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人の職業を笑うな

you can (not) find a vocation

もしもクリスマスプレゼントが宮崎あおいだったら。【#アドカレ2015】

 

こんにちは、カツセマサヒコです。

 

 

ramenandicon.hatenablog.com

 

インターネットの雛壇芸人みたいな人たちが集まって、アドベントカレンダーというのをやることになりました。要するに日替わりブログみたいなものです。

 

今日は僕の番なので、書いてみました。

 

 

 

~~~~~

 

ぼくは、宮崎あおいが大好きです。

 

「『NANA』の宮崎あおいこそ全盛期だ」と、世間は言います。それもわかる。確かに『NANA』の宮崎あおいは、かわいい。でも『ソラニン』のときの宮崎あおいが一番じゃないですか? 素朴な宮崎あおいが一番すてきじゃない? さらに言っちゃうと、『ただ、君を愛してる』の宮崎あおいはNYで子どもに笑いかけてるときが一番かわいくない?  で、そのあとのセルフポートレートの写真の宮崎あおいはもう美しすぎちゃってダメじゃない? あれは反則じゃない??

 

 

そんなある日、思いました。

 

もしもサンタさんが本当にいたら。

そして万が一、大人になってもプレゼントをくれるなら。

そしてもしももしも、クリスマスプレゼントが宮崎あおいだったら―――。

 

 

 

 

第1話 宮崎あおい、登場

 

 

ピンポーン

 

僕「はあい」

 

宅急便「宅急便でーす」

 

僕「え! なにこれ!? でかっ!!」

 

「おとぎ話みたいだ」と笑うかもしれません。でもこれは、実際に僕の頭のなかで展開された、宮崎あおいとの切ない物語なのです。

 

人ひとり入りそうな大きさの段ボールが我が家に届いたのは、12月24日の朝でした。

 

まだ寝ぼけ眼の僕をよそに、宅急便のお兄さんが届けてきたその大きな箱の中に入っていたのは、ほかでもない宮崎あおい本人だったのです。

 

 あおい「ふわあぁぁ」

 

僕が雑に段ボールを開けると、モゾモゾと動いてから身体をゆっくりと起こし、彼女は少し微笑みながら、気怠そうに言いました。

 

あおい「ああ、君がカツセくん……? プレゼントに来た、宮崎あおいです」

 

 

そう、雪も降らないクリスマスイブの朝、我が家に宮崎あおいがやってきたのです。

 

 

 

第2話 宮崎あおい、カレーライスを作る

 

 

こうして前夜に願ったとおり、本物の宮崎あおいが我が家に届きました。

 

オーダー通り、「紺色の男性モノのGAPのパーカーに、スウェット」という恰好で我が家にいる宮崎あおいは、髪をワシャワシャかきながら眠たそうにあくびをしながら言います。

 

あおい「ふわ~わぁ。お腹すいちゃった。カレーとか作らない?」

 

ソラニン』を見過ぎてしまった僕は、とにかく「宮崎あおいとカレーを作ってみたい」という願望があったのですが、なんとそのニーズさえも彼女は熟知していました。もうこのまま死んでもいい。

 

宮崎あおいが入っていた段ボールをひっくり返すと、ちょうど2人前のカレーの材料が出てきます。

 

 

僕「え、コレと一緒に運ばれてきたの……?」

 

あおい「うん。せーまかったよー(笑)」

 

僕「てか、どっからきたの……??」

 

あおい「岡田くんちだよ?」

 

僕「うっわそこだけめっちゃリアル」

 

 

僕らは普段は使っていない我が家のキッチンに立ち、タマネギやニンジンの皮を剥きながら、たわいもない話をしました。

 

生まれた街のこと、嫌いだった体育教師のこと、好きな音楽、大変だったお芝居、これまでの失恋回数、昔の携帯電話、壊れた自転車のこと。

なんでも話を共有していくことで、カレーが出来上がるころには、二人はすっかり仲良くなっていました。

 

 

 

第3話 宮崎あおい、映画館でキスをする

 

 

「映画見にいこうよ?」

 

カレーを食べ終わって食器を洗っていると、宮崎あおいが言いました。

 

