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緊急座談会:福島のお母さんたち、山下俊一さんに迫る

もし、昨年の3月11日にあなたが避難区域に指定された場所に、小さなお子さん、あるいはお孫さんと一緒に住んでいたと想像してみてください。当然、甲状腺検査を子どもに受けさせました。その『検査結果のお知らせ』が右の一枚です。なぜ、二次検査の必要はないのかの理由はひと言も書かれていません。わが子の甲状腺にあったのは結節なのか、嚢胞なのか、両方なのか、それすらわかりません。そこで検査してくれた大学に電話しましたが、「山下先生がいないので、わかりません」。これが今、福島で起こっている現実です。山下先生、どうなっているのですか。

【出席者】
 山下俊一さん(福島県立医科大学副学長) 
 安田三千子さん※仮名(福島市・42歳・子ども7歳、4歳)
 和田良子さん※仮名(郡山市・36歳・子ども7歳)
 安西恵子さん※仮名(飯舘村→福島市・44歳・子ども8歳)
 高村美春さん(南相馬市・43歳・子ども5歳)
 北山佳那さん(飯舘村→福島市・29歳・子ども5歳、3歳)
【司会】
 神谷さだ子さん(日本チェルノブイリ連帯基金事務局長)

●甲状腺エコー検査をめぐって——
「どうしたら、2年半で36万人の子どもをていねいに診てもらえるのだろう」

司会 皆さん、お忙しい中のご出席ありがとうございます。通販生活前号の山下先生インタビューで、先生から「必要ならどなたにでもお会いする」とおっしゃっていただきましたので、さっそく本日は甲状腺エコー検査対象のお子さんをおもちのお母さん方をおよびしました。5人の中ですでに検査が終ったのは飯舘村の安西さん、北山さんのお2人ですね。では、安西さんから。
安西 8歳の娘が甲状腺超音波(エコー)検査を受けたのは11年10月半ばで、その結果の通知が郵便で届けられたのは今年の1月初旬でした。封筒にA4の紙1枚が入っていました(前頁写真参照)。紙には「(A2)小さな結節や嚢胞がありますが、二次検査の必要はありません」と書いてあるだけ。
 これでは結節と嚢胞の両方があるのか、どちらか片方なのか、わかりません。裏面の説明を見ても、表面とほぼ同じことが書いてあるだけで、どんな症状なのかよくわかりません。そこで、裏面に電話受付の番号がのっていたので、翌日、問合せてみたんです。
 最初は女性が電話に出て「担当の先生は2人とも忙しいので、すぐには返事できない」と言われました。担当の先生は誰かと聞くと、山下先生と鈴木先生だと教えてくれました。
司会 えっ、山下先生はお母さん一人一人のお問合せにまで出ているんですか。
山下 いえ、そこまではしていません。
安西 その翌日、医大のコールセンターの女性から電話があったのですが、「通知の裏面に説明が書いてあります」と言うだけ。それでは答えになっていないので、検査結果をどう見ればいいのか質問をしたら「確認して電話をします」と言われました。
 さらに2、3日後だったと思いますが、今度はコールセンターの男性から電話がきました。私が「甲状腺エコーの検査を受けながら、その場で症状などについて先生から説明を受けることはできないのですか」と聞くと、「隣の人にも聞こえてしまうから」という答えでした。「子どものうちから、結節や嚢胞は見つかるものなんですか」と聞くと、「いままでにデータがない」「チェルノブイリでは5年後に(甲状腺がんが)発病している」「だから2年後の検査で大丈夫」というような、やはり納得のいかない答えでした。
北山 私の子どもの検査結果は「(A1)異常なし」だったんですが、普通、病院で自分の子どもを診てもらったら、その場で、あるいは1週間くらいで結果が出て、先生方はそれを見ながら、これはこうなんで大丈夫ですとか、今後、経過を見ますから何ヵ月後に来てくださいとか、おっしゃいますよね。それが紙ペラ1枚では逆に不安になってしまいます。
