復興住宅:13年需要試算、福島県が未公表
毎日新聞 2015年12月05日 07時00分
東京電力福島第1原発事故の「長期避難者」に入居を限定している復興公営住宅を巡り、福島県が2013年、避難指示の解除が見込まれる人も対象にしたアンケートに基づき需要を試算して報告書にまとめたにもかかわらず、公表していないことが分かった。当初は入居対象者を限定せずに需要を算定しながら、報告書で示された避難者の意向を無視して対象を絞り込んでいたことになる。専門家は「被災者軽視だ」と批判している。【日野行介、町田徳丈】
この報告書は、毎日新聞が独自に入手した「福島県復興公営住宅整備計画策定支援業務報告書」。約3000万円の事業費で福島県の委託を受けた東京都内のコンサルタント会社が13年5月に作成した。復興庁や県などが12年度に避難指示区域のある11市町村(当時=南相馬、田村の2市、富岡、大熊、双葉、浪江、川俣、楢葉の6町、飯舘、葛尾、川内の3村)で実施した避難者の意向調査の結果を基に、復興公営住宅の需要を検討している。
それによると、(1)避難指示解除前に当面の避難先として(2)解除後でも帰還できる環境が整うのを待つため(3)解除による帰還後の住居として−−の3パターンで入居希望を分析。必要総戸数を(1)3136〜5663戸(2)2743〜4172戸(3)3366〜4837戸−−と推計した。
このうち(1)は、現在の入居対象者である長期避難者に該当するが、(2)と(3)は避難指示が解除された人を前提としており、現在は入居対象外となっている。また、11市町村のうち田村市は14年4月、楢葉町は15年9月に避難指示が解除され、両自治体の住民には入居希望者もいるものの対象から外れている。
復興公営住宅は民主党政権下で整備案が浮上し、福島県は12年9月に500戸の先行整備を公表した。この段階では原資を復興交付金とし、入居対象者は定まっていなかった。だが、同年末に自公政権に移り、安倍晋三首相は翌13年1月の復興推進会議で「早期帰還」のプラン作りとともに「長期避難者の生活拠点の確保」を指示。これを受け、改正福島復興再生特措法(13年4月成立)に基づき、復興公営住宅に特化した交付金が新設され、入居者は長期避難者に限定された。
こうしたことから13年5月に完成した報告書は「今の長期避難者向け復興公営住宅の制度枠組みでは、(2)(解除後)の世帯は制度対象とならない可能性が出てしまう」と指摘。この文言も含め、その後、報告書が公表されることはなかった。
報告書を公表せずに入居対象を限定したことについて、県の担当者は「『国の方針変更に振り回された』という言い方は良くないが、意向調査と同時並行で新たな交付金ができた。とにかく(国の施策と整合性を取るため絞り込みを)急ぐ必要があった」と語る。
復興公営住宅について福島県は計4890戸の整備計画を発表しているが、津波被災者向けの公営住宅約2800戸を合わせても、昨年末時点の避難戸数4万3700戸の約17%にとどまっている。