なるほど、確かに僕は前夜に「宮崎あおいとカレー食べたあとは映画デートしたい」と願いました。20分ほどで身支度を終えて、二人して玄関で靴(宮崎あおいは赤のハイカットのコンバースです)を履くと、さっそく都内の映画館へと向かいます。

 

あおい「二人で一緒のポップコーンを食べるのに憧れてる人とか、いるじゃない? わたし、あれあーんまり好きじゃないんだよね。ポップコーンってなんだかんだ手汚れるし、食べてる間、手とかあんまりつなげないでしょ?」

 

僕「わかる」

 

彼女は僕が思っているとおりのことを口にしながら、ドリンクを何にするか悩んでいます。優柔不断なくせにこだわり強いところとか、かわいすぎる。

 

一番うしろの、一番端っこの席に2人で腰かけると、まもなく予告編が始まりました。

宮崎あおいは「見たい」と「微妙」の2つの感想だけ僕に教えてくれて、そのたび僕も「そうだね」「わかる」と相槌ちを打ちました。

 

予告編が終わると、館内の照明はさらに落とされて、スクリーンが横に広がります。

沈黙が訪れてから20世紀FOXのやたらとうるさいファンファーレが鳴り終わるまで、僕らは映画館の隅っこでキスをしました。

 

あおい「このシーンがそのまま映画になればいいのに」

 

僕「だとしたらとんでもないB級映画だよ」

 

あおい「だからいいんだよ、誰も見ない映画になればいい」

 

僕らは「日常だったらぜってーこんなやりとりしねーだろ」って台詞を口にして、映画の世界に入っていきました。

 

 

 

第4話 宮崎あおい、いなくなる

 

 「なーんかパっとしない映画だったねー」

 

彼女はパっとしない映画を見た感想として、そのように言いました。

俳優の演技はよかったものの、脚本がどこまでも中2っぽかったその作品は、確かにパっとしない映画に分類されるものでした。

 

僕「このあと、どうする?」

 

あおい「うーん、それがねー」

 

夕方の東京タワーが見える街を二人でのんびり歩いていると、宮崎あおいは言いました。

 

あおい「このあと、願った?」

 

僕「え?」

 

あおい「だから、このあと、私と何をしたいか願った?」

 

 

願っていなかった。

正確に言うと、「自転車の二人乗り」とか「中華街で肉まん食べ歩き」とか、もっと宮崎あおいとしてみたいことはいろいろありました。

 

でも昨夜、仕事から帰ってきて疲れていた僕は、「宮崎あおいとやりたいこと」を考えているうちに眠ってしまったのでした。

 

そしてちょうど、願ったのは「映画おわりにスタバを飲みながら、東京タワーが見える街並みを二人で歩く」ところまで。

 

 

あおい「だよね。だからゴメン、この続きはないんだ」

 

僕「ほんとに……? もうちょっと、たとえばお台場の景色が一望できるレストランで食事するとか、でもそこに行ってみたら予約が取れていなくて、近くの屋台でラーメン食べて日本酒飲むとか、そういうの、そういうのだけでもできない……?」

 

あおい「あははは、この後の続き、そんなこと考えてたんだ(笑)」

 

彼女はあっけらかんと笑いながら、でも悲しそうな声で言いました。

 

あおい「ごめんね、そしたら、来年それを祈ってくれる? わたし、覚えてはいられないんだけど」

 

僕「覚えてもいないんだ……」

 

あおい「でも、来年のわたしに、今年のことを話してあげて。それで、『心底たのしそうだった』ってちゃんと伝えて?」

 

僕「そっか……。心底、たのしかった?」

 

あおい「うんっ! 心底、たのしかった」

 

 

東京タワーの見える大通り。

次に僕がオレンジ色の東京の象徴を見つめている瞬間に、彼女は姿を消していました。

 

まるで最初から、僕がそこに独りだったかのように。

 

 



 

 

 

最終話 ぼくは宮崎あおいといつでも電話できる方法を思いつく

 

 

 

 

 

 

 

 

おわり

 

 

 

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