山下 申し訳ないです、本当に。まず通知が遅れた理由ですが、2年半の間に約36万人の事故当時0歳から18歳までの子どもを検査し、結果相談に応じられるだけの専門家の数は明らかに不足しています。甲状腺の超音波検査を0歳児から10歳くらいの子どもに行なってきた専門家はこれまでにわが国にはほとんどと言っていいくらい、いないからです。子どもの甲状腺がんの自然発症率は10万人から100万人に1人、しかも10歳くらいまでの子の発症率はほとんどありませんでしたから、小さな子どもの甲状腺を検査する経験も習慣もこれまでなかったんです。
 さらに精度管理といいますか、超音波の検査はかなり熟練した、一定のレベルをクリアした技師や医師が必要となります。さらに検査結果の判定にも時間をかけなければなりません。そこでいま、日本甲状腺学会をふくめて7つの学会に検査してくださる先生の派遣を一生懸命お願いしています。
 コールセンターの人たちには調査票の書き方など基本調査や詳細調査以外にも様々な事務的な対応をお願いしている状況です。少ない人数であり、その人たちにも申し訳ない状態をつくっています。結果として、ご指摘のように検査結果への問合せに関しては、十分に対応できていない部分もあります。なんとか早急に診断結果の相談窓口を充実させたいと思います。
司会 現状では手が回らないからこうなってしまうとおっしゃるのであれば、お母さん方のほうで自発的にセカンドオピニオンを探すというのはどうなんですか。甲状腺学会会員宛に山下先生から、「次回の検査を受けるまでの間に自覚症状等が出現しない限り、追加検査は必要がないことをご理解いただき、十分にご説明いただきたく存じます」というセカンドオピニオンは必要ないみたいなメールを送ったという一部報道がありますが。
山下 決してセカンドオピニオンを否定するものではありません。小児甲状腺がんの診断そのものが非常に難しいので、さらにくわしく診るとなると、のどに針を刺すとか、高度な診察が必要になってきます。専門家でも難しい点があるし、過剰診療も問題になります。そこで現段階では最善と思える集団検診法を駆使しているのです。集団検診の結果を理解し、安心していただくと同時に、医師にも共通の診断根拠を理解していただき、一刻も早く全国の協力体制づくりをしていくことが重要であると思っています。メールの趣旨はそういうことです。
 昨年末までに福島県立医科大で実施した3765人の検査では(資料2)、99・3%のお子さんが「A1」か「A2」でした。5・1ミリ以上の結節、20・1ミリ以上の嚢胞が認められた子どもは26人(0・7%)でしたから、いまの段階でセカンドオピニオンのことを言う必要はないのではないでしょうか。すでに外部専門委員会も立ち上げて透明性は確保しているつもりです。 安田 それだけでは私たちの不安は消せないと思うのです。原発事故が起こる以前の福島ではこのくらいの割合で子どもの嚢胞や結節があったが、それと比べて今回はこのくらいの割合だから心配いらないといった比較で説明していただけると、不安は消えるのですが。
山下 その比較がこの福島県内のデータから始まるんです。福島はもちろん日本のどこにもそのようなデータはなかったのですから。
安田 福島に事故以前のデータがないのなら、事故の影響を受けていない沖縄とか九州の現在のデータをとって比較すればいいんじゃないですか。
山下 被ばくした地域と被ばくしなかった地域という単純地域比較では不十分なんです。甲状腺の異常は被ばくする以前の各家庭の食生活におけるヨウ素の摂取量でずいぶん左右されますから。ワカメや昆布をよく食べる家庭とあまり食べない家庭では嚢胞や結節の発生率はケタが違ってくるはずです。さらに多くの環境要因、さらに遺伝的な素因も関係してきます。
安田 それを言うのなら、浜通りの人たちは海産物を沢山食べていますし、会津の人は少ないと思うんです。現在の段階でも甲状腺異常と被ばくの比較は可能だと思うのですが。
