【動画】時代の正体〈226〉差別阻んだ街の良心

桜本の底力(上)

確信


 「大きな騒ぎになれば、眉をひそめる地元の人もいるかもしれない。だからといって黙ってやりすごす選択肢はない。中途半端は駄目。このデモは許されない社会悪なのだと伝わるよう、やるからには一つにまとまって徹底的に、だ」

 三浦の危機感にツイッターのつぶやきが呼応する。

 〈攻撃対象者の生活圏に近づくなんて許されへん!〉
 〈圧倒的な数で囲んで潰(つぶ)したい〉〈マイノリティへの直接的な攻撃を官憲が容認しているという事態なんで〉
 〈抗議する人がひとりでも多いと攻撃対象にされる地元の人は少しでも安心と思う〉
 再びクラック川崎のつぶやきが、事の重大さを伝える。

 〈コリアンタウンを直接ターゲットにするデモは新大久保以来、約2年間、首都圏で実施されておらず、今回の桜本の件が本当なら(デモ申請をそのまま受理した)県警と川崎署はこれまでの均衡を破る重大な誤判断をしていることになる〉
 果たして、富士見公園ふれあい広場に集まったデモ参加者は14人。前回6月の5分の1程度だ。しかし、数の問題ではない、と思い直す。主催者、津崎尚道が肩から提げた拡声器で話し始めた。

 「ハルモニがデモをやっただって? 自分たちで正体をばらして、どうするんだよ、朝鮮人!」

 やはり当てつけなのか。参加者の一人が続いた。

 「川崎に住むごみ、ウジ虫、ダニを駆逐するデモを行うことになりました」

 反撃が始まった。集合場所の公園、デモコース途中の交差点、桜本商店街の入り口にそれぞれ100人前後が集まった。地域の人々、そして川崎や首都圏で活動するカウンターの人々。デモに並走しながら「差別をやめろ」「レイシスト(差別主義者)は帰れ」と叫び、「ヘイトスピーチやめろ」と書かれたプラカードをかざす。待ち受けるカウンターの口から、座り込みや車を横向きにして通りをふさぐといった実力行使の決行がささやかれる。

 公園を出た一団はバス通りを東へ進む。藤崎4丁目の交差点が見えてくる。右に曲がれば400メートル先が桜本の街。「帰れ」コールのボルテージが上がる。

 警備の警官に聞く。

 -交差点を右に曲がるのか。

 「いや、左だ」

 -桜本を通るのではないのか。

 「その予定だったが、...

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