2015年12月06日

CHANGE!!!!とShine!! アニメアイドルマスターとアニメシンデレラガールズオープニング比較2

アニマス、アニデレの一期オープニングは一見同じように見えて、片やエンタメ指向、片やドキュメント指向で、映像的には別物と言っていい違いがあるというのが前半の結論でした。そしてドキュメント指向であるアニデレOPは後半に入るとリアリティが失われる事と指摘しました。
何故後半にリアリティが消失するのか。二期オープニングを比較しながら探っていきたいと思います。

エンタテーメント映像としてのCHANGE!!!!
Ready!!の映像は歌詞をなぞった内容でしたが、CHANGE!!!!は歌詞に沿いつつ一期最終話でブレイクした765プロアイドルの活躍を描くという二期の内容を先取りする形になっています。そしてCHANGE!!!!について特筆すべきは楽曲との同期です。以下にAメロ前半のカットを抜き出して歌詞と照合してみます。
1.png
このように映像のカットが歌詞を基準に行われ、さらに「TVでSHOWTIME♪」の箇所に顕著ですが、被写体もメロディに合わせてアクションします。Ready!!楽屋風景でも「IT’S SHOWTIME♪」の所で響と亜美真美が曲に合わせて歌いますが、CHANGE!!!!ではAメロ後半もそれが徹底しています。カットやアクション等の映像の基準をすべて音楽に置くやり方は映像プロパーから見れば異端ではありますが、ニコ動では珍しくも無く、アイマスMAD動画にはそれが前提になっているものが多くあります。アイマスMAD界隈では映像と音楽の同期をシンクロと呼び習わしましたが、このシンクロの度合いが高い動画は理屈抜きで楽しい動画になります。Aメロのシンクロの高さはReady!!以上のエンタテーメント性を求めた結果なのでしょう。そして圧巻はサビです。

アイドルマスターOP2 - CHANGE!!!!!.gif
1,2,3,と歌詞に合わせたカウントダウンに春香がステージ衣装にCHANGE!!!!する様を挟む極めて短いカットを連打した後での、カメラを移動させながらの1カット長回し。カットの時間的なメリハリも効かせて放つこの長回しのカットは3Dアニメなら容易でも作画アニメでは困難を極める事は、錦織監督であれば重々承知していたでしょう。それでもこのコンテを描いたのは、流れるように変化していく画面が極上のエンタテーメントである事も承知していたからでしょうし、事実もはや映像の快楽といって良いほどの楽しさに溢れています。

Shine!!が狙っているもの
構成も見た目もほぼ同じだったReady!!とStar!!ですが、アニデレ第二期オープニングShine!!の映像はCHANGE!!!!とは見た目からずいぶんと違う感じがします。
2.png
その違いはAメロ前の間奏に既に現れていてCHANGE!!!!はエンタメ指向らしく第一期のダンスシーンを曲に合わせて再編集したものになっていますが、Shine!!では346プロダクションの建物を背景にハラハラと散る桜の花びらが映されています。この花びらはBメロまでずっと舞い続け、Star!!のリアリティとも違った幻想的な雰囲気を醸し出します。
アニデレではキャラクタの心理描写に花を使っていましたが、この桜は第一話の公園シーンの花びらであろう事は間違いないと思われます。
3.png
音も無く舞い散る桜。動きの少ない会話シーンの間を持たせる以上の、このシーンの映像美に緊張感さえ漂わせ、それは凜の人生が一変する瞬間の予兆だったと思います。そんな変化の予兆にシンデレラプロジェクトのメンバーは
4.png気づき
5.png気づき
6.png気づき
7.png手を伸ばしますが
8.png
卯月はその予兆に目をつむったまま。完全に第二期の展開をなぞっています。
キャラクタにもオープニングとしては過剰なまでに演技がつけられ、こんな分析をするまでもなく「卯月ヤバいやつだこれ」と一期から見続けてきた視聴者なら初見で分かる程の情報量は本編と変わりありません。ここから楽曲主導エンタメ指向だったCHANGE!!!!に対し、Shine!!はストーリー主導テーマ指向と言えるのではないかと思います。