山下 もちろん、頻度という意味では全国的に調査を行なって比較するほうが正確ですが、放射線の影響には潜伏期の問題もあります。今回のような微量被ばくの発がん影響の因果関係の証明は困難ですが、早期発見と治療は重要です。さらに、子どもの疾患については、他にも優先して対応しなければならないことがたくさんあるので、なかなかそこまで人手とお金を回すことができないというのが現実でしょう。ですから、最初の5年間で、まさにおっしゃるような福島県全体の集団検診による基礎データをとっていく。母集団の年齢は上がっていきますからその追跡調査で比較も可能になりますし。
高村 ちょっと噛み合いませんけど、母親の立場で言うと、いまの段階で大丈夫だとおっしゃるのなら、安田さんのおっしゃるような地域比較をしていただかないと、やはり私たちの不安は消えないと思いますね。
和田 2年半で第1回めの甲状腺検査を終了させるということですが、自分の子どもが今年中に診ていただけるのか、来年になってしまうのか、その辺りの情報も全く入ってきません。せめて見通しを持てると安心につながります。
山下 甲状腺検査は急ぐ必要はありませんが、お母さん方の要望に応えて避難地域からスタートしてすでに3万人以上の検査が終了しました。この先2年間における福島県内の甲状腺検査のスケジュールは、早晩公表予定です。さらに県外へ避難されている方々については、113ぐらいの検査拠点が候補として挙がっていますので、そこで受けられるように今、契約の話が進んでいます。具体的なスケジュールは4月以降になってしまいますが、もう少しご辛抱ください。
安田 そもそも福島県立医科大だけで福島の子どもたちぜんぶを生涯にわたって診ていくというシステムそのものが無理なんじゃないかなあ。
山下 ご不満も理解できますが、日本と世界の叡智をここ福島に集結して、長期にわたる健康見守り体制を準備していくことが何よりも大切だと思っています。この子どもたちが20歳過ぎても5年ごとの節目に、全国どこにいても甲状腺検査を全国どこでも受けられる体制をつくります。

●低線量長期被ばくをめぐって——「どうしたら、安心して子どもたちを外で遊ばせられるようになるのだろう」

和田 友人たちともよく話題になるのですが、私たちは毎日、低線量被ばくの中で生活しているわけですから甲状腺がんの心配もさることながら、低線量被ばくによる免疫系の病気が心配でたまりません。セシウムは筋肉に集まるとか、心臓に集まるとか、いろいろ勉強していくと、これからの福島の子どもたちは心臓系や呼吸器系になにか疾患が出てくるんじゃないかと。
山下 ご心配はよくわかっているつもりです。いまのご指摘は内部被ばくの影響がどう出てくるかというご質問ですね。私たちが調べてきたチェルノブイリでも、空間線量の量の問題、汚染された食品の問題、いろいろな調査研究を現地の専門家、外国の専門家と一緒に取り組んできたのですが、内部被ばくといま目の前にいる患者さんの病気の因果関係を客観的に証明するのはとても困難なんです。とくに福島の内部被ばく線量はとても低いと考えられていますのでさらに困難です。
安田 山下先生の低線量被ばくに対する考え方はどうなんですか。
山下 私は、基本的には規制防護の立場(※1)と、それから健康リスクの立場(※2)の両方から、ずっと現場で話をさせてもらってきました。
 まず、規制防護という意味では、100ミリシーベルト以下であってもしきい値なし、できるだけ被ばくをさせないという立場が防護の基準です。
 一方、今回の事故は非常事態でありましたから、このときにとった言動は、ひたすら健康リスクの立場から皆さんに説明をさせてもらいました。100ミリシーベルト以下であれば発がんリスクがはっきりしない、わからない、あるいは検出できないという中で、「すぐには100ミリシーベルトにならないので心配しないでください」という発言になりました。これは、決して100ミリシーベルトまで浴びていいということではありませんし、100ミリシーベルトが安全のレベルだということを規定しているわけでもありません。
