前回は、徐々に日本の物価は上がり始めているという話をしましたが、今回は私たちの購買力についてです。私たちの給料は、残念ながら物価の上昇に追い付いていません。厚生労働省によると、賃金上昇率から物価の影響を差し引いた実質賃金は、過去3年連続のマイナスとなっています。実質的な稼ぎが減っているので、感覚的にはモノの値段がより高く感じてしまいます。
日本人が買えるモノの量は毎年減っている
携帯電話料金を高く感じる理由(写真はイメージ)
日本人の給料が上がらないのは、様々な原因がありますが、もっとも大きいのは、日本のGDP(国内総生産)が成長していないからです。日本の名目GDPは過去20年間ほぼ横ばいですが、諸外国はこの間にGDPを1.5倍から2倍に拡大させています。現代はグローバル化が進んでおり、どこで製品やサービスを提供しても、絶対値としての値段はほとんど変わりません。日本だけが自動車や携帯電話料金が安く、米国や欧州だけが高いということは原理的にありえないのです。日本が成長できずにもたもたしている間に諸外国の経済規模は拡大していますから、相対的に見ると、日本人が買えるモノの量は毎年減っているわけです。
現在、米国では大卒の初任給が40万円を超えることは珍しくありません。初任給が40万円の若者にとっては、月1万円のスマホ料金はそれほど高くは感じないでしょう。また200万円の小型自動車も無理すれば買えない金額ではありません。しかし日本人の給料は、ほとんど上昇していませんから、月1万円の携帯電話料金は高く感じますし、ましてや200万円のクルマは高級品です。しかしグローバルに見れば、200万円のクルマは特別に高級なグレードの商品ではなくなっているのです。
給料が上昇しないとモノの値段は高いままに
ただ日本の携帯電話については、別の要因も大きいと考えられます。同じ価格でも、利用者にとって選択肢が少ないとそれは満足度の低下につながります。日本の携帯電話サービスは端末とサービスが分離しておらず、諸外国に比べると、画一的です(最近はMVNOと呼ばれる格安サービスが登場していますが認知度は今ひとつです)。
日本の携帯電話サービスに不満が多いのは、日本人の購買力が縮小し、価格が高く感じるということもありますが、事業者の論理が優先し、消費者の選択肢が確保されていないことが大きく影響していると思われます。
最終的には日本の経済が成長し、私たちの給料が上昇しないことには、モノの値段が高いという感覚を解消することは難しそうです。しかし企業間の競争を促す政策を実施し、事業者を競わせることで、消費者の満足度を上げることができます。限度はありますが、そうした政策を通じて、ある程度価格を下げることも可能となるでしょう。
(The Capital Tribune Japan)
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