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【ローカルプレミアム】
振動や音を体で感じて JR高崎運輸区のベテラン運転士が語るSLの醍醐味とは…
--運転環境も決して恵まれていませんね
「夏の運転席は60度くらいになり、顔もすすで真っ黒になる。密閉キャブでないD51では、背中に雪が積もったりもする。好きでないとできない仕事だと思う」
--そうした中で、SLの魅力とは
「何といっても力強さ。信越線の西松井田駅から横川駅まで、約25%の勾配を最後は時速20キロほどであえぎながら登っていく。粘り強い姿は、勇気づけられる」
--SL運転士としての喜びはありますか
「沿線の方たちからの応援。上越線を走るたびに、車イスの子どもが決まった場所で手を振ってくれる。管外で出張運行し、『SLに勇気をもらった』という手紙を頂戴したこともある。いろいろな人たちからのエールが、本当にうれしい」
--SLは鉄道の原点といわれていますが、ご自身の役割をどう考えていますか
「運転士だけでなく、整備を担当する検修係の人を含め、先輩から受け継いだ技術や心構えを何ひとつ落とすことなく、後輩たちに伝えていくことが、大事な役割だと思っている。SLに情熱を持つ若い人もおり、少しでも長くSLの運転を続けていきたい。2台のSLは支社の財産だが、さらに多くのSLが集まる基地になればいいとも思う」
よしだ・せいじ 昭和38年、安中市出身。56年に埼玉県の本庄東高校を卒業後、陸上自衛隊を経て57年に旧国鉄入社。機関助手として採用されたが、旧国鉄改革の影響で製造業などの異業種に派遣される。JRへの移行に伴い、平成3年から籠原電車区で運転士としてのスタートを切る。SL運転士の中では上から3番目のベテラン。