 これまで何回も説明してきたことなんですが、広島、長崎、あるいはチェルノブイリでもそうなのですが、防護上は1回の被ばく線量をもって安全基準をつくっています。
 でも本当の健康リスクは、同じ量でも、積算線量と1回とでは随分違うのです。現段階の微量のマイクロシーベルトレベルの量なら、たとえ遺伝子が傷ついたとしても、私たちの身体に備わっている遺伝子に対する修復力のほうが勝るので、我々の体に影響を与えないと言っていいと思います。
 ただ、これも何度も言ってきたように、赤ちゃんとか子どもはわからないことがいっぱいあるし、これから長く生きていかなくてはいけないので、できるだけそういうリスクは取り除かないといけません。ですから、可能なかぎり被ばく量は低減する努力をしていくという、これは100%正しい考え方です。
 昨年の4月上旬の頃までは安心しろと言っておいて今になって何を言うかと言われますけれども、最初から私としてはぶれていないつもりです。前回も司会の神谷さんに叱られましたが、非常事態下におけるリスクの説明に舌足らずなところがあってお母さん方にご迷惑をかけてしまったことは大変反省しています。
和田 ダスト・サンプリングは今、どのくらいやっているんでしょうか。風の強い日などでも無防備で外を歩いている子がとても多くて、うちの子にはマスク生活を強いているんですけど、ほかのお子さんとかが心配になったりして。
山下 ダスト・サンプリングはずっとやっています。
和田 だったら、その数字をどこかで発表していただかないと。母親によってはその数字をみて、今日はマスクをさせるかどうか、考えて選ぶと思います。判断基準がほしいんです。県のプリントでは、「強い風の日にはマスクしましょう」だけですから。
高村 すごく単純な質問になりますが、いま、子どもたちを外で遊ばせても大丈夫なんでしょうか。
山下 阿武隈山系の高い地域の森林とか、汚染レベルが高いところには立ち入らないというのが大原則だと思うんですね。福島における日常生活は、除染、つまり個人の被ばく線量が低減されることが条件になるので、優先順位をつけ、選択をして線量を下げる努力をしていくことが一番重要です。
 私はずっと初期のころから、1時間当り1マイクロシーベルト以下であれば本当に心配要りませんよと申し上げています。除染には時間がかかりますから、とにかく線量の高い地域には入らない。国や県はこれを徹底してやるべきです。継続した環境モニタリング以外にも食の安全モニタリングが健康モニタリングと同様に重要となっています。
司会 高村さん、南相馬の子どもたちはいま、グラウンドでサッカーなんかしているんですか。
高村 1時間とか2時間とか、学校の校長先生の考え方次第でやっています。やっていないところはやっていない、やっているところはやっている(笑)。
安西 学校で違うんですか。
高村 学校で違います。保育園や幼稚園もそうです。
安西 校庭は除染したんでしょ。
高村 除染しました。つい先日も部活動をやっていましたけど、マスクをしている子はだれ一人いませんね。それはそうです、サッカーするのにマスクは邪魔ですもん。
安田 私のいる福島市内でも、すごい強風が吹く中、昨年の4月初めから中学生が外で部活をやっていたりして、ええ? どういうことって、何かすごく不思議な光景でした。
高村 あとは、登下校の道が南相馬では除染はまだです。山から除染をやっていくので、町におりてくるのが今年の夏以降と言われているんですね。夏まではわが子を除染されていない道で通学させるわけです。
安田 今年の夏、プールに入らせるのかどうかとか、いろいろ頭が痛いですよね。
北山 さっき先生は、外遊びのことで、被ばくはなるべく低くするようにとおっしゃっていましたが、遊んでもいい線量を決めるとしたら、数値はどのくらいなんでしょう?
