中国で企業の大量倒産が発生している。かつては「世界の工場」と呼ばれた工業地帯の珠江(しゅこう)デルタでも、主要な一都市だけでこの1年で4000件もの企業が倒産したというのだ。国有企業を含む大企業の社債でも債務不履行(デフォルト)や利払いが遅れるケースが目立つ。人民元が国際通貨基金(IMF)の主要銘柄に選ばれたと喜ぶ中国だが、こうした破綻ラッシュは実体経済悪化の深刻ぶりを示しているようだ。
広東省の珠江デルタは、広州と香港、マカオを結ぶ三角地帯を中心とする地域を指す。中心都市の一つ、東莞(とうかん)市は1980年代以降にパソコンや家電製品、日用品などの工場が集積、外資系のメーカーも数多く進出した。出稼ぎ労働者相手の風俗が栄えたことから「性都」との異名も取った。
中国の毎日経済新聞のニュースサイト「毎経網」など地元メディアは、その東莞では1年間に電子製品など製造業を中心に少なくとも4000社の企業が倒産したと報じた。これは2008年のリーマン・ショック時以来2度目の倒産ラッシュだという。
報道によると、東莞では欧州の通信機器大手ノキアが4月に工場を閉鎖。労働コストの上昇もあって中国の内陸部や東南アジア、インド、アフリカなどへの工場移転も相次ぎ、空洞化が進んでいる。相次ぐ倒産について東莞市の市長は「市場経済の一部であり、製造業全体の危機ではない」と強調したという。
珠江デルタなどの倒産ラッシュについて、第一生命経済研究所主席エコノミストの西濱徹氏は、「報道は相次いでいるが、中国の場合、なかなか実情はわかりにくい。ただ、過剰生産などの影響が表面化しているとも考えられる」とみる。