうかな?私はメガネのほうがタイプだけど。
ポエム。
えっ?だからそれ。
これがポエム?ポエムだから意味は深く考えないで。
なんとなく思いついた事書いただけだから。
どういう意図で?意図って?いや…わざわざ愛さんの着物の裏に書いた理由。
その時愛とケンカしてむしゃくしゃしてたから。
愛さんと仲悪いんですか?そんな事ないよ。
普通だと思う。
だからそのポエムもしばらくしたら消そうかなと思ってたんだけどまた胴裏剥がして縫い直すの大変だしどうせ愛も気づかないしまあいいかこのままでと思って。
いやまさか売っちゃうと思わなかった。
ましてやこんな大事になるなんて。
まあいずれにしてもこれあなたが書いたという事で間違いないんですね?はい間違いありません。
じゃあここになんか書いてもらえませんかね?えっ?お得意のポエムでも。
実は誰が書いたのか特定しようと思ってお母さんと愛さんにも書いてもらったんです。
筆跡鑑定?あの手この手だね〜。
メガネさんは?はい?私になんか聞きたい事ある?ではお言葉に甘えてひとつだけ。
それはウイッグですか?えっ…わかる?いいえ。
とても自然なので全くわかりませんでしたが…。
よくお似合いですよ。
(杉下・幸子の笑い声)クソッ…カマかけられた!ハハハ…!とにかくこれはただのいたずら書きなんで大騒ぎしないで。
警察の出る幕じゃないよ。
(チャイム)
(幸子の声)「こんどデートしましょ」「あ、メガネさんの方ね」
(愛の声)「今日教室の帰りに刑事さんが来た」「私が売った着物の裏地を剥がしたら“いつかおまえがそうしたようにあたしもおまえを殺したい。
”って書いてあったって写真を見せられた」「あなたがそんなことしてたなんてビックリした」「あなたのとこにも刑事さんが来るからうまく言って」「お願いよ幸子。
ママを悲しませるだけだから」
(幸子の声)「12月1日火曜日」「朝吏玖を送りに出たら刑事が来た」「聞かれたからポエムと言ってごまかしたけど信じたかな?」「ちょっと不安…」
(講師)このたれの輪の中を帯締めが入ります。
(講師)しっかりと引き上げて…。
(米沢守)この方の筆跡で間違いないでしょう。
ちなみにこのメガネさんというのは杉下警部の事ですか?さちこ?ゆきこ?それともこうこ?こうこはないでしょ。
さちこでしょ。
年齢は?25。
うらやましい限りですな。
幸子といえば「花の里」の女将も確か幸子さんでしたね?それがどうかしましたか?僕は行きますよ。
え〜ちょちょちょ…ちょっとちょちょちょ…待ってください。
ちょっと待ってちょっと待ってちょちょちょちょ…。
(ドアの閉まる音)ちょっと聞きたいんですけども。
なんすか?女将さんと右京さんってデキてるんですかね?さあ…。
だってお店に通い詰めじゃないですか。
まあ僕はデキてると踏んでるんですけどね。
好きなだけ踏んだらよろしいんじゃないですか?相変わらず根に持つタイプですね。
餅をついたような性格だと言われてます。
あ〜!!ああ?フン!幸子さんの書いたもので間違いないようですし本人も内容に特段意味はないと言ってる以上この件はおひらきですかね。
ポエムですか…。
(月本)本当にもうすみませんでした。
変な事に巻き込んで。
少なくとも次回は警察沙汰になる前に相談してくださいね。
はい。
どうぞ。
(月本)双子といえば小学校の同級生に双子がいたんです。
男の子だったんですけどね。
学校側の配慮だと思うんですけどクラスが別々で。
(月本)でもね外見がそっくりなのをいい事に時々入れ替わってみんなを驚かせて喜んでました。
双子というのは少なからずそういう経験があるようですね。
愛さんと幸子さんも見分けがつかないぐらい似てますか?いえ。
外見は随分違いますね。
やっぱり大人にもなると双子もそうですよね。
髪形とか服装とかそれぞれですもんね。
じゃあね気をつけて行っておいで。
ねえ愛。
ジュンくん今度いつ来る?うーんいつかな?また呼んでよ。
じゃあいってきます。
いってらっしゃい。
(吏玖)おはよう。
(児童たち)おはよう!成りすまし?昨日我々が会ったのは幸子さんではなく愛さんだったんですか?我々は見た目が明らかに愛さんと違う事から幸子さんだと決めつけて声をかけましたがもしもですよ?あの時とっさに彼女が幸子さんを演じたのだとしたら…。
ふとそんな思いが頭をよぎりましてね。
考えてみたら女性ですからねぇその日の気分によって髪形や化粧を変えてもおかしくありませんからその違いだけで幸子さんだと決めつけたのは勇み足だったのではないかと…。
うん…。
なんで愛さんはそんな事したんですかね?我々の勘違いを利用してこれ以上の追及を逃れたというのはどうでしょうね?つまり追及されたくない事情がある?そのとおり。
(角田六郎)しかし筆跡を調べたんだろ?愛と幸子姉妹の筆跡は明らかに違っていた。
さっきそう言ったよね?ええ。
髪形や化粧口調ぐらいまでは変えられても筆跡までそう簡単に変えられません。
科学的検証を無視した暴論としか思えませんね。
そこを突かれると一言もありません。
しかしいったん疑問が湧くととにかく確かめずにはいられない性分なものですからねぇ。
まもなく結果が出ると思いますよ。
結果?