山下 繰り返しになりますが、1マイクロシーベルト(1時間当り)以下なら大丈夫です。 低いほうがいいに決まっていますが。今、皆さんはどのくらいの数値なら納得されるのでしょうか。
司会 結局、みんなはゼロしか信用しないんです。
高村 そう。でも、もはやゼロはあり得ないということもわかってはいるんですよ。
安西 せめて事故が起きる前の数値であれば。0・05とか、0・0がつくといいかなって思いますけど、それはもう無理でしょうね。

●こころの健康対策をめぐって——「どうしたら、すでに発病している「こころの病」に素早く対応していけるのだろう」

和田 友人たちともよく話題になるのですが、私たちは毎日、低線量被ばくの中で生活しているわけですから甲状腺がんの心配もさることながら、低線量被ばくによる免疫系の病気が心配でたまりません。セシウムは筋肉に集まるとか、心臓に集まるとか、いろいろ勉強していくと、これからの福島の子どもたちは心臓系や呼吸器系になにか疾患が出てくるんじゃないかと。
山下 ご心配はよくわかっているつもりです。いまのご指摘は内部被ばくの影響がどう出てくるかというご質問ですね。私たちが調べてきたチェルノブイリでも、空間線量の量の問題、汚染された食品の問題、いろいろな調査研究を現地の専門家、外国の専門家と一緒に取り組んできたのですが、内部被ばくといま目の前にいる患者さんの病気の因果関係を客観的に証明するのはとても困難なんです。とくに福島の内部被ばく線量はとても低いと考えられていますのでさらに困難です。
安田 山下先生の低線量被ばくに対する考え方はどうなんですか。
山下 私は、基本的には規制防護の立場(※1)と、それから健康リスクの立場(※2)の両方から、ずっと現場で話をさせてもらってきました。
 まず、規制防護という意味では、100ミリシーベルト以下であってもしきい値なし、できるだけ被ばくをさせないという立場が防護の基準です。
 一方、今回の事故は非常事態でありましたから、このときにとった言動は、ひたすら健康リスクの立場から皆さんに説明をさせてもらいました。100ミリシーベルト以下であれば発がんリスクがはっきりしない、わからない、あるいは検出できないという中で、「すぐには100ミリシーベルトにならないので心配しないでください」という発言になりました。これは、決して100ミリシーベルトまで浴びていいということではありませんし、100ミリシーベルトが安全のレベルだということを規定しているわけでもありません。
 これまで何回も説明してきたことなんですが、広島、長崎、あるいはチェルノブイリでもそうなのですが、防護上は1回の被ばく線量をもって安全基準をつくっています。
 でも本当の健康リスクは、同じ量でも、積算線量と1回とでは随分違うのです。現段階の微量のマイクロシーベルトレベルの量なら、たとえ遺伝子が傷ついたとしても、私たちの身体に備わっている遺伝子に対する修復力のほうが勝るので、我々の体に影響を与えないと言っていいと思います。
 ただ、これも何度も言ってきたように、赤ちゃんとか子どもはわからないことがいっぱいあるし、これから長く生きていかなくてはいけないので、できるだけそういうリスクは取り除かないといけません。ですから、可能なかぎり被ばく量は低減する努力をしていくという、これは100%正しい考え方です。
 昨年の4月上旬の頃までは安心しろと言っておいて今になって何を言うかと言われますけれども、最初から私としてはぶれていないつもりです。前回も司会の神谷さんに叱られましたが、非常事態下におけるリスクの説明に舌足らずなところがあってお母さん方にご迷惑をかけてしまったことは大変反省しています。
和田 ダスト・サンプリングは今、どのくらいやっているんでしょうか。風の強い日などでも無防備で外を歩いている子がとても多くて、うちの子にはマスク生活を強いているんですけど、ほかのお子さんとかが心配になったりして。
山下 ダスト・サンプリングはずっとやっています。
和田 だったら、その数字をどこかで発表していただかないと。母親によってはその数字をみて、今日はマスクをさせるかどうか、考えて選ぶと思います。判断基準がほしいんです。県のプリントでは、「強い風の日にはマスクしましょう」だけですから。
高村 すごく単純な質問になりますが、いま、子どもたちを外で遊ばせても大丈夫なんでしょうか。
