東京都心の一等地に降り立った上海の会社経営者。
お目当ては1室2億円もする高級マンションです。
今、都心の不動産を目がけて中国の投資マネーが押し寄せています。
1000億円を超える大型買収も成立。
企業や個人の富裕層が安定した投資先として爆買いしているのです。
さらに今、投資移民と呼ばれる富裕層の存在が急浮上。
不動産取得を通して日本の永住権を獲得するのがねらいだといいます。
中国から流れ込む不動産投資マネー。
その実態に迫ります。
こんばんは。
「クローズアップ現代」です。
人口減少が始まり、すでに空き家の問題が表面化するなど住宅が余り始めている日本の不動産市場ですが今、海外からのマネーが押し寄せています。
外資系法人による不動産の取得額は去年過去最高の9800億円を記録。
これは国内すべての不動産取得額のおよそ2割を占める額です。
海外からの不動産投資マネーその多くが東京に向かっています。
そして不動産市場でこの1、2年の間に急速に存在感を高めているのが中国、香港、台湾の投資家です。
東京の商業地、住宅地の地価はそれぞれ2年連続上昇しています。
それでも海外の投資家から見て東京は、海外のほかの主要都市と比べて割安感がある加えて東京オリンピックの開催を控え東京の不動産価値は今後も上昇を続けるという期待感。
2つが相まって安定した投資先と捉えられていると見られています。
利回りがよい、あるいは値上がりが期待できるとして買われる日本の不動産。
市場にどんな影響を及ぼしているのでしょうか。
また投資マネーは逃げ足も早いといわれる中で長期的な視点で不動産投資を行う中国人投資家の存在も浮かび上がっています。
不動産市場で今、何が起きているのか。
実態からご覧ください。
不動産を購入するために日本を訪れた上海の会社経営者です。
仲介業者が紹介した物件の中で最も関心を示したのはこの商業ビルでした。
テナントからの賃料収入に加えビルの価格も近い将来値上がりすると見込んでいるようです。
物件を仲介した不動産業者です。
日本の会社ですがターゲットにしているのは中国、香港、台湾からの顧客です。
ことしに入ってから購入の問い合わせが急増。
月100件に上っています。
人気は1億円未満の都心のマンション。
その場で見て決める客が多いといいます。
中には、ビル1棟を丸ごと買う人もいます。
創業から6年。
売り上げは勢いよく伸び続けことし購入した客の数は150人。
売買金額も過去最高の40億円に達しました。
この動きをさらに加速させているのがネットを使った不動産取引です。
この業者では、物件情報を中国語サイトに公開。
客の8割は、一度も来日せずに購入するといいます。
上海の会社員に板橋区の3600万円の中古マンションが紹介されました。
男性が気に入ったのは6%近い、この物件の利回りです。
得られる賃料収入は1年で200万円を見込めるからです。
中国からの不動産投資が増え続けているのはなぜなのか。
日本への投資が中国本土で最も活発とされる上海です。
上海に暮らす銀行員の羅寧さんです。
自宅のほかに、投資目的に2つのマンションを持つ羅さん。
初めての海外投資先として東京のマンションを検討しています。
経済発展に伴い、大きく成長した中国の不動産市場。
上海では不動産価格はみるみる上昇。
この10年で3.3倍に高騰しました。
ところが近年の中国経済の変調を受け地方都市を中心に全国の不動産価格が下落し始めています。
上海の価格はまだなんとか持ちこたえていますがこの先どうなるか羅さんは不安を持っています。
新たな投資先を探す中目をつけたのが利回りが高い東京でした。
上海の平均1.9%に対し東京は3.6%。
東京の利回りはアジアの各都市に比べ高い水準を維持しています。
今、所有するマンションの1つを売却し新たな物件の購入費用に充てる計画を立てています。
上海のマンションより利回りのよい都心の物件を購入したほうがはるかに高い収益を得られると踏んだからです。
さらにもう一つ富裕層を不動産投資に走らせる不安要素が持ち上がっているといいます。
指摘するのは、中国で日本の不動産売買を行う仲介業者です。
それは、ことし8月に中国政府が行った人民元レートの引き下げに象徴されるといいます。
価格高騰が続いていた4年前にも政府は2軒以上の住宅購入を制限する規制を突然、導入しました。
当局の介入に翻弄される中国市場。
嫌気が差した富裕層が海外への不動産投資を加速させているといいます。
中国から日本に流れ込む不動産投資マネーを日本側はビジネスチャンスとして捉える動きも出ています。
世界各地に拠点を持つ不動産サービス会社の上海オフィス。
東京オフィスとのテレビ電話会議では売買の候補地として東京都心の一等地が挙げられていました。
購入の打診をしてきたのは複合施設の建設を計画する中国の大手デベロッパーでした。
この企業では投資マネーを呼び込むことで低迷してきた日本の不動産市場を活性化できると考えています。
今夜のゲストは、アジアをはじめ、国際的な不動産投資の実態にお詳しく、ご自身、不動産鑑定士の資格もお持ちになっていらっしゃいます、日本不動産研究所参事の愼明宏さんをお迎えしています。
熱いまなざしが日本の不動産に向けられているわけですけども、中国や台湾、香港の投資家、一体どれほどの規模で今、求めていると見たらいいんでしょうか?
