インターネットに接続し、複数が同時に遊ぶオンラインゲームの市場拡大に伴い、ゲーム展開を自分に有利に動作させる不正プログラム「チートツール」の被害が止まらない。業界団体などは対策を続けているが、プログラムの不正改変自体を取り締まる法律はなく、スマートフォンの普及に合わせて新種も増加、関係者は頭を抱える。
チートは英語で「だます」の意味で、ゲームを進めるためにユーザーとサーバーの間で通信されているデータを書き換えるなどして、制作者の意図しない動作を起こさせる。例えばシューティングゲームでは、攻撃が命中しやすいように相手のキャラクターの顔を巨大化させたり、自分に攻撃が当たらないように透明の壁を築いたりする。
オンラインゲームを運営する企業でつくる業界団体「日本オンラインゲーム協会」によると、チート行為は2004年ごろから存在し、06年ごろから、販売する業者も現れた。
データを書き換える行為自体は違法ではないため、ゲーム会社が利用規約に基づいて不正行為をするユーザーのアカウント停止や削除をする以外、手だてがなかった。
神奈川県警は昨年6月、運営会社「ネクソン」(東京)に、チート行為対策としてシステム監視などの負担を与えて業務を妨害したとして、全国で初めて電子計算機損壊等業務妨害の疑いで当時、17~18歳の少年3人を立件。ネット上でチートツールを販売し、利益を上げていた。
同社で被害を受けたゲームを管理するチームのリーダーを務めた加藤友秀さんは「前例がなく、これが本当に犯罪になるのかと半信半疑だった。たとえ駄目でも捜査を依頼しないといけない状況だった」と振り返る。同社はIT専門学校での講演やネットカフェへの注意喚起にも取り組む。
一方、スマホの普及でチートツールも多様化。スマホ用ゲームは運営会社が管理するサーバーを介さずにプレーできることもあり発見しにくい。
日本オンラインゲーム協会の川口洋司事務局長は「チートツールが横行すると、対戦形式のゲームではルールを守ってプレーしているユーザーが不利になって、ゲームから離れてしまう。いたちごっこになっても取り締まりを続けていくしかない」と話した。〔共同〕
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