(米沢)おはようございます。
おおおはよう。
おはよう。
出ましたか?いやはや驚きました。
こちらへ。
えーっとこちらが愛さん。
(米沢)そしてこちらが幸子さんですが筆跡は明らかに別人ですが両者は同一人物でした。
えっ!?どういう事だ?指紋。
早朝に叩き起こされご依頼を受けて調べたところどちらの名刺からも同一の指紋しか検出されませんでした。
DNAまで同じである一卵性双生児。
すなわち双子といえども指紋だけは異なるはず。
つまりその2枚の名刺からは別々の指紋が検出されなければおかしい。
おっしゃるとおりです。
という事は…。
愛さんが幸子さんを演じていた?指紋からはそう考えざるを得ませんね。
いやいやいやいや…。
筆跡問題を忘れるなお前。
えっこれ…明らかに別人だって言ったよな?これを同一人物が書き分けたとなると相当な訓練が必要でしょうな。
一朝一夕で出来る芸当ではありません。
いずれにしてもまだ調べてみる必要がありそうですね。
確かに君の言うとおり現状最も手っ取り早い確認方法である事には同意しますが正直あまり得意ではないんですよ。
何情けない事言ってるんですか?理屈が通用しない。
時として意表をつく行動に出る。
苦手です。
同じ生き物とは思えません。
(吏玖)ねえねえ俺ん家にゲームあるからさ来て。
俺も行く。
俺も!
(一同)じゃあね!あっ来ましたよ。
やあ。
どうも。
おお。
ちょっとちょっとちょっと…。
だから言わんこっちゃない。
あれ?あれ?
(吏玖)わっ!うわっ。
フフ〜ンビックリした?ああビックリした。
鬼ごっこする?また今度。
チェッつまんねえの。
吏玖くんだよね?違うよ。
ええ?嘘〜!ちょっと話したいんですけども…。
嫌だよ〜。
ちょちょちょ…ちょっとぐらいいいんじゃないの?ダメ〜。
君!お腹すいてませんか?えっ?一種の利益誘導ですよ。
これが取り調べなら供述は採用されない恐れがあります。
あのさお姉さんの事聞きたいんだけど…。
幸子はメガネのほうが好きだって。
えっ!?言ってたよ幸子。
昨日の朝君を送っていたのは幸子さんですか?うん。
愛さんじゃないの?あれは幸子だよ。
もう帰るね。
うん?道草してるとママに叱られるから。
あっちょっと吏玖吏玖吏玖?ダメ〜。
ジュンくん来るかもしれないし。
ジュンくんって誰?お友達?おっちょっと…。
まさか弟が姉2人の見分けつかないなんて事ありませんよね?ええ。
じゃあならば嘘ついてる?彼が嘘をつく理由は?愛さんにそう言えって言われたとか?我々が吏玖くんにアプローチする事を見越して愛さんが嘘を言うように言い含めたという事ですか?万が一用心のためにね。
まんざらあり得なくはないでしょう。
ええ。
指紋は同一人物筆跡は別人。
果たしてその正体は?なんかますます楽しくなってきましたね。
はい?いや嫌いじゃありませんよ。
こういうカオスな状態。
…って前見てますか?君意外と落ち着きがありませんね。
すみません。
おや。
(伊丹憲一)あっおかえりなさい。
頂いてます。
(芹沢慶二)頂いてます。
どうぞ。
お揃いで?そちらこそお揃いでどちらに?ダメでしょう。
ピカピカの1年生にちょっかい出しちゃ。
母親が激怒して警視庁に猛烈な抗議があったそうですよ。
そういう事でしたか。
あれ?それ言いに来たの?見張りです。
見張り?我々に見張ってろとおっしゃるんですか?