具体的な投資金額については、統計データがないのが実情です。
ただ、現場サイドの感覚では、中国投資家の存在感というのは非常に増しています。
われわれ日本不動産研究所が実施した業界関係者へのアンケートでも、今後、存在感を増す外資プレーヤーとして、中国を挙げる方が圧倒的に多かったです。
今のリポートで、中国の本土のほうと比べると、日本の不動産の利回りがいい、あるいは今後の値上がりが期待できて、売却益も期待するという声もあって、これは投資のチャンスだという声があったんですけども、ただ、日本の場合ですと、今、空き家の問題が表面化していて、これから少子高齢化によって、本当にどれだけ不動産の実需があるんだろうかというような空気もある中で、投資をして損はしないんだろうか、本当にこれをチャンスだというふうに見てるんですか?
やっぱり円安によって、日本の不動産が割安に見えるという要因はあると思います。
それと、われわれ日本の関係者でいきますと、日本は長期の不動産価格の下落というのを経験していますので、なんかこう、不動産に対して、ちょっと恐れるような、そういった部分もあるんですけれども、中国の場合には、まだその不動産市場が民間で売買できるようになったのが、90年代の改革解放意向ですので、非常に歴史が浅いということと、それと不動産市場が、今も基本的には上がり続けていますので、中国一般国民にとって、不動産神話というのが今も続いているということです。
ですので、中国の人からすると、日本と比べると、不動産投資について、若干、軽く見ている、そういった傾向はあると思います。
実際、物件を見ずに購入される方も多いということなんですけれども、基本的には、東京オリンピックを好材料に見ている傾向があるということですけども、そうしますと、転売を考えて、東京オリンピックが一つの境になるんですか?
そうですね。
不動産投資を考えた場合に、不動産を売却することによって出口を迎える、それは一つの投資のセオリーなんですけれども、中国投資家の多くは、一つの東京オリンピックまで、価格は上がるであろうと、そういったことを見込んでいる方は多いと思います。
そうすると、短期的な投資という見方もできるかと思うんですけども、買われてるのは都市部だけですか?
基本的には東京都心部が人気があるんですけども、最近では大阪とか京都、こういった所の都心の商業地においても、中国マネーなどの外資というのが参入しています。
それと沖縄とかですね、北海道などのリゾート地においても、中国マネーなど、投資資金が向かっているというふうに思います。
こういう場所は買われてほしくないという所もあるかと思うんですけれども、きちっと全体像を把握する仕組みっていうのはあるんでしょうか?
残念ながら、日本の場合は、そういった仕組みはまだないという形です。
確かに地方の自治体の条例によって、ある程度の枠組み、網掛けはしてるんですけども、そんなに規制が厳しいというわけではありません。
ですので、当然、経済合理性に基づいて、活動されるべき商業地とか、市街地においては、国際化というのはどんどんやるべきだと思うんですけども、例えば天然資源だとか、水資源だとか、そういったものに関しては、ある程度の網かけというのは必要なんではないかなと思います。
そして、きちっと把握できる仕組みというのは、海外にはあるようですけども、日本にはないということ。
そうですね。
イギリスとかですと、不動産を購入したときには、その価格を登録しなければならないという形になりまして、それをデータベース化することによって、誰が、どういった不動産を買っているのかというのは、管理できるんですけども、日本においては、まだそのようなシステムはまだないというような形です。
なるほど。
さあ、投資目的にとどまらない不動産取得の新たな動きを次にご覧ください。
中国で過熱する不動産投資。
その背景に投資移民と呼ばれる富裕層の存在があります。
海外の不動産などへの投資を通じてその国の永住権を手に入れ移り住もうとする人たちです。
その数は増え続け海外不動産の説明会会場も大いににぎわっていました。
アメリカでは50万ドル以上の投資をすると永住権が付与されます。
しかし今、継続を巡り議論が続いています。
カナダにも同様の制度がありましたが去年、連邦政府が制度の運用を取りやめました。
移民先の新たな選択先として注目されているのが、日本です。
しかし、投資移民の制度が存在しない日本。
不動産の購入を通じて永住権を獲得しようとしている人に出会うことができました。
群馬県に暮らす香港出身の何敏玲さんです。
手始めにこの11月在留資格の一つ経営・管理ビザを取得しました。
何さんは3年前に購入した自宅の敷地内にアクセサリー加工の会社を設立。
それとともに埼玉にアパート1棟を購入。
そこから得られる賃料収入を会社の事業にしました。
何さんが会社の経営を軌道に乗せ経営・管理ビザを10年間更新し続けることができれば日本の永住権を申請できるのです。
