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その後の後

henlei

2015年7月20日 04:49

樹里庵さんの大鳳（illust/48419259）に影響されて勝手に続きの妄想を書いてしまいました。

c 筋肉娘

a a a

「うーん、そろそろ良い頃合いだろうか……」
　何度呟いたか分からない独り言を無意識の内に漏らしながら、提督は席を立った。

ある日突然上層部から任された海域。これをこなせば印象アップな上に新たな艦娘に出会えると意気込んではみたものの、現実はそう甘くはなかった。様々な理由から逼迫した資源をやりくりし漸く最終海域まで辿り着いたものの、これ以上の攻撃はほぼ不可能に近いほどの困窮ぶりだった。主に戦艦の損害は激しく、鋼材が不足していた。
供給を待っていれば確実に時間切れとなっていしまうこの状況だったが、先日提督らしからぬ天啓が降って湧いたのだった。
「ドラム缶……なんてどう？」
秘書艦である叢雲のこの一言で、今回の攻勢に一筋の光が差した。
ドラム缶の材質は鉄だ。大きさの割に薄っぺらだが、これまでに消費した燃料はかなりのものだ。空のドラム缶をスクラップにすれば、質は気になるが最後の出撃に必要な鋼材をギリギリ補填出来る量はある。勝ってしまえば諸々の資源が手に入るので、ここで失った鋼材など屁でもない。
迷っている暇は無かった。

「どうだ、足りそうか？」
ドラム缶を数えていた叢雲に尋ねる。上層部は勿論、誰かに知られれば間違いなく懲罰もののこの計画を知っているのは彼女だけだ。
「そうね……あと二つあれば何とか」
あと二つ。確かに必要数ちょうどを揃えた筈だったのだが足りないのは確かのようだ。しかしここは廃材置き場のすぐ近く、誰かが来るとは思えなかったが、今は犯人捜しどころではない。たった二つ、それが足りなくても出撃が出来ないのだ。改めてこの鎮守府の逼迫ぶりを思い知らされる。空とはいえ大量のドラム缶を一度に運ぶ叢雲の筋肉を凝視してみたい気もしたが、ここは抑え、最近かなり訓練を積んでいた大鳳の所へ向かう事にした。航空機用の燃料をかなり使っている可能性もある。

[newpage]

「入るぞ大鳳」
ノックをする時間さえ煩わしく、大鳳の部屋のかなり手前からそう叫び把手に手を掛けた。
「て、提督！？」
姿を捉える前に大鳳の慌てる声が聞こえた時には少しご褒美的な想像もしてしまったが、そう考えるや否やお目当ての物が視界に入り、その期待はかき消された。
ドラム缶……らしき金属片が床に転がっていたのだ。原型は留めていないが明らかに少女の部屋には似つかわしくないので何とかそう判断出来た。
「これは一体？」
ようやく視界に入った大鳳に提督が声を漏らす。少し赤らんでいた大鳳の顔は一瞬で青ざめてしまった。
「実はですね提督……」

