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世界的ブランド企業から突然仕事の依頼メールが届いたとき、あなたならどうする?
99U:あなたはゆっくりとデザイナーのキャリアを積み上げてきました。ポートフォリオも作成し、地元企業の仕事も順調にこなしてきました。もういつ世界的ブランド企業から仕事の依頼がきても大丈夫だと感じています。そしてある日、それが現実となります。
あなたの作品を見たというクリエイティブ・ディレクターから突然メールが届き、同社のデザインキャンペーンに参加してほしいと書いてあります。あなたは頭が真っ白になります。もちろん、そのための準備はしてきました。しかし、それが現実になったことが信じられません。こんな超巨大企業から仕事が舞い込むなんて初めてのこと、このチャンスは絶対に逃すわけにはいきません。
さて、初めての超重要クライアントにどう対応すればいいでしょうか? 今回は、Apple、Ford、 Oakley、National Geographicなどから声をかけられた体験を持つクリエイターたちにアドバイスを仰ぎました。突然やってきたブレイクスルー・プロジェクトをどう切り抜ければいいか、自らの体験をベースに語ってくれています。彼らのアドバイスに耳を傾け、初めてやってきたビッグチャンスをつかんで、将来、フォーチュン500からの仕事をとれるようになってください。先輩クリエイターたちによると、ブランド企業はあなたがどこに所属しているかでなはなく、あなたの作品そのものを評価するのだそうですよ。
いつでも、どんなことでも対応すること
企業がプロジェクトを編成し、そこにあなたを入れようと思いついたとしたら、おそらくあなたは最後に声をかけられたメンバーということになるでしょう。あなたにメールが届くころには、プロジェクトはすでに動き出していることが多いのです。ブランド企業は、あなたの準備が整っているかなど気にしていません。ただ、あなたのためのポジションがとってあるので、あなたがそこに入れるかを知りたいだけなのです。
写真家であるNavid Baraty氏の話を聞いてみましょう。彼は通常、1〜2ヶ月前にプロジェクトへの参加を決定します。しかし、去年の秋、Appleはそんな余裕を与えてくれませんでした。気まぐれで悪名高いこの巨大企業は、感謝祭の直後、ニューヨークが拠点の写真家に対して、10日後に中国で写真を撮るようにと言ってきたのです。
「相手はAppleだ。なんとかするしかなかった」とBaraty氏。彼は3日間でビザをとると、スケジュールどおりに中国に渡りました。Appleが新しい円柱型のストアを開店した重慶市のパノラマ写真を撮影するためです。
こうしたケースでは、Baraty氏のように、まず行動し、考えるのは後にすることです。とりあえずプロジェクトの目的地に体を運んでから、クレイジーな状況について振り返ればいいのです(Appleの仕事で中国にいるなんて!)。とにかく現地に行ってしまえば、案ずるより産むが易しなことがわかるでしょう。Baraty氏もそうしました。重慶市でAppleは、彼がいままで経験したことのないような厚いサポートを提供しました。Baraty氏が安全に屋上にあがれるようにしてくれたうえ、オンデマンドのプリントサービスを用意して、毎日写真をチェックできるようにしてくれたのです。「あまりのやりやすさに驚いた」と彼。
たとえあなたが新人であっても、世界的ブランド企業は経験豊富なプロフェッショナルを基準としてあなたを判定します。ですので、新人のように振る舞ったり、うろたえたところを見せてはいけません。
デザイナーのBen Johnston氏にFordから仕事が舞い込んだのは、トロントのホステルに居を構え、フリーランスのキャリアをはじめようとしているときでした。同社が2013年のマーケティングキャンペーンに使う、タイポグラフィック・イラストラーションの製作依頼です。実績もあまりない25歳の若者は、この仕事を受けました。
不都合なことがいくつもありましたが(「オフィス」はホステルのキッチンで、シリアルの箱にPCをたてかけて画像レタッチをしているとか)、Johnston氏はその仕事が自分には大きすぎるかもしれないことをおくびにも出しませんでした。「きっとやり遂げられると信じるんだ」と彼。「クライアントに、どうすればいいかわからない、なんて絶対に言ってはだめだ」 Johnston氏は一切言い訳をせずに、磨きあげた最終成果物を提出しました。Ford側は、同氏が十分なスキルもツールも持たずにデザインに取り組んでいたことなど知る由もありません。
