ビジネスでもプライベートでも、相手の依頼や要求、オファーを「断る」場面というのは必ずある。そのときどう断るかによって、相手とのその後の関係が良い方にも悪い方にも変わる。信じられないかもしれないが、断り方によっては、良い方に変わることもあるのだ(自分のことを軽くみていた相手が、一目置くようになることもある)。
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この問題の複雑なところは、「唯一無二の正解」という断り方がないことだ。
相手との関係や状況によって、最善(と思われる)断り方は変化する。したがって、あらかじめ複数の断り方のパターンを頭に入れておき、相手や状況に応じ選択して取り出す…という作業が必要になる。※組み合わせもアリだ。
今回は「断り方」について書いてみたい。
▼ 代替案を出す
上手な断り方のひとつは、代替案を出すことだ。
今週は無理なのですが、来週はお手伝いできます
出典:上司や取引先の依頼を相手を傷つけず上手に断る方法
代替案を出せば、相手はそれほど感情を害することがない。
代替案次第ではあるが、全く気分を害さないことも普通にあるだろう。実現可能な代替案を出すということは、こちらから「相手に歩み寄る」ということだ。したがって、相手は(ないがしろにされたとは感じず)それほど気分を害さないのだ。
この場合はもちろん、こちらが出した代替案を相手が了承すれば、それを誠実に実行しなければいけない。したがって、自分が実行できない代替案を提示してはいけない。また、(事実上)実現不可能な代替案を提示してもいけない。断りたくて無理なことを言っているな…と相手に見透かされてしまうからだ。
また、人を紹介するという手段もある。
代わりに○○さんはいかがでしょうか。私が確認します
出典:上司や取引先の依頼を相手を傷つけず上手に断る方法
自分はできないけれど、それだけ(断るだけ)では申し訳ないので、誰か紹介しますというものだ。これも、「相手に歩み寄る」上手な断り方だ。ここまで言うと、相手も納得する可能性が高くなる。
▼ 間を置いて断る
「無理です」と即答すると、相手は気分を害する。
「無理です!」と即答してしまうと、相手はショックを受けて傷ついてしまいます。
出典:断りにくい誘いをどう断ったらいいの?
たとえば、あなたが壊れたバッグを修理したいと思い、お店に持って行ったとしよう。
あなたがそのバッグを店員に見せた瞬間、「あーこれは無理ですね」と即座に言われたら、どう思うだろうか?ちゃんと見たのか?何か手段はないのか?と思うのではないだろうか。
同じ断られるにしても、壊れた個所をよく調べてもらってから断られる方が、納得できるはずだ。相手の依頼を即座に断るということは、相手を尊重していないと理解される恐れがある(実際に尊重していないのかもしれないが…)。
少し間を置くということは、「相手に歩み寄る」ということでもあるのだ。
・沈黙を入れるという手もある
沈黙というのも「間」だ。
上司から仕事の依頼を受けて沈黙する…ということはできないかもしれないが、同僚からの仕事の依頼やプライベートでは使えるだろう。「う~ん」という感じで黙ってみる。相手はその様子をみて、「難しいかな」と思うだろう。そして、もしかすると、自分から依頼を取り下げるかもしれない。そうなれば、(とりあえずではあるが)波風立てずに断れたということになるだろう。
「間」はクッションの役割を果たす。少し間を置くことで、相手は「断られるかもしれないな」という気持ちの準備ができる。そうすれば、その後断ったとしても、相手が受けるショックは少なくてすむのだ。
▼ 相手にトレードオフを意識させる
相手に「トレードオフを意識させて断る」という方法がある。
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これは、上司や取引先など、依頼を断りにくい相手の場合に有効な方法だ。
たとえば、上司に仕事を依頼された場合、「今○○、××の仕事を抱えていますが、それらより優先して行う仕事ですか?」、「○○や××の仕事が遅れたり、質が落ちる可能性がありますが、それでも構いませんか?」、最後の手段は、「私が健康を害する可能性がありますが、それでも構いませんか?」というものだ(笑)。
最後のフレーズは、本当に理不尽な要求をされたとき以外は、使うことのないフレーズだが、ポイントは、相手にトレードオフを意識させるということだ。その依頼を受ければ、どこかで支障が出る…ということを意識してもらうのだ。
まともな上司であれば、(そう言われたら)トレードオフのことを考えて、仕事を依頼するかやめるか、合理的に決めるだろう。それでも仕事を依頼するのであれば、あなたが言及したトレードオフを受け入れるはずだ。
▼ まとめ
上手な断り方についてまとめてみた。
1. 代替案を出す
2. 間を置いて断る
3. 相手にトレードオフを意識させる
逆に言えば、これらに反した断り方はまずいということだ。
相手の依頼を即座に断れば、依頼した相手はリスペクトされていないと感じ、不快な気分になるだろう。代替案を出さずに断るという行為も、それに近いものがある。代替案を出さずに即座に断れば、ある意味最強だ(笑)。
相手にトレードオフを意識させるという断り方は、やや高度な断り方だと思う。相手が合理的な思考の持ち主であれば、あっさり納得するだろう。見栄を張ったり、無理や我慢をして相手の依頼を受けると、受けた本人だけではなく、依頼した方も後悔する結果になりがちだ。
そうであれば、最初から上手く断った方がいい場合もあるのだ。