「なるほど……」
提督が不躾に確認もせず部屋入ってきた事などまるで無かったかのように大鳳は淀みなく説明を始めた。
着任早々提督に期待され、それに応えるため最近様々なトレーニングを積み自らの力がどれだけ上がったのか試してみたかった大鳳は、廃材置き場のすぐ側に仕切りも無く置かれていたこのドラム缶を廃棄物だと思い少し拝借していたのだった。勿論後でスクラップになった山の中に返すつもりだったが、そうならない事までは予測出来ていなかったようだ。
「着任して日も浅かったのは分かるが、何かを個人的に扱う場合は申告してもらわないとな。まあ説明しなかった私にも非があるが、今回は不問としよう。君はいつも信頼しているからね。それとドラム缶の用途は内密に」
と偉そうな事を言ってみたものの、気まずい双方の間には沈黙が居座る。
「いや、寧ろこんな雑な扱いをしていた物で更に危ない橋を渡ろうとしているのだから、こちらの非が大きいか……すまなかった」
すると大鳳は驚いて顔を上げ首を振る。
「あ、いえ、誤らないでください提督！」
「いやいや、ちょうどスクラップにする予定だった。寧ろ助かったよ」
「そ、そうですか……？」
少し場が和みかけたところで切り出してみる。
「ところで、このドラム缶で一体何を？まあうちの艦娘のことだから、抱き潰したりしてるものかと思ったがどうもそんな感じには見えない。しかもそこまで出来るようなパワーが君にあったかな？」
今度は最初のようにまた顔を赤らめる大鳳。
「あの後自分なりに鍛えてみたんです。提督に信頼されていると分かってから」
提督は少し顎に手を当て思い返してみる。
「確かに最初に筋肉を見せてくれた時はかなり能力があるように感じられた。他の艦娘達と同様の訓練を受ける前から既にハンドボール並みの力瘤を持っていた気が……」
「ええ、装甲空母になるのは夢でしたから、かなりあの時から張り切っていました。未だに見た事はないでしょうけど、腹筋もかなり鍛えてはいるんですよ？」
正規空母達の胸当てのようなものを大鳳は腹部に巻いているが、よく見ると材質はかなり異なっている。大鳳に頼まれた特注品で、分厚い鋼板製だ。鍛えていない艦娘ならまず着用出来ないだろう。
「なるほど、そうらしいな。しかしあれだけ筋肉があったからといってこの壊しようは想像出来ないが」
すると大鳳はフフッと息を吐き、少し誇らしげに話し始めた。かわいい。
「でも、その限界を乗り越えるべく毎日頑張ったんです。つい一ヶ月くらい前でも、既にこれくらいは鍛えてたんです。ほら、見てください」
そう言って大鳳は袖を捲り右腕を伸ばし軽く力を込める。
同年代の少女らしく細かったその腕に一瞬物凄い数の血管が浮き上がったと思った瞬間、みるみる内に腕の筋肉は太さを増し、提督の脚の太さを超えるまでに膨らんだ。彼女の胴体並みの太さとなっており、細身な身体と不釣り合いに見える。余裕がある作りの袖口は既にいっぱいに伸びきっている。
「こ、これがあの時同じ君だとは信じられない。確かに才能があるとは思ったがここまでとは……」
「もうちょっとやってみましょうか」
提督の趣味を思い出した大鳳は張り詰めていた袖を下ろし、腕が完全に隠れるようにした。ピッタリと密着した袖に太い血管や筋肉の筋が幾つも浮かんでいるのがよく分かる。

[newpage]

「いきますよ？」
少し拳を強めに握りしめたかと思うと先ほどより急な速度で腕は太さを増した。鈍いボコッという音と共に袖が吹き飛んだ。あまりの勢いだったため、弾けた布は痛いほどの速さで提督の顔を掠めた。今や直径は30センチ近くあるだろうか。力を入れずだらりと下げている左腕も追従して膨張し、布が張り詰めている。気のせいか、上半身や脚も提督の体格を超えるほどの大きさに膨らんでいる気がした。
あまりの成長っぷりに声が出なくなっていた提督は、黙って頷き先を促す事しかできなかった。
「じゃあ、ここからですね」
そう言って大鳳は、蓋の外れたもう一つのドラム缶を持ち上げ、それを右腕に通した。腕はすっぽりと隠れてしまい肌が見えないのがもったいない。
「よし！」
そう言ってにこやかな表情をしたかと思うと、すぐに真面目な表情に戻り更に強い力を拳に込める。腕はまだ伸ばしたままだ。
ボコンッ、という爆発にも似た音と共に大鳳の腕も爆発的に盛り上がった。腕は見えなかったが、ドラム缶がその巨大な筋肉の塊と同じ形に膨れ上がったのでその凄まじさはよく分かった。音が筋肉と缶のどちらから出たのかは分からない。
ドラム缶の直径は大体60センチほどだ。それが変形までしているという事は既にその直径を超えている事になる、腕を伸ばしたままでだ。上半身は正規空母にも負けない程に膨らんだ大胸筋と、まるで壁のようにせり上がった首回りの筋肉に包まれていた。装甲で絞られた腰回りがそれをより強調する。
提督は少し眩暈がして座り込んでしまったが、大鳳は恍惚の表情をしており気に留めていない。
「ここからです……」
と一人で呟くと、大鳳は腕を曲げ始める。
既に彼女の頭ほどの大きさであった二頭筋がものすごい勢いで盛り上がり、ドラム缶を突き破った。まるで布のように破られたドラム缶は、最初に床で見たあの鉄くずのように引き裂かれていく。煙か何かのように抵抗もなく盛り上がっていくその筋肉はすぐに大鳳の頭の天辺を超え、大鳳が小上がりに立っていた為に低めの位置にあった天井を擦りかけた(後で確認した所、天井がへこんでいたがこれのせいなのかは分かっていない)
もう声どころか汗も出ずただ歓喜に飲まれ眺めていた提督は、辛うじてある所に気が付いた。
先ほどより膨張し顔に筋肉が触れている上半身を際立たせているその下、分厚い鋼板で出来ている装甲がゆっくりとだが膨らんでいたのだった。腕の凄まじい膨張の影響を受け腹筋もかなり膨らんでいたらしく、鋼板にクッキリとその形が浮かび上がっていた。それを確認した瞬間、装甲の金具が弾け飛び提督に直撃した。

