北原みのり「五郎丸を、待っていた!」
「ほんとなの? あまりに辛い現実だったから蜃気楼でも見たんじゃないの?」
私は何度も念を押した。そして確認した。
「ねぇ、それ、五郎丸じゃなかった?」
「五郎丸だったのかな……」
話は変わるが……というか、これが本当は最初から言いたかったのだが、五郎丸さんは、凄い。
先日、研ナオコさんのステージを見たのだけれど、研ナオコさんが「こんばんは、五郎丸です」と出てきて、驚いた。「週刊女性」恒例の「抱かれたい男」特集では、五郎丸が3位に入っていた。五郎丸のディナーショーは1万6千円のチケットが400枚、30分で売り切れたという。
なぜこれほど五郎丸に、日本の女たちは熱狂しているのか。友人の話を聞きながら、ふと思った。もしかしたら、多くの女にとって五郎丸は、「ずっと待っていた人」だったのかもしれない。女をばかにする下品な男たちと対極にある清潔感、努力が作り上げたゴージャスな肉体、「キモサ」というものが一滴も感じられない高潔さ。
ここ数回、この社会が持つミソジニーについて書いている。女として生きてるだけで、すり切れることが多い社会だ。そんな中、女が抱える重たいカバンを手に取り、「頑張りましょう」と声をかけられる男を、女たちがどれだけ待っているか。……と書きながら、私は五郎丸さんが、どんな人か全く知りません。ただ、五郎丸さんには、ダメな男たちを存在で威圧してくれそうな力があるのだと思う。そして「待ってたんです」と言いたくなるような、女の飢餓があるように思う。五郎丸さん、日本から出ていかないでほしいです……。
※週刊朝日 2015年12月11日号
【関連記事】
- 北原みのり「オジサマからのテロ」週刊朝日
- 北原みのり「なぜ男性はすぐに『長い会議』をしたがるのか?」週刊朝日
- 北原みのり「転がすの、面倒なんですけど」週刊朝日
- 日本の女性は怯えている? 緊張をして生きる女たち週刊朝日
- 淳の結婚ショック? 20代女性「意味わかんねぇし」週刊朝日
ライフ アクセスランキング