爆発があったとされるトイレ周辺には警視庁や消防隊員らが集まり騒然とするなか、現場検証などが行われていた=東京・靖国神社(鈴木健児撮影)

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 秋の収穫に感謝する大祭「新嘗祭(にいなめさい)」や七五三の祈●(=示へんに寿の旧字体)(きとう)のため、多くの参拝者でにぎわっていた東京・九段の靖国神社で23日、「爆発物」事件が起きた。

 現場のトイレは南門の脇に設置されており、本殿からも近い場所。「もし中に人がいたら…」「許せない」。連休最終日の厳かな空間に、恐怖と怒りが広がった。

 靖国神社近くの飲食店の女性店員(21)は午前10時ごろ、「ボン」という大きな音を聞いた。「煙が上がったり騒ぎになっている様子はなかったので、何かの行事かと思ったが、次々とサイレンの音が近付いてきたので不安になった」。

 発生直後、現場周辺はトイレから数十メートル離れた参道まで規制線が張られ、消防車や覆面パトカー、機動隊の大型車両も駆けつけ、物々しい雰囲気に包まれた。1時間ほどが経過すると、重装備の爆発物処理班や警察の警備犬も投入され、トイレ内や周辺の捜索が行われた。

 広島市から旅行で来ていた男性(78)は「もしトイレの中に人がいたり、仮に大きな爆発だったらどんな被害が出ていただろうか…」と不安を口にした。

 一方、けが人がなかったため神社側は「もう危険はない」と判断。新嘗祭は予定通り行われ、餅つき大会やお囃子など祭りの行事は行われたが、七五三の受付は中止となった。

 七五三のため家族で訪れていた千葉県浦安市の男性会社員(35)は、「娘の晴れの日にこういう事件があるのは悲しい。早く犯人が捕まってほしい」と言葉少なに語った。

 13日に同時多発テロがあったばかりのフランス・パリから日本に来ている旅行客も、事件に遭遇した。フランス人男性(68)は「世界中でこういう事件が起こるのはとても恐ろしいこと。平和な世の中になってほしい」と話した。

 爆発音があったトイレは、「靖国の桜」として知られる桜が並ぶ一角。木には「神風特別攻撃隊」や陸海軍の部隊名を記した札が掲げられ、部隊の生存者らが神社に奉納したことなどが書かれている。

 埼玉県川口市の男性(81)は「平和を祈る神社で爆発騒ぎがあっては、日本のために戦った兵隊さんに申し訳ない。許せないし、犯人は自ら名乗り出て行いを悔いてほしい」と憤った。