そこから先はよく覚えていない。慌てて大鳳が駆け寄ってきて筋肉の装甲でまた吹き飛ばされたような記憶が残っている。気が付けば医務室だったので夢なのかも知れなかったが、勿論後々の調べで全て現実だと分かった。その時は驚異と歓喜で震えており、提督の記憶からは永遠に消えないものとなった。

事情をよく知らない叢雲から聞いた話によれば、何故かジャージ姿になった大鳳がドラム缶色の小さな鉄の塊ともう一つの鉄の塊を「提督に頼まれた」と言い持ってきたらしい。叢雲に問いただされた時はうっかり口を滑らせかけたが、なんとか自分の命令だと嘘を吐き通せた。

少し増えた鋼材のお陰もあり作戦は成功、叢雲に頼み込んで海域撃破の報酬をちょろまかしてドラム缶と謎の鋼材修理にまわしたのはまた別の日のお話。

「うーん、そろそろ良い頃合いだろうか……」
　何度呟いたか分からない独り言を無意識の内に漏らしながら、提督は席を立った。

ある日突然上層部から任された海域。これをこなせば印象アップな上に新たな艦娘に出会えると意気込んではみたものの、現実はそう甘くはなかった。様々な理由から逼迫した資源をやりくりし漸く最終海域まで辿り着いたものの、これ以上の攻撃はほぼ不可能に近いほどの困窮ぶりだった。主に戦艦の損害は激しく、鋼材が不足していた。
供給を待っていれば確実に時間切れとなっていしまうこの状況だったが、先日提督らしからぬ天啓が降って湧いたのだった。
「ドラム缶……なんてどう？」
秘書艦である叢雲のこの一言で、今回の攻勢に一筋の光が差した。
ドラム缶の材質は鉄だ。大きさの割に薄っぺらだが、これまでに消費した燃料はかなりのものだ。空のドラム缶をスクラップにすれば、質は気になるが最後の出撃に必要な鋼材をギリギリ補填出来る量はある。勝ってしまえば諸々の資源が手に入るので、ここで失った鋼材など屁でもない。
迷っている暇は無かった。

「どうだ、足りそうか？」
ドラム缶を数えていた叢雲に尋ねる。上層部は勿論、誰かに知られれば間違いなく懲罰もののこの計画を知っているのは彼女だけだ。
「そうね……あと二つあれば何とか」
あと二つ。確かに必要数ちょうどを揃えた筈だったのだが足りないのは確かのようだ。しかしここは廃材置き場のすぐ近く、誰かが来るとは思えなかったが、今は犯人捜しどころではない。たった二つ、それが足りなくても出撃が出来ないのだ。改めてこの鎮守府の逼迫ぶりを思い知らされる。空とはいえ大量のドラム缶を一度に運ぶ叢雲の筋肉を凝視してみたい気もしたが、ここは抑え、最近かなり訓練を積んでいた大鳳の所へ向かう事にした。航空機用の燃料をかなり使っている可能性もある。

[newpage]

