長崎新幹線:22年度開業困難 FGT量産間に合わず
毎日新聞 2015年12月05日 09時10分
国土交通省は4日、新幹線区間と在来線を走るフリーゲージトレイン(軌間可変電車、FGT)を導入する九州新幹線長崎ルート(博多−長崎間)について、当初予定の2022年度の全面開業が困難になったとする見解を明らかにした。FGTの開発が遅れ、車両の量産が間に合わないため。国は今後、沿線の佐賀、長崎両県などの意見を聞き開業時期や方法を検討するという。
FGTを巡っては、鉄道建設・運輸施設整備支援機構などが昨年10月に始めた耐久走行試験で、車輪の横揺れを抑える「軸受け」の部品が破損するなどの不具合が見つかり、開始約1カ月後から1年余り中断している。
国交省が4日に開いた専門家による軌間可変技術評価委員会で、鉄道・運輸機構などから部品の形状や材質を変更する対策が示され、了承された。しかし、試験再開は早くても16年度後半といい、耐久走行試験を順調に終えても、22年度までに必要な数の車両を生産することは難しいという。
同ルートの開業を巡っては、政府・与党が今年1月、可能な限り前倒しすることを申し合わせている。国は量産に先だって製造できた一部車両を走らせることなども代替案に想定しているという。今後、佐賀、長崎両県や沿線地元自治体の意見を聞いたうえで検討するが、地元では全線を新幹線区間とする「フル規格化」への見直しを求める声もあり、調整の難航も予想される。【小畑英介】
【ことば】フリーゲージトレイン
車輪の間隔を変えて、レール幅の異なる新幹線(1435ミリ)と在来線(1067ミリ)で直通運転できる電車。レール幅が切り替わる場所で、車輪の左右の間隔をスライドさせる装置を通過させる。鉄道建設・運輸施設整備支援機構が開発を進めている。従来車両より重いなどの課題もある。