◇日本シリーズJT杯<第1日>
第1日、4番でティーショットを放つ小田孔明=東京よみうりCCで(神代雅夫撮影)
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▽3日、東京都稲城市、東京よみうりカントリークラブ(7023ヤード、パー70)▽曇り時々雨、気温10・0度、東北東1・2メートル▽賞金総額1億3000万円、優勝4000万円▽30選手▽観衆1998人
今季ツアーの優勝者と賞金ランキング上位選手による最終戦。小田孔明(37)=プレナス=が5バーディー、1ボギーの66で回り、首位と2打差の2位タイと好発進した。昨季賞金王が今季はここまで未勝利とあって、「マジで優勝したい」と気炎を上げた。ツアー通算29勝を誇る片山晋呉(42)=イーグルポイントGC=が64で単独トップ。小田と並ぶ2位には藤本佳則(26)=国際スポーツ振興協会、前週Vの黄重坤(ハン・ジュンゴン)=韓国=が続き、石川遼(24)=カシオ=は68で9位につけた。
小田はショットが絶品だった。4番はピンそば3メートル、5番では1・5メートルにつけた。6番パー5では3打目を30センチに寄せ、怒濤(どとう)の3連続バーディーを奪った。傾斜のあるグリーンは例年より速い分、「ショットで何とかする感じ。1番から(ピンに)ビタビタついたね」。そう振り返る顔は笑っていたが、屈辱にまみれた心中はメラメラと燃え盛っていた。
賞金王の肩書を初めて背負い、臨んだシーズンで、まさかの未勝利。賞金ランクも、シード権を獲得した2007年以降で最低の18位と低空飛行が続いた。10月の日本オープン最終日にはアダム・スコット(オーストラリア)と同組で回り、「ドライバーで40ヤードも置いていかれた」。成績に加え、磨き続けてきた飛ばし屋のプライドまでもが木っ端みじんに打ち砕かれた。
直後から肉体改造に着手した。週に5日、下半身の筋力アップに集中的に励んだ。「悔しすぎるから。やるしかないんだよ」。シーズン最終盤だけを見据えた、いわば捨て身の強化策だった。屈辱と引き換えに手にした強く重々しい弾道が、好調なショットを下支えしていた。
昨年大会は3位に入って賞金王に輝き、男泣きした。だが、そんな記憶も吹き飛んでしまうほど悩み、ばたつき、必死の思いでたどり着いた最終戦だ。
「最後くらいは優勝したい。マジで優勝したい。今年、勝っていない分、最後くらいはいい思いがあると思ってね。最低でも(賞金ランク)トップ10に入っておかないと格好がつかないけど、それには優勝しかない。悪いけど、勝ちますよ」
賞金王の意地、誇りを取り戻す戦いが、幕を開けた。 (松岡祐司)
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