(中園照生)そうだ。
いや見張るったって…。
(内村完爾)杉下はどうなっても構わんが一緒にいる冠城亘に被害が及ぶと具合が悪い。
一応うちで預かってる形だからな。
無傷で返さないとまたややこしい事になる。
これ以上勝手な真似をしないようにしっかり見張っておけ。
いやそんな配慮いりません。
僕も好きでやってるんです。
何があっても自己責任です。
わかってますよ。
こっちも正直冠城さんが傷物になろうと関係ないですから。
ですが上からの命令従わないわけにはいかないもんで。
大人しくしててくださいね。
監視対象は主に冠城くんという事ですね?さすがの部長も警部殿にはさじを投げたんじゃありませんか?つまり僕が動く分にはあなた方もとやかく言わない?あっそれずるい。
仕方ありませんね。
僕はちょっと出かけます。
冠城くんをよろしく。
ちょちょちょ…ちょっと!根本的に冷酷な人なんですよ。
利己的だし。
一緒にいて割を食うのは冠城さんですよ。
出来た!どうです?この手作りの温もり。
ジャーン。
そんな事したら本当に特命係の人になっちゃいますよ。
(伊丹)まあご自由ですけど。
特命係になんか染まらないほうがよろしいかと思いますけど…。
コーヒー淹れましょうねコーヒー…。
(携帯電話)警部殿ですか?いや…もしもし?
(月本)伊丹刑事たちがまだご一緒でしたら女友達からの電話のように振る舞ってください。
花の里の月本です。
もしもし?杉下さんからの伝言です。
6時にロイヤルタワーホテルのラウンジで落ち合いたいそうです。
わかったすぐ行く。
じゃあな。
あの彼女なんですけども出ます?どうぞ。
(せき払い)もしもし。
はいもしもし?失礼しました。
代わります。
もしもし。
えっ今の?顔の長いおっさん。
じゃあね。
あのデートなんですけどもよかったらどうぞ。
クラブアルヘナに?ええ行ってください。
同じ頃僕は自宅を訪ねてみます。
我々が会った幸子さんは指紋の示すとおり実は愛さんだったのかあるいは吏玖くんが言うように紛れもなく幸子さんだったのか。
個別に会って確かめようとしても煙に巻かれそうな気がしましてね。
確かに同時刻2人と別々に会えばはっきりしますね。
ええ。
でもな…ママ入れてくれるかな?怒ってるんですよね。
ですから謝罪も兼ねて行ってください。
はい?では7時に決行です。
よろしくどうぞ。
出向中の俺が警視庁を代表して謝りましょう。
って聞いてないじゃないですかまったく…。
(チャイム)
(吏玖)「はい」こんばんは。
(吏玖)「誰?」メガネです。
わかりますか?うんわかるよ。
「愛さんいらっしゃいますかね?」いないよ。
いない?そうですか…。
お仕事はとっくに終わっているはずなんですがどこにいらっしゃるんでしょうね?今は幸子だからどこにいるか知らない。
「はい?」お帰りください!いや…ですからお詫びかたがた…。
結構です。
二度と私たち家族の前に現れないでください。
あっ幸子ちゃん幸子ちゃん。
ここでは今日子。
あんたは戻ってなさい。
あの…メガネの方が「よろしく」って…。
ただのポエムだって言ってるのに。
ねえ暇なの?あなたたち。
あっいや…。
帰ります。
はい。
ありがとうございます。
メガネ〜。
(吏玖)メガネ…?メガネ何やってるの?愛さんと幸子さん一緒に部屋を使っているようですねぇ。
ダメだよ勝手に入ったら。
おおこれは申し訳ない。
ねえねえ早く続き!はいはい。
(吏玖・杉下)321…。
ゴー!よーし!おっ。
フフフフ…。
ジュンくんともゲームをしたりするんですか?するよ。
学校のお友達ですか?違うよ。
親戚とか?ジュンくんの事は話さない。
ママに叱られるから。
そうですか。
(携帯電話)あっ…。
もう…。
重ね重ね申し訳ない。
(携帯電話)もしもし。
ママに追い出されました。
でも一応確認は取れました。
お店にいた幸子さんは間違いなく我々があの朝会った人物です。
あの時話した内容も通じましたから。
あっ。
そっちはどうです?いえ愛さんはここにはいませんでした。
じゃあどこに?恐らくお店の幸子さんは愛さんです。
いえ…正確に言えば愛さんですが今は幸子さんなんですよ。
(絵美)非常識にも程があるじゃないですか!こんな真夜中に…。
なんなんですか?一体。
多重人格。
