福井県高浜町の野瀬豊町長が、関西電力高浜原発3、4号機の再稼働に同意した。

 新規制基準の導入後、立地市町が再稼働に同意したのは、九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)と、四国電力伊方原発(愛媛県伊方町)に続く。

 地元の首長が同意の主な根拠にするのが「国の責任」だ。

 高浜町長は林幹雄経済産業相と面会し、事故時は国が責任を持って対応するとの説明を受けた。愛媛県の中村時広知事も、安倍首相から同様の発言を受けた後、同意した。

 だが、事故時に国が対応するのは当たり前だ。閣僚らの言質を取ったところで、住民を守る責任はまず首長が負うことにかわりはない。

 高浜原発は30キロ圏に京都、滋賀両県が入り、福井県も合わせて約17万人が暮らす。

 高浜町長は、政府と関係府県による広域避難計画の調整にめどが立ったことも同意の理由とした。ただ、計画の実効性を確かめる訓練はこれからだ。

 3、4号機には福井地裁が4月、地震で過酷事故に陥る危険があるとして、運転禁止の仮処分命令を出した。関電が申し立てた異議に対する司法判断がまだ出ていないのに、町長が同意したのも尚早と言わざるを得ない。

 再稼働に向けた手続きでは、福井県の西川一誠知事の最終判断が残っている。知事は「県民に信頼される判断をしたい」と言う。ならば、広域避難計画の検証を徹底すべきだ。

 福井県には高浜を含め、11基の現役原発が集中する。事故が起きれば住民は主に関西へ避難することになる。避難ルートの確保や他府県との連携など、懸念材料は山積みだ。

 立地自治体が再稼働への同意権を持つ根拠は、電力事業者との安全協定だ。判断を国と事業者まかせにせず、自治体が「住民の安心のために」と交渉を重ねてつかんだ権限である。

 福島第一原発事故後、原発の安全性への不安は増した。政府が防災・避難計画の策定を義務づけた30キロ圏の自治体には少なくとも、立地自治体と同様の同意権を認めるべきだ。

 伊方原発をめぐり、朝日新聞などが先月実施した愛媛県民世論調査でも、72%が「30キロ圏の自治体の同意を得るべきだ」と答えている。

 滋賀、京都両府県が加わる関西広域連合は「同意を求める範囲を法的枠組みで明らかにすべきだ」と主張している。政府はこうした声を受け止め、法制化を検討すべきではないか。