不動産取得をきっかけに日本に移り住もうとする人の中には中国ならではの事情を抱える人もいます。
上海で会社を経営する祖雄武さんです。
家族で日本への移住を検討しています。
福建省から上海に出て成功した祖さん。
しかし戸籍上は農村戸籍のままです。
中国では都市戸籍と農村戸籍があり農村戸籍のまま都市部に暮らす人が1億人を超えています。
手厚い行政サービスを得られる都市戸籍を取得するには学歴、納税額などさまざまな条件をクリアする必要があります。
その条件に届かず都市戸籍を持てない祖さん。
そのため、中学2年生の息子が上海の高校を受験できないことが一番の気がかりです。
そこで祖さんは、ことし9月東京都内でマンション1室を購入しました。
このマンションを拠点に自分は仕事を立ち上げ経営・管理ビザを取得し息子を日本の高校に通わせられないか模索しています。
永住権目的の人も含め経営・管理ビザを取得した中国人は7000人余りに上ると見られます。
この仲介業者には、問い合わせが数多く寄せられています。
移住を目的にした不動産取得ということも見えてきたわけですけども、今、中国からは、富裕層が、海外に流出するという動きが活発になっているということでしょうか?
そうですね、先ほどのVTRにもありましたように、医療保障とか、それと子どもの留学、こういった教育面、こういったものを重視して、海外に移民を考えている、こういった中国の投資家は多いと思います。
また最近では、中国の大気汚染を嫌って、環境面を重視して、海外に移り住もうという方もいらっしゃいます。
一方で、受け入れる側としては、例えば、アメリカやカナダ、オーストラリアもそうだと伺うんですけれども、かなりの額を不動産に投資すると永住権がもらえると、それはどういうねらいがあるんですか?
これは地域経済の活性化と、地域の雇用促進というのが、実は一番の大きなコンセプトなわけです。
ですので、例えばその一定のプロジェクトに対して投資を行えば、確かに永住権は取れるんですけども、その対象となる事業が実はその地域の雇用促進や、地域経済の活性化にどれだけ寄与するのかというのを、そこの審査が非常に厳しい、そういった制度になっています。
厳選された不動産にしか投資できないということになるわけですね。
そうですね。
日本の場合ですけども、経営・管理ビザ、取得するのは、そのハードルというのは、どれぐらいの高さなんでしょうか?
先ほど申し上げたような、アメリカやそういったオーストラリアの投資移民制度の設定金額からすれば、非常に割安な部分がありますので、今後、こういった経営・管理ビザを目的にした、中国の投資家の方というのは、減ることはないと思いますね。
こうやって海外からの投資が日本の不動産に向けて入ってくる。
持っていらっしゃる方は、資産価値が上がるということにもなりますけど、買おうと思ってた方にすると、手が届きにくくなるということも起きるかと思うんですけども、人口減少、目の前に今、すでに起きているということを踏まえながら、われわれはこうした投機の目的の大半を占めると思うんですけれども、そうした目的のお金と、どのように向き合っていけばいいとお考えですか?
確かに、そういった海外投資移民に関しては、各国でも地域摩擦や価格の高騰という問題を引き起こしています。
ただ、大事なのは、多様な参加者が市場に参加して、それによって最終的には、不動産価格が安定するという、そういった面を重要視すべきだと思います。
その起こるかもしれない、地域の中での摩擦に対して、日本は対応っていうのは、行われているんでしょうか?
不動産市場の国際化というのは、国土交通省においても、非常に重要な問題だと取り組まれておりまして、単に海外からの投資を促進すると、それだけを検討するのではなくて、海外の投資が増えれば、どういった課題が増えるか、こういったことも議論されています。
その不動産投資の多様な参加者とおっしゃいましたけど、日本はこれまでそうではなかったということですね?
そうですね。
2015/12/02(水) 19:30〜19:56
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代「東京を買う中国マネー〜不動産爆買いと“投資移民”〜」[字]
都心の高級マンションにも及ぶ中国人の爆買い。投資目当てで利回りの良い物件を即買いする富裕層を追跡。隠された真のねらいと投資マネーに翻弄される不動産事情を伝える。
詳細情報
番組内容
【ゲスト】日本不動産研究所参事…愼明宏,【キャスター】国谷裕子
出演者
【ゲスト】日本不動産研究所参事…愼明宏,【キャスター】国谷裕子
ジャンル :
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
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