えっ…?今はアメリカの診断基準に従って「解離性同一性障害」という名称が使われるようになってきているようですが「多重人格」と言ったほうが一般的にはわかりやすい。
そういう事だったんですね?愛さんと幸子さん指紋が一致したにもかかわらず筆跡が明らかに別人という単なる成りすましでは説明しづらい矛盾が多重人格という事であれば解消出来ます。
吏玖くんが別に嘘をついてたわけじゃないという事も…。
ええ。
あの時は間違いなく幸子さんだったから彼は正直にそう答えたんです。
幼い彼は交互に現れる愛さんと幸子さんをごく当たり前の事のように受け入れているのでしょう。
彼にとっては文字どおり物心ついた頃から2人の姉はそういう存在だったわけですからねぇ。
だから?そんなのプライベートな事じゃないですか。
ほっといてください。
お嬢さんの状態に我々はとやかく口を挟むつもりはありません。
しかし放ってはおけないんですよ。
双子の姉妹は今も戸籍上存在してます。
でも実は一人しかいない。
もう一人は実体がない。
今は幸子さんなんですね?例の着物の文章書かれているとおりあなたは殺されているんですよ。
過去に。
…幸子は眠りました。
愛さん?そうです。
演技じゃありませんよね?多重人格なんて信じないどうせお芝居だろうって人もたくさんいますが…。
ええ。
お芝居で二役を演じているだけならば部屋にこれほどの2人の生活感は表れませんよ。
我々は今幸子さんはもはやこの世にいないのではないかという話をしていたところです。
(愛)そうですか。
「いつかおまえがそうしたようにあたしもおまえを殺したい」この「おまえ」というのは愛さんあなたの事ですね?やめてって言ってるでしょう!!ママやめて。
ママは何も悪くないわ。
(絵美)愛…。
悪いのは愛だもん。
幸子に恨まれて当然だもん。
すなわちあなたが幸子さんを殺した。
そういう事ですね?はい。
違う!あれは事故なの!事故なのよ!ああ…。
(幸子)678910…。
(愛)プハッ…!ハア…ハア…。
短い!愛ったら弱虫!じゃあ幸子はもっと出来る?出来るもん!いい?いくよ!
(愛)12345678910…。
(愛)ママ来て!ママ!
(絵美)何?どうしたの?
(月本)溺れ死んじゃったんですか?幸子さん。
わずか5歳ですよ。
子供の無邪気な戯れが引き起こした痛ましい事故。
でもお母さんはどうして救急車を呼ばなかったんでしょうか?救急車で運ばれてもし蘇生しなかったらもう一人の娘は姉を殺した妹として生きていかなければならない。
そう考えた時もはや息をしてない娘の処置よりももう一人の同じ顔をした娘の将来を選んだそうです。
母親の絵美さんは幸子さんの遺体を毛布でくるみ車で10分ほど走った竹林の奥に埋めたそうです。
そして一夜明けると「幸子は遠い親戚のところへ行った」そう愛さんに告げたそうです。
もちろん愛さんはそんな事を信じません。
しかし絵美さんは「愛は悪い夢を見たんだ」と何度も言い聞かせました。
幼い愛さんにしてみれば母親の言い分を受け入れるしかなかったのでしょうねぇ。
ご近所の方は怪しまなかったんですか?急に幸子さんがいなくなって。
だから事故が起こってまもなく絵美さんは愛さんを連れて引っ越したんです。
田舎を捨てて他人には無関心な東京へ出てきた。
ところが引っ越してまもなく愛さんに異変が起こりました。
それが多重人格?ええ。
愛さんの中に幸子さんの人格が生まれて2人は交互に現れるようになったそうです。
母親の絵美さんが徹底していたのは交互に現れる愛さんと幸子さんをそれぞれの小学校に入学させた事です。
ええ?もちろん同じ学校ではバレるから別々の。
愛さんは学区内の小学校。
幸子さんは隣町の私立に通わせて…。
2人とも休みがちな生徒だったそうですよ。
当然ですねぇ。
2人は同時に存在出来ませんから。
片方が通学している時片方はおのずと欠席にならざるを得ません。
でそうやって綱渡りみたいな生活を続けてるうちに愛さんはある程度人格交代をコントロール出来るようになったそうです。
自由自在に愛さんにも幸子さんにもなれるって事ですか?頭の中である程度話し合いが出来るって言ってました。
とはいえ幸子さんの人格に交代している間の事は愛さんの記憶に残りませんし逆もまた同じですから2人は交換日記をつけて記憶を補い合っているそうです。
