高久潤 北郷美由紀
2015年12月6日02時21分
■エピローグ〈1〉分断
パリ同時多発テロの8日後。地下鉄が閉鎖され、テロ警戒レベルが最高の「4」に引き上げられた直後のベルギーの首都ブリュッセルに入った。治安当局が「実行犯が潜伏している」とみて捜索を繰り返す現場に近づこうとタクシーに飛び乗った。
モロッコ系だというベルギー人のタクシー運転手の男性に問われた。「テロリストが潜伏している可能性があるなら、欧米は、なぜブリュッセルやパリを空爆しないんだ?」
男性の言葉は、そのまま欧州の矛盾を言い当てているように感じた。「テロとの戦争」の矛先は、欧州の外に向けられている。だが、テロ実行犯の多くは、ベルギーやフランスで生まれ育った若者たちだ。
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