9.png
10.png
11.png
12.png
13.png
この傾向はサビ前半のシークエンスにも明らかです。CHANGE!!!!の1カット長回しのスピード感とは対照的に、ユニット毎にカットされ、走り出したニュージェネレーションの勢いを殺すかのようなCandyIslandの俯瞰カットまで入ります。放送中には何故わざわざ勢いを殺すのか不思議でなりませんでしたが、答えは24話にありました。
15.jpg
14.jpg
復帰した卯月にプロジェクトのメンバーが言葉をかけます。変化を「冒険」と捉えて前に前に突き進むラブライカと蘭子に対して、杏達CandyIslandは「変わらない所も大事にしたい」「自分のペースが一番」とマイペースです。オープニングでのカットもそんな彼女達のあり方を反映したものになっていたというのが種明かしでした。他のユニットについても前に進むラブライカと蘭子は走っていますし、アスタリスクは走りつつも互いに顔を向け合う等、そのあり方に即した描かれ方をしています。
さらに言うと、彼女達は必ずしも同じ方向に向かっているとは限りません。最終話エピローグでは演技の楽しさを知った未央は女優へ、歌うのが楽しくてしょうが無いといった風の凜は歌手へとそれぞれ転身する可能性が示されています。トップアイドルという共通の目標を持つ765プロのアイドル達は1カット長回ししてでも同じ方向に走っていることを示さねばなりませんが、シンデレラプロジェクトのアイドル達がカットで分けられたのは、いずれそれぞれが別の方向に向かうという暗示であろうと思うのです。

白背景の意味
サビ後半はCHANGE!!!!もShine!!もダンスシーンとなります。もちろん、アニデレがアニマスオープニングを踏襲しているのですが、一期のようなカメラワークの違いは両者にありません。
14.png
CHANGE!!!!のこのシーンのカメラはReady!!のライブカメラと違って、キャラクターの配置を優先させたアングルです。背景も真っ白でピンクの衣装は映えますが、放送当時白背景なのは時間的リソースの問題とばかり思っていました。ただ劇場版が上映された今となっては、ここもテーマ的な解釈が可能です。
15.png
さびに入る前のこのカット。大きな光に13個の小さな光が集まってサビの長回し繋がります。この小さな星は765のアイドル達、大きな星はトップアイドルの座と容易に読み取る事が出来ます。この光のモチーフは劇場版のロゴや衣装に使われています。輝きの向こう側は劇場版で描かれました。ならば、CHANGE!!!!での白背景は向こう側に至るその途上の光の中ではないかと思うのです。

CHANGE!!!!の白背景の解釈は後付けの部分も多分にあるように思いますが、Shine!!については明白なテーマ性を持っています。
16.png
この記事の前半で議題に挙げたカットと同じようなカットがShine!!にも存在します。ぴょんぴょんと跳ねる3人を俯瞰でフレームに収めています。これが意図的なものである事は、続く次のカットで分かります。
18.png17.png
Star!!、Shine!!ともジャンプの着地を足下のクローズアップで描いています。ジャンプを俯瞰で描くという悪手を敢えて使っているのは、この足下のカットを強調させる為に違いありません。そして雄監督は本編でも同じカットを繰り返してシチュエーションの違いを際立たせる演出を何度も使っています。Star!!とShine!!のダンスシーンも同様に意図がある筈です。
19.png
Star!!のダンスシーンは、「慣れないこのピンヒール10cmの背伸びを〜硝子の靴に」という歌詞を受けたサビ直前のこのカットに明白で「硝子の靴を履いて、綺麗なドレスを用意して貰って、お城の舞踏会で踊る」様を描いたものです。ライブシーンというよりは、晴れの舞台、非日常の空間の象徴として見た方が良いでしょう。Aメロのリアリティに溢れたカメラワークは、灰被り/シンデレラ、普通の女の子/アイドルというこの作品のテーマ、二項対立を際立たせる為の演出だったと思われます。
20.png
同様に「この自分の靴で今進んでいける勇気でしょう?」というShine!!の歌詞を受けての卯月の素足。そしてシンプルな白のワンピースは、硝子の靴も素敵なドレスもない素の彼女達の象徴です。Star!!で示された二項対立を推し進めて、靴とドレスが無ければ彼女達はシンデレラ(アイドル)では無いのか?という命題に、雄監督は「むしろ城(ステージ)も要らない」と答えたのがこの白背景ではないかと。彼女達が生身でもアイドルであると、監督はStar!!で描かれたダンスシーンと変える事無く描く事で示したと思うのです。本編でも常務とプロデューサーが繰り返し「城か個人か」*1と言葉を交わしています。個人の輝きを信じたプロデューサーにとって、これは輝きの向こう側の光景であるかもしれません。

以上、アニマスとアニデレのオープニングの比較でした。構成、見た目は同じでも、内実は全く別物で、背景に各監督のそれぞれの想いがある事を確認出来たように想います。改めて良いものを見せて貰った事を、そしていろいろな体型のかな子を見せて貰った事に、監督以下スタッフの方々に感謝する次第です。ありがとうございました

*1完全に余談ですが「城か個人か」という命題に作品の中で明確な答えを示さなかったのはミリオンライブへの布石では無いかと、そう思わずにはいられません。
posted by tlo at 00:53| 日記