これを書いたのは幸子さんだけど本当の幸子さんは5歳の時にこの世を去っていてつまり愛さんの中で育った幸子さんの人格がこれを書いた。
お前を殺したいと言いつつもそれが不可能である事を嘆いている。
「でもできないもどかしい」という言葉がひどく哀れに思えてなりません。
差し支えなければその着物返してもらえないかって愛さんが言ってます。
ありがとうございます。
それとママと私はどんな罪に問われるんですか?あなたの犯した死亡事故は5歳の時ですからそもそも罪には問われません。
お母さんのした死体遺棄などはもちろんれっきとした犯罪ですがすでに時効です。
しかし幸子さんの死亡届を故意に出さず双子の姉妹が今なお存在するかのごとく世間を欺いているのは少なからず法に触れます。
これを機会に正しく届け出てください。
約束して頂けますね?わかりました。
余計なお世話かもしれませんが…。
あなたには治療が必要です。
そうですね。
でも今は折り合いがついているのでこのままでいます。
そうですか。
それじゃあ私はこれで。
いろいろとご迷惑をおかけしました。
ああ。
あとひとつだけ。
多重人格では別人格が2つ以上形成されるのが普通だそうです。
つまり主人格を含め3人以上の人格を持つ。
しかも成人した女性に幼い男の子の人格が出現するのも珍しくないようですねぇ。
吏玖くんのお友達にジュンくんという子がいるようですが学校のお友達でも親戚でもないそうです。
どこの子なんでしょう?気になっていましてねあなたならばご存じかと。
ジュンくんの事は話しません。
ママに叱られますから。
(吏玖)邪魔!邪魔!邪魔!邪魔!いけいけいけいけ…。
ああっ!ずるいぞ!もう一回やり直しだ。
ジュンくんのバカ!何するんだよ!バカって言うほうがバカなんだよ〜!そっちのほうがバカなんだ!バーカ!ワハハハ…バカ!なんだよ!バカ!バカバカバカバカ…。
おはようございます。
おはようございます。
ん?これ削りましたね?比べてみたら上下左右1.5ミリほど大きかったものですから。
ったくもう…。
手作りなんだからいいじゃないですか。
不統一は精神衛生上よくありません。
細かい事いちいち…。
僕の悪い癖。
あっ…じゃあ聞きますけど右京さんのほうが大きかったらご自分の削りましたか?もちろん。
もうそれ言われたら何も言えませんよ。
右京さん本当に変わってますね。
君に言われたくありませんね。
殺人予言だとか。
(箱崎咲良)紙の前に座ると神様がこう描けと教えてくれる。
普通なら漫画を描いた人が一番怪しいと思いますけどね。
箱崎咲良さんはどうして漫画で殺人を予言する事が出来たのでしょう?神は細部に宿る。
2015/12/02(水) 21:00〜21:54
ABCテレビ1
相棒 season 14 #7[字]
「キモノ綺譚」水谷豊×反町隆史
花の里の女将・幸子(鈴木杏樹)が再び事件を呼び寄せる!
着物の裏地に残された謎のメッセージをめぐり、美人双子姉妹に特命係が挑む!!
詳細情報
◇番組内容
第7話「キモノ綺譚」
花の里の女将・幸子(鈴木杏樹)が購入した古着の着物の裏地に、口紅で書かれた殺害予告ともとれる不可解な文章が見つかる。相談を受けた右京(水谷豊)と亘(反町隆史)は、早速持ち主の上條愛(西原亜希)を訪ねる。双子の姉である上條幸子が書いたと思われるが、理由は分からず…。直接、本人に確認しようと居場所を尋ねると、上條幸子は母と共にクラブのホステスとして勤めていることが分かる…。
◇出演者
水谷豊、反町隆史、鈴木杏樹
川原和久、山中崇史、山西惇、六角精児、片桐竜次、小野了
【ゲスト】西原亜希
◇スタッフ
【脚本】輿水泰弘
【監督】橋本一
◇音楽
池頼広
◇おしらせ
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【フェイスブック】http://www.facebook.com/AibouNow
【ウェブ】http://www.tv-asahi.co.jp/aibou/
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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日本語
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