山下 阿武隈山系の高い地域の森林とか、汚染レベルが高いところには立ち入らないというのが大原則だと思うんですね。福島における日常生活は、除染、つまり個人の被ばく線量が低減されることが条件になるので、優先順位をつけ、選択をして線量を下げる努力をしていくことが一番重要です。
 私はずっと初期のころから、1時間当り1マイクロシーベルト以下であれば本当に心配要りませんよと申し上げています。除染には時間がかかりますから、とにかく線量の高い地域には入らない。国や県はこれを徹底してやるべきです。継続した環境モニタリング以外にも食の安全モニタリングが健康モニタリングと同様に重要となっています。
司会 高村さん、南相馬の子どもたちはいま、グラウンドでサッカーなんかしているんですか。
高村 1時間とか2時間とか、学校の校長先生の考え方次第でやっています。やっていないところはやっていない、やっているところはやっている(笑)。
安西 学校で違うんですか。
高村 学校で違います。保育園や幼稚園もそうです。
安西 校庭は除染したんでしょ。
高村 除染しました。つい先日も部活動をやっていましたけど、マスクをしている子はだれ一人いませんね。それはそうです、サッカーするのにマスクは邪魔ですもん。
安田 私のいる福島市内でも、すごい強風が吹く中、昨年の4月初めから中学生が外で部活をやっていたりして、ええ? どういうことって、何かすごく不思議な光景でした。
高村 あとは、登下校の道が南相馬では除染はまだです。山から除染をやっていくので、町におりてくるのが今年の夏以降と言われているんですね。夏まではわが子を除染されていない道で通学させるわけです。
安田 今年の夏、プールに入らせるのかどうかとか、いろいろ頭が痛いですよね。
北山 さっき先生は、外遊びのことで、被ばくはなるべく低くするようにとおっしゃっていましたが、遊んでもいい線量を決めるとしたら、数値はどのくらいなんでしょう?
山下 繰り返しになりますが、1マイクロシーベルト(1時間当り)以下なら大丈夫です。 低いほうがいいに決まっていますが。今、皆さんはどのくらいの数値なら納得されるのでしょうか。
司会 結局、みんなはゼロしか信用しないんです。
高村 そう。でも、もはやゼロはあり得ないということもわかってはいるんですよ。
安西 せめて事故が起きる前の数値であれば。0・05とか、0・0がつくといいかなって思いますけど、それはもう無理でしょうね。

【座談会を終えて。神谷さだ子】
 座談会にご出席いただいた5人のお母さんのうち3人が仮名でしたが、そのことが「福島の今」を物語っています。子どもの健康をどうやって守るのかについて、職場や近所、場合によっては家庭内でも自由に話せないことがある——そんなことを福島でよく耳にします。他県への避難を考えるお母さんは「過剰反応だ」と言われ、地元に残る決断をしたお母さんは「子どものことを考えていない」と非難されます。どちらの場合も、お母さんの心は揺れ、悩んでいらっしゃいます。
 福島の子どもの健康を守るために国や県からすべてを任されているのが福島県立医科大学ですが、この座談会を読んで読者の皆さんはどう思いましたか? 県立医大だけでは、いかに手が回らないか、その結果、お母さんたちが先の見えない不安にさいなまれているか、お分かりいただけたと思います。
 座談会から約2週間後、私は福島県内の南相馬市立総合病院と平田村・ひらた中央病院を訪れました。両病院では、ホールボディカウンターで内部被ばく量を測定することが大事だとして、3・11から約1年の間に独自にそれぞれ1万人以上の測定を終えています。
 そういった地域の病院との連携はもちろんのこと、座談会の中でお母さんたちから提案のあった「市民参加型」システムなど、県立医大に任せっぱなしにしない体制をつくることが急がれているのではないでしょうか。

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1月中旬から対象者210,189人に調査票を送付。88,613通の回答があり、支援が必要と思われる人に対して臨床心理士が電話相談等を実施。4月26日時点で、1,376件の相談・支援を実施。詳細は福島県のホームページに掲載されている第6回福島県「県民健康管理調査」検討委員会資料の「資料6」(P19〜22)を参照。
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