有利な条件で交渉する
あなたの将来を変えてしまうような巨大企業からお声がかかったら、無料で仕事を受けたい誘惑にかられるかもしれません。しかし、声をかけたのはブランド企業のほうです。彼らはあなたが欲しいのです。自分に有利な条件で交渉する余地があることを理解しておきましょう。
写真家のAdrian Wilson氏は、クライアントの予算を尋ねることから価格交渉をはじめます。自分の通常単価を先に言うことはありません。2012年、Oakleyから仕事の依頼メールが届いたとき、同社が全国の10〜12の店舗を撮影するために準備した予算は34000ドルだということでした。Wilson氏にとってはとても条件のいい仕事です。Wilson氏は、こんな好条件で契約できたのは、Oakley側に先に数字を提示させたからだと言います。「クライアント側は低い数字を言えないが、私のほうで高い数字を受け入れることはできる」と彼。結局、OakleyはWilson氏の仕事を大いに気に入り、同じ仕事を毎年依頼するようになりました。これまでに、Wilson氏はOakleyから10万ドル以上稼いでいます。
もっとも、交渉において考慮すべきなのはお金だけではありません。写真家のSuren Manvelyan氏は、2013年にNational Geographicが彼の代表作である瞳の写真の1つを使いたいとメールしてきたとき、完全に不意を突かれた形になりました。「どうやって値段を決めればいいかわからなかったので困ったよ」と彼。米国を拠点とするManvelyan氏は、慌ててGetty.comにアクセスし、似たような写真を参考に、価格をいくらにすればいいかを考えようとしました。結局、National Geographicは、その写真を世界中で発行される雑誌とウェブサイトに掲載するために4000ドル払うと提示してきました。Manvelyan氏はこの数字はフェアじゃないと感じ、こちらから価格を提示し直そうかとも考えましたが、お金以上の理由で受け入れることにしました。「1つは報酬、ひとつはマーケティング(バリュー)、1つは幸福のため」と彼。
クライアントに汗を見せてはいけない
世界的ブランド企業と仕事をするときは自分を魔術師だと考えてください。クライアントの要求を満たそうとどんなに奮闘していても、そのことを悟らせてはいけません。真のプロフェッショナルは、困難な仕事もそしらぬ顔でやり遂げるものです。
昨年の冬のことです。Oakleyの撮影で、Wilson氏は猛吹雪のミネアポリス市に到着しました。あいにく、悪天候のせいで撮影予定の店舗が入居しているショッピングモールが閉鎖されていました。つまり、Wilson氏には、その日の撮影を延期する正当な言い訳があったわけです。しかし、そうなるとOakleyのプロダクション・スケジュールに遅延が生じてしまうでしょう。彼はレンタカーで除雪車の後ろをぴったりとついて走り、ショッピングモールにたどり着くと、駐車場にできた雪の吹き溜まりをよじ登って敷地内に侵入しました。果たしてミッションは達成されたのです。「クライアントは猛吹雪のせいで撮影できなかったなんてことには関心がない」とWilson氏。「彼らはただ出来上がった写真を見たいだけだ」
また、ブランド企業は成果物がどのように製作されたのかにも関心がありません。プロジェクトに下請け企業が関わっているかについてもです。たとえば、企業から第一級の仕事の依頼がきて、それに必要なある要素があなたに欠けているとします。そんなときは「誰かを雇ってそれをやらせてもかまわない」とJohnston氏。「そのことをブランド企業に言う必要もない」 Johnston氏は最初のビッグチャンスを掴む重要性を訴えています。Fordの仕事が、Audi、Lululemon、Nike、Aston Martin、Sierra Nevadaの仕事につながりました。「最初の1つが肝心だ」と彼。「世界的ブランドの1つを穫れば、ほかのブランドすべてを獲ることができる」
From Apple to Oakley: How to Land Your First Big Client|99U
Matt McCue(訳:伊藤貴之)
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