「なるほど……」
提督が不躾に確認もせず部屋入ってきた事などまるで無かったかのように大鳳は淀みなく説明を始めた。
着任早々提督に期待され、それに応えるため最近様々なトレーニングを積み自らの力がどれだけ上がったのか試してみたかった大鳳は、廃材置き場のすぐ側に仕切りも無く置かれていたこのドラム缶を廃棄物だと思い少し拝借していたのだった。勿論後でスクラップになった山の中に返すつもりだったが、そうならない事までは予測出来ていなかったようだ。
「着任して日も浅かったのは分かるが、何かを個人的に扱う場合は申告してもらわないとな。まあ説明しなかった私にも非があるが、今回は不問としよう。君はいつも信頼しているからね。それとドラム缶の用途は内密に」
と偉そうな事を言ってみたものの、気まずい双方の間には沈黙が居座る。
「いや、寧ろこんな雑な扱いをしていた物で更に危ない橋を渡ろうとしているのだから、こちらの非が大きいか……すまなかった」
すると大鳳は驚いて顔を上げ首を振る。
「あ、いえ、誤らないでください提督！」
「いやいや、ちょうどスクラップにする予定だった。寧ろ助かったよ」
「そ、そうですか……？」
少し場が和みかけたところで切り出してみる。
「ところで、このドラム缶で一体何を？ まあうちの艦娘のことだから、抱き潰したりしてるものかと思ったがどうもそんな感じには見えない。しかもそこまで出来るようなパワーが君にあったかな？」
今度は最初のようにまた顔を赤らめる大鳳。
「あの後自分なりに鍛えてみたんです。提督に信頼されていると分かってから」
提督は少し顎に手を当て思い返してみる。
「確かに最初に筋肉を見せてくれた時はかなり能力があるように感じられた。他の艦娘達と同様の訓練を受ける前から既にハンドボール並みの力瘤を持っていた気が……」
「ええ、装甲空母になるのは夢でしたから、かなりあの時から張り切っていました。未だに見た事はないでしょうけど、腹筋もかなり鍛えてはいるんですよ？」
正規空母達の胸当てのようなものを大鳳は腹部に巻いているが、よく見ると材質はかなり異なっている。大鳳に頼まれた特注品で、分厚い鋼板製だ。鍛えていない艦娘ならまず着用出来ないだろう。
「なるほど、そうらしいな。しかしあれだけ筋肉があったからといってこの壊しようは想像出来ないが」
すると大鳳はフフッと息を吐き、少し誇らしげに話し始めた。かわいい。
「でも、その限界を乗り越えるべく毎日頑張ったんです。つい一ヶ月くらい前でも、既にこれくらいは鍛えてたんです。ほら、見てください」
そう言って大鳳は袖を捲り右腕を伸ばし軽く力を込める。
同年代の少女らしく細かったその腕に一瞬物凄い数の血管が浮き上がったと思った瞬間、みるみる内に腕の筋肉は太さを増し、提督の脚の太さを超えるまでに膨らんだ。彼女の胴体並みの太さとなっており、細身な身体と不釣り合いに見える。余裕がある作りの袖口は既にいっぱいに伸びきっている。
「こ、これがあの時同じ君だとは信じられない。確かに才能があるとは思ったがここまでとは……」
「もうちょっとやってみましょうか」
提督の趣味を思い出した大鳳は張り詰めていた袖を下ろし、腕が完全に隠れるようにした。ピッタリと密着した袖に太い血管や筋肉の筋が幾つも浮かんでいるのがよく分かる。

[newpage]

そこから先はよく覚えていない。慌てて大鳳が駆け寄ってきて筋肉の装甲でまた吹き飛ばされたような記憶が残っている。気が付けば医務室だったので夢なのかも知れなかったが、勿論後々の調べで全て現実だと分かった。その時は驚異と歓喜で震えており、提督の記憶からは永遠に消えないものとなった。

事情をよく知らない叢雲から聞いた話によれば、何故かジャージ姿になった大鳳がドラム缶色の小さな鉄の塊ともう一つの鉄の塊を「提督に頼まれた」と言い持ってきたらしい。叢雲に問いただされた時はうっかり口を滑らせかけたが、なんとか自分の命令だと嘘を吐き通せた。

少し増えた鋼材のお陰もあり作戦は成功、叢雲に頼み込んで海域撃破の報酬をちょろまかしてドラム缶と謎の鋼材修理にまわしたのはまた別の日のお話。

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